※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです。
https://markelabo.com/n/ne07b3940b918
ハイパーカジュアルゲームで世界5,500万ダウンロード、カヤックさんにお話を伺いました。
※本記事はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンより、依頼を受けて執筆したPR記事です。
※ダウンロード数などの数字は、2020年9月インタビュー時点での数字です
※面白法人カヤック 佐藤 宗さん、畑佐雄大さん ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 金田一 確さん
ハイパーカジュアル ゲームのつくり方
カヤックさんの「ハイパーカジュアルゲーム事業」の状況を教えてください。
佐藤:
ハイパーカジュアル の累計ダウンロード数としては、世界5,500万ダウンロードを突破しています。
タイトル別でいうと、Park Masterが5,000万ダウンロード、Noodle Masterが500万ダウンロードと、主にこの2つがメインですね。
ハイパーカジュアルゲームは8人のチームでつくっています。エンジニア5人、デザイナー1人、マネタイズ担当が2人という感じです。
成功したハイパーカジュアルの「収益データや継続率」を教えてもらえますか?
畑佐:
1ユーザーの収益性(LTV)でいうと、Park Masterが100とすると、Noodle Masterが110、Paint Dropperが80、そんなに変わらないですね。
売上は言える範囲で言うと、1タイトルで数億円を稼げる可能性があります。
佐藤:
どのタイトルも「1日後の継続率」は35%くらい。1日後の継続率は50%ないとダメと言われているので業界の指標と比べると低いです。
ただ継続率というよりは、ステージ10まで遊んでもらえれば、これくらい収益が見込めるという相関があるので、そっちのほうが大事ですね。
畑佐:
そうですね。何日も続けるけど10ステージしか遊ばない人より、1日で100ステージ遊んでくれる人のほうが、収益性が圧倒的に高いので。
みんな言いやすいから「継続率○%」といっていますが、1ユーザーの収益性(LTV)がすべてなので、そこをみているという感じです。
プロトタイプはどうやってつくっていますか?
佐藤:
アイディアを思いついたときは、僕がつくることもあれば、簡単なペライチの企画書つくって、ほかの人につくってもらうこともあります。
すぐUnityをつかって、ゲームに落とし込みますね。すると面白いかどうかの検証もすぐできます。
Unityないと僕ら生きていけないです。
そこから、ゲームができたら広告にテスト出稿して反応をみていきます。
※Unityでつくっている実際のプロトタイプ。すぐアイディアはゲーム化してみるそう。
佐藤さんは当初なかなかヒットタイトルが出ず「自分にセンスがないのでは」と辛くなったそうですが、そうなるとどうなってしまうのでしょうか?
佐藤:
企画が面白くなくなります。すると置きにいっちゃうんです。冒険しなくなって失敗を恐れて、炭酸の抜けたジュースみたいな企画になる。
そうならないためには、とにかく「早くつくって試す」のがいいんじゃないかな。10本20本つくってようやく1本なので。基本当たらないんですよ。
ハイパーカジュアルって、数字としてダイレクトに結果が返ってくるので、リアルな現実だけ突き付けられると、逃げ場がなくて辛いんですよ。
だから、1回1回成功しなくていいので、実験みたいな感覚で「市場と自分の感覚」をすり合わせていく感じで、やるのがいいかなと思います。
※18タイトルで3ヒット。こうみると打率は高めにみえるが、つくっているときはなかなか先が見えず、辛い時期もあったそう。
Park Masterが成功した理由は「優秀な広告をつくれたこと」
2つの改善「要素シンプル化」「ワイプで共感性」で広告効果が上がった話
佐藤:
Park Masterは、昨年12月に広告でアクセルを踏んだ結果、アメリカで総合3位になったんです。ただ、そこから勢いが徐々に落ちてしまって。
なぜかというと、もともと出していた「4色の車が走る広告」の効果が、幅広いユーザー層まで適用できずにしぼんできてしまったためです。
そのときに、広告を試行錯誤しながら改善したのですが、まずひとつ上手くいったのが「広告の要素」を減らしてシンプル化したことでした。
具体的には「車を2台に減らす」など、広告の中の要素を減らしてみたところ、広告からのインストール率が1.5倍に改善されました。
佐藤:
そして、もうひとつ上手くいったのが、プレイ動画の右上に「ワイプで人の顔」(カヤックの社員)を入れて、共感性を高めたことでした。
ワイプでリアクションを見せることで、幅広く共感される広告にできたのかなと。結果、さらにインストール率が1.6〜1.7倍に上がりました。
佐藤:
この2つの改善で、アメリカAppStoreで総合1位になることができて、その後もゲームトップ100に3ヶ月以上ランクインすることができました。
広告が優秀だったからこそ、ユーザーが途切れなく流入し続けたんです。それによって、思った以上に息の長いタイトルになりました。
畑佐:
1位をとった理由は、本当に「広告を改善した」だけなんです。この改善がなかったら下がってそのままだった可能性もありますよね。
この改善がなかったら、全く違う結果になっていたと思います。
ハイパーカジュアル の広告は失敗プレイで「遊ぶ動機をつくる」
佐藤:
ハイパーカジュアルの広告は、基本は「失敗ベース」でつくっていて。ゲームがうまくいかないことに、共感してもらうことを意識しています。
ゲームの動画をのせるだけでも伝わるのですが、やっぱり「ユーザーに遊んでほしい」となると、動機づけが必要になると思うんですね。
ゲームって、うまくいってる様子を見せられるよりも、失敗してる様子を見せられたほうが「どれ、俺に貸してみろ!」と思うじゃないですか。
それが、ゲームを遊んでみる「きっかけづくり」になると思うので、失敗パターンを主流で使うというのはやっていたりしますね。
まずは、広告からアプリをダウンロードしてもらう、そこからあとは「いかに楽しませるか」というのを、頑張っているという感じですね。
「Park Master」でうまくいった3つの施策
1、ゲーム内の「車のスピード」を上げたら継続率10%改善
佐藤:
Park Masterでは、ゲーム内の車のスピードを1.5〜2倍に上げてみたら、テンポがよくなって継続率が+10%上がりました。
車が速くなって、1ステージの時間が短くなれば、同じ時間でクリアできるステージ数が増えて、広告をみてもらえる可能性も上がります。
もちろん速くしすぎてもダメ。ゴール後にポイントや報酬を配る画面で、演出を早くしすぎたら、ユーザーが離脱しやすくなってしまいました。
どのタイトルでも「ゲームのスピード感を変える」のは試しています。これはどのタイトルでも応用できる改善テクニックかもしれません。
2、ステージの「難易度の傾斜」をゆるくしたら継続率10%改善
畑佐:
Park Masterでは、ステージを並び替えて「難易度の傾斜」を3パターンつくって、そこにユーザーを振り分けてみたことがあるんですね。
ABCどのパターンが良いか検証したんです。そうしたら「難易度の傾斜がゆるやかなBパターン」の継続率が10%高くなりました。
当初、僕らとしては「直線的に難易度が上がるAパターン」が、いいのではと思っていたのですが、結論それだと難しすぎたということです。
ゲーム開発者からすると「これだと簡単すぎて面白くないのでは?」みたいなレベル感のものが、ユーザーに支持されたということですね。
ハイパーカジュアルをやっていて思うのは、ゲームを楽しみたいというよりも、適当に「プチプチ潰したい」みたいな感覚に近いのでは?とも感じます。
佐藤:
それはその通りです。ゲームクリエイターとしてのセオリー通りに、ゲーム好きな人に向けてつくろうとすると、逆にうまくいかない感覚はあって。
仮説レベルですが、ゲーム性より「気持ちよさ」が大事なのかなと。ユーザーは、気持ちいい時間、気持ちいい体感を味わいたいのかなと思っていて。
Park Masterでも「ゲームが簡単すぎる」という話が社内であって、すこしゲーム性を足してみたら、ユーザーの反応はよくなかったんですよ。
自分達がゲームに熱心なプレイヤーだからと言って、ゲーム好きな人向けにつくってしまうと、ハイパーカジュアルのメイン層と、感覚がズレてしまうんですよね。
畑佐:
そこは面白いですよね。
ハイパーカジュアル って、基本的にゲームの会社がつくっているんですが、逆にゲームをあまりつくったことのない人のほうが、ハイパーカジュアルのユーザー感覚に近いんだろうなと思います。
3、「ギフトの中身」を見せるようにしたら継続率10%改善
佐藤:
Park Masterでは、サプライズギフトという「プレゼントの箱」がたまに出てくるのですが、ギフトの出し方をABテストで検証しました。
もともとは、「ギフトの箱をあげるから動画広告をみて」と、箱に何が入ってるか秘密にしたまま、動画をみてもらう仕組みにしていました。
それを、「この景品あげるから動画広告をみて」と、中身を事前にみせて動画をみてもらうようにしたら、継続率が10%上がりました。
その他の成功施策
レビュー誘導のダイアログをだすべき理由
佐藤:
ストアにいって評価が低いと、そこで帰っちゃう可能性もあるので、なるべくアプリの評価は高めに維持するように心がけています。
iOSは★4を超えるくらい(理想は★4.5)、Androidは★3.8を超えるくらい(理想は★4.0)あればいいかなという肌感でやっています。
畑佐:
当初Androidの「Park Master」はレビュー誘導を入れていなくて、アプリの評価が★3を下回るくらい低かったんですね。
なぜなら、レビュー誘導がないと「不満を言いたい人」だけがわざわざストアにきて、低い星と不満を書いて帰っていくからです。
逆に満足している人は「ああ楽しかった」でなにも言わずにゲームを終わる。だから、レビュー誘導をしないと評価が下がるんですよね。
佐藤:
実際、レビューへの誘導画面は、ゲームのデザインに合わせてつくって、ストアに遷移するようにしたら、★3.5は超えるようになりました。
Noodle Masterでは「初心者vsプロ」の広告が成功
佐藤:
広告の話で面白かったのは、Noodle Masterというラーメンのゲームでは、効果が一番高かった広告が「プロvs初心者」でした。
この「プロvs初心者」って、ハイパーカジュアルの広告として、あまりうまくいかないと言われていて。でも試してみたらインストール率が1.5倍になったんですよね。
この広告がずば抜けてよかった。おそらく「成功と失敗の対比」が明確にわかりやすいタイトルだったからかなとは感じました。
スタンダードではない広告パターンでも、網羅的に試してみることで、ゲームに合った成功パターンを発見できた、というのは学びでしたね。
ハイパーカジュアル のアイコンは「青ベース」にすると良い
佐藤:
ゲームの「色味」も大事にしていますね。なるべく万人受けするようにするのと、目を引きやすくするということを大事にしていて。
たとえば、背景は青をベースにしたりします。暗い色をつかうと全体が暗い印象になるので、ビビッドな色で馴染みやすくポジティブにする。
あとは、アイコンは青にしています。アメリカのランキングを見ると、ハイパーカジュアルって7割くらい青いアイコンなんですよね。
Unityからみたハイパーカジュアル市場
Unityさんの目線でみると「ハイパーカジュアル市場」の状況はどうですか?
金田一:
グローバルでの傾向としては、2020年はハイパーカジュアルのリリースペースは上がっていて、昨年比で約150%のペースでタイトルが出ています。
2019年には「第1ブーム」が、いったん落ち着いたような傾向があったのですが、ジャンル/メカニクスの幅が広がったことで再び増加していますね。
実際に、1タイトルで1億円の広告マネタイズに成功している、ハイパーカジュアルゲームのタイトルは、今年だけでも100以上は誕生しています。
日本のデベロッパーにとってもチャンスがありますか?
金田一:
日本のデベロッパーにとって、チャンスはかなり広がっている状況だとは感じますね。
実際、日本のデベロッパーがつくったハイパーカジュアル が、グローバルTOP10に入るケースが、2020年になってから一気に増えています。
今年に入ってからでいうと、大型タイトルをつくっているゲーム会社が、別ラインでハイパーカジュアルを開発するケースも増えてきていて。
実際に、Unity Adsとのそうした取り組みケースも数十社あり、プロトタイプが広告テストを突破してくるタイトルも続々と出てきていますね。
もちろん、インディー系のデベロッパーも多いですし、Voodooのようなパブリッシャーが日本進出したことで、知見にも触れやすくなっています。
また、日本のデベロッパーが開発した、謎解き・脳トレ系・ギャグ系のパズルが成功したり、ヒットタイトルのジャンルの幅は広がっているんですよ。
そのため、これまで日本的なカジュアルゲームをつくってきたデベロッパーが、ちょっと趣向を変えてタイトルをつくるだけで、グローバルヒットに繋がることも、充分あり得ると思っています。
「Unity」からのお知らせ。
ハイパーカジュアルゲームを含む、開発に関連した情報発信を、以下の場で行っております。ぜひご登録・ご視聴ください。
note「ハイパーカジュアルゲームナイト」:ハイパーカジュアルゲーム開発に関連する情報をご紹介
note「Unity Japan」:Unityに関連するあらゆるトピックを広くご紹介
YouTube「Unity Japan」:ほぼ毎週YouTube Liveで「Unityステーション」として開発Tipsなどをご紹介
Unity:マネタイズ・広告サービス
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取材協力:株式会社カヤック、ユニティ・テクノロジーズ・ ジャパン株式会社
広告企画:アプリマーケティング研究所