岐阜でアプリ開発をしているRU Apps(アールユー・アップス)の臼井さんにお話を伺いました。
iPhone黎明期にだした有料アプリ「SM診断」の売上は・・・?ヒットした放置ゲームと、そうではない放置ゲームの違いとは・・・?
※RU Apps臼井さんのTwitterアイコン。
初作アプリ「SM診断」がヒットするまで。
いつ頃からアプリ開発をされていますか?
臼井:
2010年からアプリ開発をしています、当時はiPhoneが発売されたばかりの時だったのですが、すごく近未来的でiPhoneに惹かれたんですよね。
それで、プログラミングスクールに通いながら、アプリの開発をスタートしました。
当時つきあっていた女性と、二人で一緒にアプリ開発をはじたのですが、実はその女性とは結婚し、今は夫婦でアプリをつくっています。
月収は30-200万円くらいの間で変動しています、安定して稼ぐのはやはり難しいなと感じます。
今までで一番うまくいったアプリはどれですか?
臼井:
一番最初につくった「SM診断」という有料アプリですね、このアプリは「Apple Rewind 2010」にも選ばれました。
最初の作品だったのでプログラミングの練習も兼ねていたのですが、もちろん売る気もあったので、宣伝はめちゃくちゃ頑張りましたね。
「SM診断」はダウンロード数と収益はどうでしたか?
臼井:
「SM診断」は有料200円のアプリですが、累計191,000ダウンロードです。(無料や値下げセール込)
収益で言うと1,000万円以上はあげることができました。2010年にリリースして、1年くらいでほぼ稼いだ感じなので、今はもうほとんどダメですね。
※「SM診断」AppStore黎明期っぽいシンプルなアプリ。
「宣伝を頑張った」というのは何をしたのでしょうか?
臼井:
例えば、初代iPadの発売の時には、Apple Storeの行列の先頭から3番目に並びました。
これはなぜかというと、テレビや雑誌の方などが取材にくるのでメディアの人と知り合えるのが分かっていたから。そこでAppBankの村井さんとも知り合いになれました。
当時、TwitterやUstreamなどが盛り上がりつつある時だったので、そういう意味でも、ネット上で目立つことができると思ったからです。
結果的にその作戦は、うまくいったのでしょうか?
臼井:
そうですね、テレビの取材の人は「最初にiPad手に入れたら何しますか?」と聞いてくるじゃないですか。
それに対して「私はiPhoneアプリ作っていて・・・」と話すと、「アプリってどういう風につくるの?」と興味を持ってくれました。
AppleStoreの行列は徹夜で並ぶため、必然的に一晩中は一緒にいるので、メディアの人ともいろいろ話せて仲良くはなれました。
後日、テレビの出演にもつながったんですか?
臼井:
結局、そこでのつながりとは別ルートだったのですが、テレビは何度か出演することが出来ました。
例えば、BSの「財部ビジネス研究所」、日本テレビの「ズームイン」、テレ朝の「お願いランキング」などの番組です。
テレビで紹介されると、有料アプリであってもダウンロードは伸びるのでしょうか?
臼井:
そうですね、AppBankの村井さんに「お願いランキング」で「SM診断」を紹介いただいた時は、約1,500ダウンロード伸びました。
もう3年以上前の話なので、今とは少し事情が違っているかもしれませんが。
※リリースから1年で1,000万円を稼いだという。ランキングデータはAppAnnieより。
RUAppsさんは書籍やテレビなどメディアで多く紹介されてますが、メディアに出るコツはありますか?
臼井:
メディアにひとつでると、連鎖して次々に声がかかりやすいです。そのためには、まずは発見されやすいように「自分から表に出ていくこと」はとても大事だと思っています。
ひたすら積極的に動いていれば、何かしらの棒に当たりますよね、あとは新しいものがでたら黎明期に真っ先に使ってみると、色んな出会いがあるのでおすすめです。
儲かる放置ゲームと、儲からない放置ゲーム
他にうまくいったアプリはありますか?
臼井:
2013年につくった「魚人育成(キモめ)」というアプリですかね、初めて「無料アプリでご飯たべれるなー!」と感じたアプリでした。
ダウンロード数は約80,000ダウンロードとそこまで多くはないのですが、放置系の育成ゲームなので収益単価が高くて、1ダウンロードあたり30円以上の収益性です。
80,000DL×30円で200万円以上は収益がでたので、単体のアプリと考えると十分といえば十分です。
放置系ゲームってやっぱり儲かりやすいんですか?
臼井:
いや、そういうわけでもないんです、「顔文字育成」という放置ゲームはまったく儲かりませんでした。
放置ゲームであっても「ユーザーが広告を見ている時間」を長くとらないと、まったく儲からない。なので、常にメイン画面などに広告を表示して、ユーザーの目に触れ続けるようにすることは、結果をだすためには必要だと分析しています。
元々インストールで収益が発生するCPI型の広告については、「ゲームを遊び終えたタイミングにだけだせば良い」という考えだったのですが、それは事実うまくいかなかった。
まずは、自然にユーザーに広告を認識させないといけない。そうすることで、ゲーム終了時(休憩やアプリに飽きたタイミング)で広告をクリックするのかと。
アクションゲームのアプリの収益性が低い理由の1つは、ゲームに夢中になるので「広告を見る時間が少ない」なのだと思います。
※左「顔文字育成」の収益性は低かった、右「魚人育成」の収益性は高かった。当たり前ではあるが実例でみると面白い。
他に放置系ゲームをつくるときのコツはありますか?
臼井:
「ユーザーに意味がある行動をさせる」のは大事だと感じています。
「イジリー田中」という放置ゲームは、キャラをタップしてポイントを貯めて育てていくのですが、やはりその「ひたすらタップ」というアクションに意味が存在しないので、ユーザーはすぐ飽きてしまう。
一方「魚人育成」では、エサをタップして魚人を育てていくのですが、ユーザーとしては「魚にエサを食べさせている」という心理なので、飽きにくい。
「タップする」というアクション自体は変わらないのですが、そこに意味があるのか、ないのかで、ユーザーの継続率に大きく差がでると感じます。
あとは季節感や時代感を考えることでしょうか。例えば、夏は必ずホラーがランキングに入りますよね。
※左の「イジリー田中」はすぐ飽きる。右の「魚人育成」では飽きにくい。実質やってることは一緒だが違いが出る。
私のアプリ業界のイメージはこんな感じなのですが、経験者としてどうでしょうか?
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▽2010年
難易度(失敗するかも度)★★
成功したら儲かる度★★★
素人でもまぐれヒットするかも度★★★★
▽2014年
難易度(失敗するかも度)★★★★★
成功したら儲かる度★★★★★
素人でもまぐれヒットするかも度★
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臼井:
大体同じように感じています、厳しくなっているのは間違いないです。iPhoneユーザーも当然増えましたが、開発者の数と企業のアプリが多くなりました。
アプリで生計をたてるのは、けっこう自信と根気はいるかなと思います。僕は「誰にでもおすすめできる職業じゃないなー」という意見ですね!
ただ、「素人でもヒットするかも度」はほんとにわからないですね、今でも素人というか、新しいデベロッパーのアプリもヒットしているので、チャンスがない訳ではないと思いますよ。
取材協力:RU Apps(アールユーアップス)
編集後記
「SM診断」に関しては古い話ではありますが、「メディアに発見されるために行動する」のくだりは、アプローチの仕方がおもしろい。
放置ゲームの「タップに意味があるか」の話も興味深いです。ユーザーがとっているアクションは一緒なのですが、モチベーションに違いがあるということですね。
そう考えると、放置ゲームでアイテムを回収するときの、音楽やアニメーションなんかも大事なのかもしれませんね。