診断コンテンツは他人との「共通点と相違点」から拡散されやすい。2,100万円のアプリ収益を生んだ「ALTER EGO」開発の裏側とエンディングを作る理由

2019年04月09日 |
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自分を見つめ直す性格分析ゲーム「ALTER EGO(オルタエゴ)」の開発者さんにお話を伺いました。


※株式会社カラメルカラム 代表取締役社長 大野真樹さん

もともと「カラメルカラム」さんは何をしている会社だったんですか?

2014年に会社を設立して、去年まではゲームの受託業務をメインでやっていました。シナリオ作成やプランニングの仕事という感じですね。

ただ、受託のほうは順調だったのですが、だんだん「自社のゲーム」がつくりたくなってきて。でも当時はエンジニアがいなかったんですよ。

それで、最初はアナログゲームをつくり始めました。デジタルのゲームではなくて、ボードゲームやカードゲームをつくっていたんです。

これまで、オリジナルのアナログゲームは6作品だしていて、代表作の「THE 残業」というゲームは、3,000個ほど売れています。

そこからスマホゲームをつくり始めるわけですよね。

そうですね。最初につくったアプリは「THE 残業」という脱出ゲームでした。先ほどのアナログゲームを題材にしたゲームアプリです。

この頃にエンジニアが入社してくれたんです。ただアプリをつくるのは初めてだったので、とりあえずリリースすることを目標にしました。

どれくらい結果が出たのでしょうか?

結果は、なんだかんだ4万ダウンロードされて、100万円くらいの広告収益にはなりました

広告で上手くいったのは、動画広告をみるとヒントが出るようにしつつ、何度も動画を見てもらえるよう、ヒントを最大3つ置いたことです。

あと、クリア時と失敗時に大きいバナーを出したこと、裏ルートをつくって何度も遊んでもらえるようにしたことも、収益に良い影響を与えました。

「ALTER EGO(オルタエゴ)」の開発はいつ始まったのでしょう。

2018年の1月に開始しました。自分を見つめ直す「内省的なゲーム」がつくりたかったんです。そこに性格診断の要素を組み合わせました

企画書の段階から、吹き出しをタップして集める、シナリオを読み進めていく、性格診断があるといった要素はもう大体決まっていましたね。

メインの画面は、ずんずんと前に歩いていきながら、わーっと色んなことを考えている、そんな心象風景をゲームとして表現したものです。


※「ALTER EGO」の企画書

エスのキャラデザインはどのように決まったんですか?

エスのキャラデザインは、いとう階さんという方の漫画をツイッターで見かけて、もうピンポイントでこの人に頼もうと決めました。

なんというか、スゴくめんどくさい文学かぶれな匂いがしたんですよ。それがこの作品とマッチしているな、マッチしていないわけがないなと思えたんです。笑

https://twitter.com/Ito_SIPD/status/1081183917531492352

そこから開発を進める中で「やって良かったこと」はありますか。

開発中に、イベントに出展することで、それが「開発のマイルストーン」になるのは良かったです。ゲームってリリースまでが長すぎるんですよね。

あとは、イベントに出てみて「このゲームを気に入ってくれる人がいる」ってことがわかったので、それだけで十分だなという気がしました。

ALTER EGOを開発しているときには、「TOKYO SANDBOX」と「ぜんため」と「デジゲー博」という、3つのゲーム系イベントに出展しましたね。

アプリをリリースしたときの手応えはどうでしたか。

12月28日にAndroid版をリリースして、1月3日にiOS版をリリースしたタイミングで、ガーッと勢いよく伸びていきました。

とくに、ツイッターで診断をシェアしてくれる人が、想像以上にたくさんいて。ダウンロードのほとんどがツイッター経由になりました

ほかには、ゲームキャストさんの記事からの流入が5,000〜1万ダウンロード、予約トップ10からの流入が1,000ダウンロードありましたね。


※診断結果の画像がツイッターで拡散されて広まった

いま「ダウンロード数や収益」はどれくらいになっていますか?

2019年3月末時点で、ダウンロード数は42万ダウンロード、収益は2,100万円になっています。開発費用はなんとか回収できました

収益比率としては「動画広告 45%、バナー広告 30%、課金 25%」という感じで、1ダウンロードあたりの収益は45円くらいです。

もっと収益を伸ばせるとも言われますが、それは理解しているんですよね。どれくらいユーザーにお金を払ってもらうかは悩ましいんです。

それってどういうことでしょうか?

まず「ALTER EGO」には、ポリシーとしてエンディングをつけたかった。クリッカーゲームのインフレして終わりがこないところは嫌だったから。

そうなると、エンディングを多くの人に見てもらいたかったし、課金に対して納得感のあるコンテンツ量をつくるのはうちの規模だと難しくて

たしかに「9,800円のダイヤを用意する」なども可能です。でもエンディングまでにみんなが納得できるのかを考えてみるとどうだろう。

きっと、エンディングをつくることで、自ら収益性を下げているんだと思う。それでも、エンディングをなくすわけにはいかなかったんですよ。

という感じで、いろんな塩梅を考えた結果、いまのような課金体系に落ち着いていますね。

ちなみに「診断コンテンツ」はどうやってつくったのですか?

診断については論文などを調べながらつくりました。一番気を配ったのは「診断結果の文章」です。内容というよりは伝え方がむずかしくて。

とくに「ALTER EGO」って、内省的なゲームで気分も暗くなりがちだから、遊んでいくうちにしんどくなってしまうのは避けたかった

診断結果が出て「あなたには隠されたこんなところがあります」と伝えるときに、傷つけてしまったら嫌になって辞めてしまうと思うんです。

なので、傷つける言い方はしない、最後はフォローするような文章にする、落ち込んでる人には優しい言葉をかける、というのは意識しました。

なるほど。診断への反応として「意外だったところ」ってありますか?

これは後からわかったことなんですけど、診断結果を「納得いくまでやり直したい層」というのが、思ったよりも多かったことです

つまり、自分の納得する診断結果がでるまでやりたい、これが自分の結果だと納得できたら次にいきたい、という人がたくさんいたんです。

これはこれで、プレイの幅としてはあっていいと思いますが、無制限にできるのもどうかと思ったので、動画広告を見るとやり直せるようにしていました。

診断をつくるとき「意識して設計したこと」というのはありますか?

診断結果としては、クリアまでに全部で7つあるのですが、あえて「人と重なるところ/重ならないところ」が出るように設計しました。

なぜかというと、共通点と差分をつくることで、「ここは同じだね。ここは違うね」みたいに、会話が生まれやすくなると考えたからです。

診断結果のパターンも、4パターンしかない箇所もあれば、50パターンある箇所もあって、同じ最終結果にはならないようにしました。

なので、レアな結果もあれば出やすい結果もあって。そういうのも含めて、ツイッターでシェアしてもらいやすかったのかなと感じます。

ほかに「シェアしてもらうために工夫したこと」は何かありますか。

ゲーム内のスクショボタンを押すと、広告が消えてロゴが入るようにして、スクショがきれいに撮れるように工夫はしていましたね。

スクショの確認画面では、エスのコメントを20パターンほど用意しておいて、スクショを撮ること自体が楽しくなるようにもしました

スクショされた画面は、やっぱり診断結果のところの画面と、あとエスの部屋で出る罵倒コメントが人気で、シェアしてくれる人が多かったです。

あと、Google Playのランキングが「2回盛り上がっている」のはなぜですか?

1回目はiOS版が出たときにランキングが上がりました。2回目に伸びたのは「Google Playの広告」をはじめたのがキッカケだったんですよ。

順序としては、広告ですこし勢いに弾みがついたことで、ストアのおすすめ等にも表示されるようになり、最終的には総合13位まで伸びました

1ダウンロードあたりの収益性を考えても、広告の獲得単価はペイできる範囲だったので、これはやっておいて良かったなと思います。

あと、App Storeの検索広告(Search Ads)も良かったです。こちらも低い単価で獲得できていますね。


※プロモーションには数十万円程度の予算をつかった。

ストア関連でほかに「工夫したこと」があれば知りたいです。

ゲームクリア後に「レビューの訴求」を出すようにしたところ、ストアの評価を良い状態に保てました。

現時点での数字でいうと、AppStoreは★4.9で1.8万件の評価がついていて、GooglePlayのほうは★4.7で9千件の評価がついています

クリア後にいる人は、ゲームを気に入って最後まで遊んでくれた人なので、母数は少なくても高評価をつけてくれやすかったのだと思います。


※クリア後にレビュー訴求しているからか「熱量の高いレビュー」も多い

あと「ALTER EGO」はファンアートがかなり盛り上がってるように見えます。

そうですね。ファンアートの専用ハッシュタグもつくっているのですが、ファンアートは想像以上に盛り上がったなと感じています。

このゲームには、自分とエスという「1対1の関係性」があって、その関係性がユーザーごとに無数に存在するような世界観だと思うんです。

だから、ある種ファンアートも「自分のエス」という感覚で、自由に描けるところがあって。そこに愛着を感じてもらいやすかったのかなと。

ほかにもツイッターでマメにいろんな企画をやっていますよね。

二次創作がしやすくなるように、ゲーム内の吹き出し素材をアップしたり、使用したフォントをまとめてツイッターにあげたりしました

ほかには、書店さん向けに「ALTER EGO特集棚」のコラボ募集をしたところ、いくつも協力してくれる書店さんから連絡いただけました。

あとは、マシュマロでの質問回答もやっていますね。この辺りはVTuberがファンとの交流が上手なので、ツイッター運用の参考にしています。

いま「ALTER EGO」を振り返ってみてどうですか?

僕は、本当は研究職やりながら、30歳になったら作家にでもなりてえっていう、モラトリアム真っ盛りみたいな人生設計だったんです。

結果論でいえばですが、やっぱりゲームつくる人って、外交的でサービス精神のある人が多い印象があって。全然それは良いことなんですけど。

それに対して、「ALTER EGO」ってすごく内省的なゲームなので、そこは自然と差別化されるポイントだったのかなと感じました。

正直、思ったより伸びたなとは思いますね。あれ、そんなやる?みたいな。ありがたいことでありつつ、未だによくわかってない感じ。笑

100万人に遊ばれなくても、100人にわかってもらえればいい、という気持ちでつくったので。結果的に多くの人に遊んでもらえて嬉しいです。

取材協力:株式会社カラメルカラム

ALTER EGO

「ALTER EGO」開発者のツイッター

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