今回はシンプルな「電卓アプリ」を開発しているwoodsmallさんを取材しました。爆発力はないけど安定する「電卓アプリ」、実際のところどれくらい稼げているの?
※株式会社woodsmall CEO 小林高志さん
「電卓アプリ」のデータや収益など。
「電卓アプリ」について教えて下さい。
オーソドックスな「電卓アプリ」です。2012年5月にリリースして、161万ダウンロード(Android 158万、iOS 3万)されています。現在は月10万ダウンロードずつ増えています。
ユーザーを国別で見ると、韓国55%、台湾18%、日本13%、アメリカ2%という割合です。アクティブユーザーの半分以上は韓国で、1日に1,500ダウンロードされています。
電卓アプリについては「老若男女つかえる」「全世界でニーズがある」「極力言葉をつかわない(翻訳しやすい)」という条件で、考えて決めました。
※iOS版のダウンロードが少ないのは遅れてリリースしたから。なおiOSは「台湾のiPad版」が半数を占めるとのこと。(iPadには「標準の電卓」が入っていない)
「電卓アプリ」って、どんな時につかわれているんでしょう?
「仕事でつかっている人」が多いのだと思います。わかりやすく、平日はアクティブユーザーが伸びますね。逆に、土日や祝日になると一気に下がります。
そういう意味では、会社の「期末シーズン」は、すごくアクティブになる。例えば、日本の場合は3月末と9月末、韓国だと12月末と6月末です。
あと少し驚いたのが、「紛争地域の国」で電卓アプリのダウンロード数が伸びること。例えば、タイ、クロアチア、最近だとトルコのときなどもそうでした。
どうしてなのかは、わからないんですけどね。紛争が起こると、家からでて逃げないといけないので、なんでもスマホで済ませるようになる、ということなのかもしれません。
「収益面」についてはどうですか?
収益額については、累計で1,180万円くらいです。内訳は広告収益が1,100万円、アプリ内課金が80万円という感じ。国でいうと日本と韓国がメインです。
現在のアクティブユーザー数(DAU)は85,000人ほど。月間の収益でいうと100万円くらいになっています。
ゲームアプリと比べると「爆発力」はないですよね。ただ、ユーザーが長くつかってくれるので、寿命が長くて、収益も安定するなと感じます。
※累計の広告収益の推移。
※累計ダウンロード数の推移。
【追記 2018.12/23 17:55】 なおこちらの電卓アプリ、開発者さん曰く「現在は電卓アプリが増えすぎていて、収益的にも落ちてきてしまっている」とのこと。これから参入する方は気をつけた方がいいかもしれない。
「課金収益」はそれほど多くないんですね。
そうですね。課金すると「広告の削除」ができるようにしていますが、広告のほうがずっと稼げるなという実感があります。
あと、やはり「日本人の課金率」は圧倒的に高いです。実際に、課金の90%は日本のユーザー。ユーザー数で見ると韓国が一番多いですが、ほとんど課金にはつながっていません。
広告はどんな感じで入れていますか?
フッターの「バナー広告」がメインです。あと「インタースティシャル広告」も入れていて、アプリ終了時に、日本は4回に1回、海外は3回に1回の頻度で出しています。
広告会社については、メインはAdmobをつかっています。日本はnendとimobileも入れています。アジア(東南アジア)に関しては、inmobiの収益性が高いので、それをつかっています。
電卓アプリ界での「最強のアプリ」ってどれなんですか?
Androidだと、アメリカの「計算機プラス」が、おそらく最強ですね。これは私が「電卓アプリ」を出したときから、ずっと一番で。見た目はすごくオーソドックスなんですけどね。
このアプリ、推定値ではありますが、大体1日9,000ダウンロードずつ増えていて、累計1,300万ダウンロードを超えています。なので、広告収入は月500万円くらいだと読んでいます。
※Android版のみの推定値。iOS+Androidだと2,000万ダウンロード超えているみたい。
電卓アプリの「1起動あたりの滞在時間」ってどのくらいなんですか?
滞在時間は平均4分くらいです。ただリリース当初は、平均20秒くらいだったんですよ。これは「計算履歴」の機能を追加したところ、ものすごく滞在時間が伸びました。
「計算履歴」をつけたことで、計算結果をアプリ上で確認してもらえるようになった。この機能がないと、ノートやメモに時間が奪われちゃうわけですね。
「アプリ運営」でうまくいった5つの施策
1、「アイコン」と「スクリーンショット」を変えた。
アプリストアでの「見た目(アイコンやスクリーンショット)」を変えると、ダウンロード数にすごく影響がでます。
変えるときは「デザインをガラッと変える」というのがオススメです。細かく変えてしまうと、変化がよくわからないので。
※プロのデザイナーにアイコンをつくってもらって、ダウンロード数が伸びた。
2、アプリを多言語(40以上)に翻訳した。
いま「電卓アプリ」は、43言語にローカライズしています。最初は「グーグル翻訳」で自動翻訳していましたが、やっぱり翻訳会社に頼むと、その国でのレビューも良くなります。
「アプリ名の翻訳」もそうです。例えば、同じ中国語であっても、台湾では「計算機」、香港だと「計算器」みたく、国ごとに微妙な違いがあったりして。
台湾では、途中まで「計算器」にしてしまっていたんですけど、正しい表記の「計算機」に変えた途端に、一気にダウンロード数が伸びました。
3、カテゴリは「人気アプリ」と同じにした。
いろいろとカテゴリも変えてみたのですが、正直そこまで影響はありませんでした。ひとつ言えるのは「売れているアプリと、同じカテゴリすべき」ということ。
電卓アプリであれば「売れてる電卓アプリ」が、たくさんあるカテゴリを選ぶ。理由はGooglePlayの「類似アイテム」という項目が、「カテゴリ」に紐付いているからですね。
なので「売れているアプリ」と同じカテゴリにしておいたほうが、ユーザーが「類似アイテム」から流れてくる可能性が高いということです。
4、「ユーザーからの要望」を地道につぶした。
ユーザーレビューなどに、アプリへの「改善要望」や「文句」が、よく書かれますよね。これをひとつずつ潰して続けていくと、実体験としてじわじわと良い影響がでます。
例えば、電卓でいうと「カンマの区切り方」って、国によって違うんです。最初のほうはめちゃくちゃだったのですが、ユーザーからの指摘に従って、国ごとにしっかり改善していきました。
5、アプリをアップデートする
「アップデートを続ける」というのは、案外大事なことだと考えています。うちも大していじっていなくても、月2回はアップデートするようにしていて。
理由のひとつは「アクティブユーザーが増えるから」です。Androidだと、アプリのアップデートが完了すると、ユーザーに通知がいくんです。「電卓がアップデートされました」みたいに。
その通知からアプリを起動する人が、少なからずいます。逆に通知をみて、アンインストールする人も増えますけど、アクティブユーザーもちゃんと増える。
もうひとつの理由は「信頼性」です。ユーザーから見ると「2013年でアップデートが止まっている電卓アプリ」って、ダウンロードしたくないじゃないですか。
なので「きちんと運営を続けていますよ、機能追加もしています」という意思表示のためにも、頻繁にアップデートをするようにしています。
取材協力:株式会社woodsmall