流通総額890億円の「CAMPFIRE」に聞く、クラウドファンディングのユーザー体験の磨き方。指標の「スパイク分析」で成長する方法と「共感度」が支援につながる話。

2024年10月14日 |
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※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2024年7月29日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/n719f40c68e5b

CAMPFIREさんを取材しました。

株式会社CAMPFIRE CPO 大橋 桃太郎さん、大塚 健太さん

CAMPFIREについて教えてください。

大橋:
CAMPFIREは、誰でも資金調達に挑戦できる、国内最大級の「クラウドファンディングサービス」です。2011年にサービスを開始しました。

会員数としては400万人。累計9.3万件のプロジェクトが立ち上がっていて、累計の支援額(GMV)は890億円を超えています。

支援者さんの体験としては、基本SNSを見ていたら「プロジェクトを知る」というケースが多いため、スマホのWeb流入が多くなっています。

支援者さん向けに重視する指標としては、「ユニークユーザーあたりのGMV(支援額)」などを追っています。

どのようにCAMPFIREは生まれたのでしょうか?

大橋:
CAMPFIREは創業者の家入の、「身近な誰かの顔を思い浮かべて、手紙を書くようにプロダクトをつくる」という思想から生み出されたものです。

家族、友達、パートナー、自分自身。顔が思い浮かぶような相手に向けて、「拝啓〇〇様…」と手紙を書くように、彼はプロダクトを作ります。

CAMPFIREの場合は、お金がないけど個展を開きたいクリエイター友達などに向けて「もっとお金の支援ができたら」という想いで作ったそうです。

CAMPFIREは2011年にスタートして、徐々に成長していましたが、2016年頃には実はかなり低迷していました。

当時は「プロジェクトの成功率」を主要なKPIに置き、見込みの薄いプロジェクトは掲載せずに、手数料も高めに設定していました。その結果として、掲載されるプロジェクト数、流通金額は減る一方でした。

そこから急成長するキッカケになったのは、「個人や小さなチームの力を、インターネットでエンパワーする」という原点に立ち戻ったことでした。

1円でも多く、1人でも多くの方に渡すために、地域や、飲食店、加工業者などオールカテゴリーの「ロングテール戦略」を取り、サポート体制を強化。これをキッカケにして、大きく流通金額が伸びました。

この思想は今でも生きています。クラウドファンディングは「1対N」で支援が集まりますが、CAMPFIREでは「Nの小さなプロジェクト」が多いんですよ。

もちろん「1億円を目指します」というプロジェクトもありますが、地域に根ざしたものや、100人に向けて募集するようなプロジェクトも非常に多い。

プラットフォームとしては「何円以上からですよ」といった制限を設けず、あらゆる挑戦を支援する場所でありたいと考えています。

ユーザー体験を「どのように改善してるか」を教えてください。

大橋:
クラウドファンディングって、開始直後と終了直前に「支援金額やPV数」が伸びる傾向があるんですね。

ただ、公開期間中にも何かをキッカケに、数字が跳ねることが結構あって、この「スパイク」を観察すると成長や改善のヒントが得られます。

スパイクを軸に考えるのは「再現性と拡張性」です。別のプロジェクトでも再現できないか。スパイクをより大きくできないかと考えます。

大塚:
例えば、支援金額(GMV)の推移を「カテゴリ別 × 流入チャネル別」に分けて、前月と比べてモニタリングすることで「スパイク」を検出します。

そして、前日時点で「一定以上の流通額」が突然生まれたプロジェクトは、社内のSlackに通知されるようにしています。

カテゴリと流入で分けることで、「検索」「サイト内の回遊」「SNS」のように、チャネル別の「スパイクの生まれ方」も掴みやすくなります。

スパイクが生まれるってことは、「成長余地が残されている」というシグナルでもあるので、こちらからサポートのためにご連絡することもありますね。

大橋:
例えば、スパイクの要因を調べてみると、プロジェクトオーナーさんが終了直前に「ライブ配信」をやっていたことがありました。

それがわかれば、終了間近に「ライブ配信」をやれば、支援者が増えて支援金額がグッと伸びやすい、という再現性のあるノウハウに変わります。

SNSや配信に強みがある方には、カスタマーサクセス担当から終了時期に「ライブ配信」を提案すれば、支援額をより伸ばせるかもしれません。

このように、1件1件「跳ねた通知」をひたすら見て、得られた分析結果を「ノウハウ・オペレーション・プロダクト」に落とし込みます。

CAMPFIREの体験向上につながった「3つの改善施策」

改善事例①:『共感前に「リターン」を押し出しすぎると支援されない』

大塚:
良かれと思ってやったけど、「負けてしまった施策」もたくさんあります。

例えば、支援転換率を高めるためには、「リターンの内容が早くわかったほうが良いのでは」という仮説があり、ボタンの文言を変更したことがあって。

具体的には、ボタンの文言を「プロジェクトを支援する」から「リターンを見る」に変えて、早くリターンを見てもらおうとしました。

結果としては、ボタンを押す人は40%も増えて「見られるようになった」のですが、肝心の支援転換率(CVR)は5%も減少してしまいました。

なぜかというと、支援するかをまだ決めていない人からすると、先にリターンの情報だけ見ても、共感しきれずに「割高に感じてしまう」のかなと。

もちろん内容にもよりますが、知らない人から「夢のために3,000円支援してください」と突然言われても、やっぱり支援しないと思うんですね。

共感が醸成されるための「文脈理解・本文の魅力」が一定担保されないと、支援というアクションにはつながりにくいのかなと。

大橋:
一般的なECでは、限られた時間で「どう端的に魅力を訴求するか?」が大事になることも多いですよね。

しかし、クラウドファンディングでは、文章などにじっくり触れて「ここに共感したな」と感じてもらう、共感のプロセスが支援につながります

実際に、CAMPFIREでは「本文の文字量が多いほど集まる金額が多くなる」といった相関データも出ています。あくまで相関ではあるのですが。

なので、本文を読んで「共感してもらえること」は大事で、ただリターンの情報が先行しすぎても、支援にはつながらないのだなと。

改善事例②:『「注目のリターン」を表示したら平均支援額アップ』

大塚:
リターンだけが先走らないように、適切なバランスで「人気リターンの情報を表示すること」にはポジティブな効果がありました。

例えば、プロジェクトページの本文の上に「注目のリターン」というセクションを設置すると、支援転換率(CVR)は変わらなかったのですが、支援の購入金額を約5%引き上げることができました。

この施策は、細かい内容を変えながら4回ほど検証したのですが、毎回毎回「支援の平均額を引き上げる」という結果になったんです。

つまり、人気のリターンを伝えることは、支援意欲には影響しないものの、「どのリターンを選ぶか?」には良い影響を与えたのかなと。

いろいろ試した結果、現状では「注目のリターン」には、一定以上の支援を集めたプロジェクトにおいて、購入数が多い順に出るようにしています。

改善事例③:『遷移せずに「リターン」を選べる体験でCVRアップ』

大塚:
プロジェクトページで「支援ボタン」を押したときに、モーダル上でリターンを選べるようにした結果、支援転換率(CVR)が大幅に改善しました。

もともとは、「支援ボタン」を押すと、別ページに遷移してリターンを選ぶという流れでしたが、そのままページ上で選べるようにしたんです。

支援意欲が高まったときに、行ったり来たりする回数を減らし、ストレスを減らしたことが「選択体験」を高めたのかなと。

この改善ステップの前に、ザッピングや比較がしやすくなるように、画像や説明文のサイズを調整して、一覧性を高めるテストもしましたね。

「チームの生産性」を高めるために意識していることを教えてください。

大橋:
CAMPFIREのプロダクト開発では、最近とくに「デザインドリブン」を意識していて、つくるものを早く可視化することを大切にしています。

例えば、3人でアイディアを話していて「これ面白そう!」となったら、1時間で話してデザインを作って、最初に「ユーザー体験」を画にしてしまう。

プロダクト開発のマイルストーンの最初に「デザインで体験を起こしてみる」というプロセスがあって、まずはそれを優先するわけですね。

なぜこれをやるかというと、デザインで「体験」を起こすと、みんなの認識が統一されやすくなって、コミュニケーションにも熱が帯びるためです。

CAMPFIREって構造的に、変化をしようとするとカスタマーサクセスなども含めた「オペレーション全体」に影響が出るケースが多いんですよ。

そうなると、どこかのチームが「あまりイメージ湧かないよね」となると、気持ちも盛り上がらないし議論や動きも進みにくくなります。

なので、社内での「一致団結」と新しいアイディアに対する熱量が大事で。それで「デザインドリブン」との相性が良いと考えています。

社内のSlackの例。デザインを最初に出してコミュニケーションしている。

まだまだやりきれてないですが、デザイナー、エンジニア、プロダクトマネジャーのような、「○○er」による分業もしすぎないようにもしていて。

どちらかと言えば、全員が「プロダクト作り屋さん」で、その中でデザインが得意な人がいるという捉え方で、みんなで向き合うことを大事にします。

デザインもデザイナーだけに「これお願いします!」と任せるのではなく、Figmaでみんなで議論しながら作るケースも多いですね。

【取材協力】
株式会社CAMPFIRE:https://campfire.co.jp/ 
CAMPFIRE:https://camp-fire.jp/ 
株式会社CAMPFIRE 大橋 桃太郎さん、大塚 健太さん、広報の三春 桜子さん、オギユカさん

【告知】CAMPFIREさんでは各職種で採用中。プロダクトマネージャーやマーケターなどを探しているそう。ご興味あれば下記サイトをご覧ください。
https://campfire.co.jp/careers/

※ 続きの話は、noteマガジン購読者向けに、以下URLにて5つほどまとめています。+αの成功事例などを5つほどnote購読者向けにまとめています。支援CVRを「盛り上がりの可視化」で高めた施策、プロジェクトの提出率を高めた作成画面デザインの工夫、ボタンの「アクション率」を高めた改善、などご興味あればご覧ください。↓
https://markelabo.com/n/n719f40c68e5b

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