クチコミのカギは「中高生の試験勉強」の息抜きニーズ。アルパカや力士が踊るアプリ「aDanza」100万ダウンロード突破の裏側。

2016年01月25日 |
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今回は「aDanza」を開発している、クリーチャーズさんにお話を伺いました。クリーチャーズはポケモンのカードゲーム・ビデオゲーム・3DCGなどもつくっている会社です。

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※株式会社クリーチャーズ 代表取締役 田中宏和さん(右)、キャラクターディレクション 西田大作さん(左)

aDanza(エーダンサー)ができるまで。

「aDanza」について教えてください。

西田:
「aDanza」は踊るミュージックプレイヤーアプリです。アルパカや力士など、3DCGのダンサーたちが、スマートフォンに入っている音楽に合わせて全力で踊ってくれます。

年末に100万ダウンロードを突破しました。最近はAndroidの「とりあえず版(簡易版)」もだして、いまもデイリーで8,000ダウンロードくらいずつ、増えているような感じですね。

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「aDanza」の企画はどのようにスタートしたのでしょう?

田中:
元々は3〜4年前に社内の実験として、ポケモンの3Dモデルを、音楽に合わせて踊らせてみたところ、「これおもしろいね」となったのがはじまりでした。

そこから「好きな曲で、キャラが踊る仕組み」ってつくられへんの? ということで、まず音楽を解析してテンポを割り出したり、曲の特徴によってダンスモーションに影響を与える仕組みを考えてみたり、そういった基礎実験を繰り返しました。

キャラクターの動きは、基本はプロのダンサーさんなんですが、弊社スタッフの動きをキャプチャーしたり、色んな面白い動きのデータを集めたりしました。それを組み合わせて出来たのが「aDanza」です。

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※プロダンサーの「モーションキャプチャ」を、3DCGのカエルに流し込んだ様子。

「モーションキャプチャ」をつくるのは、かなりお金がかかりそうですね。

田中:
そうですね、それなりにお金はかかります。けれど初めての経験でもあり、とにかく今回のアプリの重要な部分でもあるので、しっかり時間をさいて色々試しました。

「踊れない人の踊り」にもおもしろさがあるので、「aDanza」のダンスモーションの、盆踊りや応援団の動きは、社員が踊ったものをキャプチャしました。

アプリの開発時に苦労したことはありますか?

西田:
ダンサーの「リアルさ」と「キャラクター性」の両立に苦労しました。

リアリティを求めすぎると、自分が思い描いている面白みがグラフィックになくなってしまい、つまらない方向にいってしまうんです。そのバランスを取るのが難しくて時間がかかりました。

例えば、アルパカって「かわいい」というイメージがありますよね。ところが、リアルなアルパカを3DCGで再現してみたら、そのイメージと違って怖くなってしまったんです。

リアル過ぎると妙な気持ち悪さが出てしまって。でも、その「アルパカらしさ」を消してしまうとアルパカである意味がなくなってしまいます。

なので、毛をフワフワに見えるように加工したり、目も「つぶらな瞳」になるように調整してハイライトを入れたり、一部手描きも加えてバランスをとりました。

細かいところにも、こだわっているんですね。

田中:
会社として、3DCGのモデリングは長くやってきたので、キャラのテクスチャーにしても徹底的にこだわりました。

アルパカはちゃんと動物園に行って写真とってきたり、カエルも社員がつかまえてきたし、ホント楽しみながら丁寧につくりました。アプリの公開時期だけ決めて、こだわれるだけこだわろうと。

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※クリーチャーズでは、ポケモンのゲームやCGなども製作している。

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※捕まえてきたカエルを元に3DCGを作成。

「キャラがダンスをする」という点では、苦労はありましたか?

西田:
そうですね、モーションキャプチャの「人間の動き」を元に踊らせないといけないので。

できる限りダンスが破綻しないようにモデルを作ったので、骨格などはリアルな動物と比べると違っていますね。例えば本物のアルパカは、四足の状態ではこんなに肩幅がありません。

あと意識したのは「キャラの見た目」と「ダンスの動き」のギャップです。

例えば、力士が華麗にクラシックバレエを踊るとか、パイナップルがクールにヒップホップを踊るとか。そういう、イメージを壊したギャップがあると、笑っちゃうおもしろさが出てくると思うんです。

田中:
ちなみに「力士」の肌は、うちのぽっちゃりした、システム担当の男子社員がいるんですけど、彼の肌を撮影してつくりました。笑

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※予想外に人気がでた「力士」は、クラシックバレエを踊る。

アプリのリリース後について。

100万ダウンロードまでは、どのように広がってきたのでしょう?

田中:
ツイッターでの拡散が大きかったです。中・高校生を中心に「このアプリやべえ」「おもしろい」と広まっていった印象ですね。プロモーションはしていないので。

とくに、試験期間中の「中・高校生の息抜き」として使われていたようなんです。ゲームアプリだと没頭しすぎて、そもそも勉強が進まなくなっちゃうからですかね?!

そこに「aDanza」がうまくはまったのかなと。あと、音楽じゃなく「英語の教材」でアルパカを踊らせた動画がアップされ、それがとても拡散されたことも大きかったです。

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※AppStoreランキングが大きく伸びているのは3回。「アプリ公開時」「王様のブランチ(放送時は、瞬間的に3〜4万ダウンロード増)」「ツイッターで話題(アルパカのリスニングCD動画)」

若いユーザーにウケそうだという感覚は、最初からありましたか?

田中:
最初に「aDanza」の仕組みをいろんな人に見せた時に、技術的なリテラシーが高い人からの、ウケはあまりよくなかったです。

「あぁ、そのくらい出来るよね」というような、無言の反応が多かったような気がしています。

「若い人のほうが面白がってくれるだろうな」という感覚は、最初からありました。大人って、ハシが転がったくらいじゃ笑わないですからね。笑

ダンサーにコンパスを入れたのも「きっと学生にはなじみあるよなぁ」って事でシャレで入れてみました。

ほかに、若いユーザーをみていて感じたことはありますか?

田中:
若い人は「発見する力、自ら楽しむ能力」がほんとに高いよね。これは改めて思わされたことでした。

若い人のほうが、ダンスのモーションと音楽のタイミングが、妙に揃ったときのおもしろさとか、「アルパカがリスニングCDで踊る」みたいな、新しい遊び方を発見してくれているなと。

ダンスのモーションは一定間隔でループするんですけど、そのループタイミング次第で、曲の冒頭でピッタリ合うとか。ツイッターを見ていると、そういうことにも気づいてくれてる。

大人たちは、そういう些細なところには、自ら飛び込んで喜んでくれないんですよ。

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100万ダウンロードまできてみて、気づいたことはありますか?

田中:
ん〜、「どんなメディアにどんな情報を流せば、最大限拡散していくのか」とかまったくわからないまま、この数字まできたんですけど。

やっぱ運と言うか、偶然テレビで取り上げてもらえたり、我々が想定していなかったような、様々な反応・反響に助けられこの数字に至った、ということですかね正直。

ただ、ずーっと「このアプリの持っているポテンシャルって、それなりに高いのでは?」という気持ちは常に持っていた。どこかでブレイクしてくれるといいなぁ、という気持ちでいました。

「追加キャラ」を有料にしたのは、なぜだったのでしょうか?

田中:
弊社の主力商品はカードとかゲームなんですけれど、

「ゲーム何本売れました」「カード何パック売れました」というような中で、「今月はタラバガニが100体売れました」「コンニャクは10個でした」っていう、会話があるとおもしろいなとおもった。

そういう、半分は冗談みたいな発想でしたね。笑

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おすすめの「aDanza」の遊び方はありますか?

田中:
「綾小路きみまろ」さんのライブを流すとおもしろいです。なぜかというと、滑舌がいいので、キャラの動きが生き生きして面白いです。あとは、演歌や落語を流しても楽しいですよ。

いまリリース時に戻れるとして、変えたいことはありますか?

田中:
ダンスの画面を「動画撮影」をする機能は、付けるべきだったなぁと。けれど思っていた以上に、みんなスマホを2台つかってまで、ツイッターとかに投稿してくれましたけども。

ツイッターに画像投稿すると、曲名とアーティスト名が見えるようにはしていたんですけどね※。「どの曲で踊らせているか」というのもおもしろいので。

※現在、iPhone版のみの機能。

「aDanza」はクリーチャーズさんとしては、初のアプリだったと思いますが、振り返ってみて感想などお願いします。

田中:
もともと、新しい商品の可能性を探るプロジェクトとしてひっそりと始めました。

そういう開発って基本クローズドなんですけど、こういう時代だから「窓越しに誰でも覗けるような開発」も面白いのではって事で、気楽にアプリもだしてみようよ、と。

で、そういう流れの中で「何か新しい発見あったらいいね」くらいに考えていました。

でも結果的には、たくさんの技術的な検証もできたし、実際たくさんの人が喜んでくれる結果となり、開発スタッフの励みにもなったし、ほんとうに良かったと思っています。

取材協力:株式会社クリーチャーズクリーチャーズ ガレージ

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編集後記

この3点がノンプロモで100万ダウンロード突破できた、ポイントだったのかなと感じました。
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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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