約4年でアプリ売上1億円。副業からスタートしたアプリ開発会社「AppStair」が730万ダウンロードを達成し、メタップスに買収されるまで。

2016年03月30日 |
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今年1月メタップスに買収された、アプリ開発会社「AppStair」さんに、これまでの経緯を聞きました。

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※AppStair株式会社 西岡 拓人さん(元 代表取締役)

「AppStair」について。

もともとどのような経緯で「AppStair」を立ち上げたんでしょうか?

もともと私は、クックパッドでエンジニアをやっていまして。そのときに副業として「Best Album」というアルバムアプリをつくったのが、そもそものはじまりでした。

その当時から、私は「プログラミングが趣味」みたいな人間でした。休みの日になっても「結局プログラミングしかやることがない」ということがよくあったくらい。

ただ、どうしても副業のままだと、なかなか作業が進まないんですよ。それが嫌だったんですね。そこで思いきって独立して、アプリ開発に専念してみようと考えました。

あと当時、副業でつくっていたアプリの売上が、月10万円くらいになっていたのもあります。だから「フルタイムで専念すれば、生活はできるだろう」と、そういう目論見がありました。

そうだったんですか、最初から会社をつくったんですか?

はじめは個人として独立(2011年11月)しまして、翌年(2012年4月)につくったのが「AppStair」という会社でした。

ただ、会社をつくったとはいえ、実態は「個人開発の延長」のような感じでしたね。奥さんに、経理やユーザーテストを手伝ってもらい、ずっと自宅で一人作業をしていました。

独立してからはずっと「自社でつくったアプリ」で生活していたのでしょうか?

いえ、創業のときから最近までずっと、受託開発も並行してやっていました。幸い「金銭的に苦しい」という瞬間はなかったんです。ただ、精神的には常に不安でした。何かあったらどうしようって。

たとえば、最悪のケースですけど、アップルにアプリを消されてしまったら、おしまいじゃないですか。だから、アプリの収益が安定するようになってからも、受託開発はやめませんでした。

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開発してきたアプリについて。

今まで「AppStair」でつくってきたアプリについて教えてください。

写真アルバムと動画アプリを中心に、全部で10アプリほどつくってきました。累計のダウンロード数としては730万ダウンロード(ほとんどiOSアプリのみ)という状況です。

主なアプリでいうと、動画編集アプリの「FilmStory」 が200万ダウンロード、アルバムアプリの「iフォトアルバム」が240万ダウンロード、「Best Album」が30万ダウンロードという感じです。

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※アプリはほぼ日本ユーザー(アルバムアプリは海外ユーザーが2〜3割)
※「Best Album」は有料240円(85〜240円で何度か価格変更している)

どのようにダウンロードを増やしてきたのでしょうか?

ずーっと地道なクチコミで、ダウンロードを積み上げてきた感じですね。「アプリストアのレビューをもとに、機能を改善する」ということをくり返して、プロダクトを磨き込むようなやり方です。

ちなみに、シーズンでいうと「年末年始」と「卒業シーズン(3月)」はすごくダウンロードが伸びますね。みんな「1年の振り返りムービー」をつくりたくなるからだと思います。

アプリの収益的には、どのくらいになっているのでしょうか?

これまでの約4年の累計で、1億円くらいの売上になりました。だいたいの売上比率でいうと「課金9割:広告1割」というバランスです。

最近の主力は「FilmStory」(動画編集アプリ)ですね。独立するきっかけとなった「Best Album」は、一時期は月50〜60万円まで伸びていたものの、最近では大きく落ち込んでしまっています。

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「課金が9割」というのはすごいですね。

これは「広告をばんばん入れてないから」というのもありますね。個人的には、できれば広告は入れたくないくらいです。うっとうしいじゃないですか。少なくともユーザーのジャマはしたくない。

課金率については、無料ユーザーの平均5〜6%くらいが、課金してくれています。調子の良いときだと10%に届くこともあります。ちなみに1年を通して、もっとも課金が伸びるのは大晦日です。

ユーザーにとっての「課金モチベーション」が知りたいです。たとえば「FilmStory」では、どのように課金まで至るイメージでしょうか?

まず「無料バージョン」では、機能にいくつか制限がかかっています。具体的には「広告が表示される」「ムービーに FilmStory と文字が入る」「ムービーの書き出しは30秒まで」の3つですね。

それで「課金」をすることで、この3つが解除されるのですが、課金モチベーションに大きくつながっているのは、「ムービーの書き出しは30秒まで」のところだと考えています。

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なるほど。

どういうことかというと、たとえばユーザーが「結婚式」のムービーをつくっているとします。動画を1時間かけて編集して、プレビューでのチェックも完了して、ついにムービーが完成しました。

そして、ようやく「さあ保存しよう」というときに、「ムービーの書き出しは30秒まで」という制限にぶつかってくると。

そのとき、心理としては「ストレス VS 課金」の戦いになるわけです。つまり「動画をつくった1時間の苦労 VS 課金(480円)」どちらを取るべきか、天秤にかけることになる。

こうしたプロセスを経て「最後まで動画を保存したい」と思った人が課金をしてくれます。それが先ほどの「課金率5〜6%」という数字に、つながってくるイメージです。

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これまで順調だったように思いますが「失敗してしまったこと」はありますか?

もちろん、いろいろ失敗もありました。たとえば、何本かつくったカジュアルゲームでは、300万円以上の予算をかけて開発したにも関わらず、結局10〜15万円しか売上がでなかったり。

やっぱりゲームは露出を続けるのが大変です、ランキングもすぐに落ちちゃいますし。もうゲームはつくってみて満足したので、当分はつくらないと思います。笑

そんなこともあったんですね。

あと「AppStair」をやりながら、他のスタートアップで、新規のWEBサービスを立ち上げようとしたのですが、すべて失敗に終わってしまいました。

ひとつは、月500円払うと提携店のランチが500円になるサービスです。順調に伸びてはいましたが、大手が参入してきたので、「勝ち目がないな」と判断してすぐに撤退しました。

もうひとつは「グループギフト」みたいな感じで、社内で何か「贈りもの」をするときに、WEB上で何をあげるか決めたり、みんなからお金を集めたりできるサービスです。

これについては「サービスが失敗した」というよりは、副業メンバーが集まって、それぞれ片手間でやろうとした結果、みんな「時間がとれない」という状態になって、やめてしまいました。

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メタップスに買収されるまでの経緯。

今回会社を売却したメタップスさんとは、どのように知り合ったんでしょうか?

メタップスさんのほうから、声をかけてもらいました。クックパッド時代からの知人のエンジニアが、メタップスに転職していて、彼から紹介してもらった感じでしたね。

そのエンジニア経由で、去年に一度「アプリを売ってくれないか?」という話をもらって。メタップスの佐藤社長にも会いに行きました。でも、そのときは条件が折り合わず、お断りしてしまいました。

そうなんですか、去年に1回断っていたんですね。

そうですそうです。それで、2回目に「メタップスで動画事業をやりたい。一緒にやりませんか?」と声をかけていただいたのが、2015年の12月でした。

佐藤社長いわく、いろいろ動画系のアプリをさわっていたら「いいアプリ」を見つけた。それで開発会社を調べたら「またAppStairだった」という経緯だったそうです。

「会社の買収」ってどのように進むんですか?

進め方としては、まず会社の経営数字(売上やコスト、アプリの状況など)を共有して。それをもとにメタップスさんから、「この条件でどうでしょう?」と、プランを提案いただきました。

そこから1週間ほどで「売却しよう」と決めました。12月はじめに提案をもらってから、1ヶ月後にはすべての契約が完了していたので、思ったよりすぐに終わりましたね。

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どうしてメタップスに会社を売却することを決めたんでしょう?

「動画事業を伸ばしたい」という方向性が一致していたためです。ちょうど「どう事業を拡大するか?」に悩んでいたタイミングでもあったんです。

もちろん「正社員を雇って、会社を大きくする」という選択肢もありました。ただそうなると本格的に「社長業」をやらないといけない。それは嫌でした。自分は「モノづくり」がやりたかったので。

なので、メタップスさんにも「自分はCTOをやりたい、サービス開発に集中したいので」と希望を出していました。(実際、その希望通りになった)

あと、メタップスには「Androidに強く、グローバル展開している」という強みがあって、うちは逆にそこが弱かったため、相性としても良いはずだと考えました。

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会社を売却してみて感じた「メリットとデメリット」をおしえてください。

メリットとしては、やっぱり精神的にすごく楽になりました。ずっと黒字ではあったのですが、いつもどこかに不安を抱えていたので。「会社に生活を守られる安心」に改めて気づくことができた。

あとは「メタップスのメンバーに、すぐに力をかりることができる」ということも、事業を最速で進めていくという意味では、大きなメリットです。

デメリットは、やっぱり「窮屈さ」は感じます。当たり前ですけど、好き勝手に新規事業をやったりできないですし。「好きな場所で好きなときにやる」という仕事スタイルもむずかしくなりました。

「AppStair」代表になった、元メタップス山田さんの話。

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※メタップスの子会社になった現在の「AppStair」では、CEO 山田さん(左)、CTO 西岡さん(右)、含め全5名ほどという体制になっている。

メタップスでアプリのコンサルをしてきた山田さんから見て、「AppStairのすごいところ」ってどこだと思いましたか?

実際に、中身を見せてもらってすごいなと思ったのは、「FilmStory」のユーザー数です。これからAndroid版をつくって、グローバル展開することで、まだまだ伸ばせるだろうなと考えています。

いま狙っている地域でいうと、アジア(日中韓)ですね。とくに台湾では動画をつくる文化が強いので。次いで、東南アジア(とくにタイ・ベトナム)でも、チャンスがありそうです。

これから改善したい「課題」があれば教えてください。

「FilmStory」でいうと、マネタイズの課題はあると思っていて。現状、あまりに「動画をつくる」というところに特化しすぎているんですよね。

どういうことかというと、ユーザーが「動画をつくるため」だけにアプリを開いている。そして動画をつくり終えると、インスタやツイッターに行っちゃうんですね。動画をアップするために。

それの何が問題かというと、インスタやツイッターに「ヒマな時間」をとられてしまう。それだと広告マネタイズが出来なくなってしまいます。

なので、今後は「動画を見る」という目的でも、アプリをつかってもらえるようにしていきたいです。たとえば「テーマ」を決めて、動画の投稿をしてもらったり、いま企画をいろいろ考えています。

取材協力:株式会社メタップス、AppStair株式会社

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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