「アプリは儲からない。2年で収益12,962円(時給4円)」異端開発者「クリーニングス」がそれでもクソゲーをつくり続ける理由。

2015年04月02日 |
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今回は「アプリがぜんぜん売れない」で有名な、アプリ業界の異端児「クリーニングス」さんにお話を伺いました。なぜ彼らは「クソゲー」をつくり続けるのでしょうか。

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※クリーニングス 会社員βさん(左)、会社員Aさん(右)

「クリーニングス」について教えていただけますか?

会社員A:
同じ会社に勤めている会社員二人で、アプリをつくっている匿名のユニットです。

うちの会社は副業禁止で、バレたらクビになってしまいますので、いつも社員食堂で、こそこそとアプリの企画会議をしています。

どうしてアプリをつくろうと考えたんでしょうか?

会社員A:
そうですね・・・ストレス発散の一種でしょうか。本来は「ふざけた人間」なのに「マジメな会社員」として働いているのがイヤで仕方ないんです。

それで「おもしろいことやろうぜ」となった時、ちょうどアプリが流行ってたのでやってみようと。未だに全然ヒット作もないし、儲かってもいないんですけどね。

今までどのくらい稼げましたか?

会社員A:
2年間で11アプリだして6,948ダウンロードされて、稼げた金額は累計で12,962円です。

時給で計算したら4円くらいでした。酷い話ですよね、アプリなんて儲からないんですよ。

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いま2年間を振り返ってみてどうでしょうか?

会社員A:
特に後悔はないんですけど、思い切って仕事をやめたりしなくて、本当に良かったとおもいますね、

それ間違ってやってしまってたら、100%路頭に迷っていたはずです。

最近だしたアプリを、ひとつ教えていただけますか?

会社員A:
例えば、「未来の相撲」を描いた「大相撲-23XX-」というゲームアプリがあります。この時代の相撲は、かなり過激に進化していて、命をかけた格闘技になっている。

特に、ステージ4に登場する「天草四郎」は難易度的にかなり手強く、天草四郎に苦しめられ、アンインストールされた方もいらっしゃったかと思います。

ちなみにダウンロード数は、iOSとAndroid合計で1,400ダウンロードくらいです。

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※「大相撲-23XX-」(iOS/Android)、右の画像が「天草四郎」のステージ4。

これ、何ステージまであるんでしょうか?

会社員A:
全部でステージ5までありますよ。ラストステージだけは、「ギャラクシアン」みたいな弾幕をよけるシューティングゲームになっています。

恐らく、みなさんこのアプリをやらないと思うので、ストーリーのネタバレをしますが、最終ステージにでてくる横綱を倒すと「実の兄だった」という衝撃の事実が発覚します。

それでエンディングで、主人公は兄の跡を継いで、横綱になるんです。

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そうなんですか。このアプリ「バージョン1.1」となっていますが、何をアップデートしたんでしょうか?

会社員A:
バグの調整をしたのと、あと「ランキング機能」をつけましたね。ただUnity対応のマニュアルを用意しているランキングサービスがなくて、実装には苦労しました。

幼少期に説明書無しのGB版「信長の野望」を買ってしまい、絶望したことを思い出しましたね。

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この「お相撲さんとペリカン」というアプリは、どんなアプリですか?

会社員A:
これはね、お相撲さんが飼育係になって、ペリカンにバズーカでエサをあげるアプリなんですよ。

「お相撲さん」は我々の最近のテーマなんです。なんというか、不思議なしきたりがあったり、ほぼ全裸で戦っているし、存在自体がすごくおもしろいでしょう。

さっきも駅で、ちょうどお相撲さんの団体を見かけたのですが、ヘッドフォンで音楽を聴きながら、ボストンバックを持っている力士がいて、異様なギャップを感じました。

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※「お相撲さんとペリカン」お相撲さんがリンゴをペリカンに食べさせる謎のアプリ(iOS/Android

独特の世界観をお持ちなんですね、ちなみに注目しているアプリ開発者などはいますか?

会社員A:
「RYU HAYABUSA」という方の、Androidアプリがすごく印象に残っています、彼のアプリは、ちょっと我々も理解しきれないのですが、異次元にいる感じがします。

例えば「ウリをはじめた○○少女」というアプリ。

これは、ダイコンの姿をした「ダイコちゃん」という少女がヒロインのノベルゲームです。内容はご想像にお任せしますが、なかなか味わい深い作品でした。

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とりあえず、かなりレベルが高いことだけは分かります。

会社員A:
あともうひとつは、「THE LEGEND OF EKKEN」という謁見ゲームです、「謁見ゲーム」というのは「いかに失礼の無いように謁見するか」というゲームですね。

画面右側にうつっている「男」がプレイヤーで、彼を操作して衛兵にひざまづければクリア。絶妙なタイミングでひざまづかないと、槍で成敗されてしまいます。

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なお、難易度が上がってくると、障害物として、いきなりシーザーサラダが飛んできたりします。世界観がここまで理解できないゲームは、なかなかありません。

ちなみに、非常に残念なことに、これらの「RYU HAYABUSA」のアプリは、今はもうGooglePlayから、全部消されてしまったみたいですね。

クリーニングスさんのアプリは、リジェクト(審査に落ちること)されたことはありますか?

会社員A:
アップルさんに、一回だけリジェクトされたことがありましたね。「オヤジが濡れる」という「オヤジに水をぶちまけて怒られるゲーム」をだした時のことです。

どうしてリジェクトになってしまったのでしょうか?

会社員A:
アップルからのメールには「このゲームはどうやったらクリアできるんだ!」と書かれていました。これつまり「怒られるのがゲームオーバー」だとおもっているわけですね。

でも「オヤジが濡れる」は「おやじを濡らして怒られることを楽しむゲーム」なので、クリアもくそもない。要は「楽しめるかどうか」なんですよね。

「怒らせるのがクリア」とも言えるし「怒られるんだからクリアではない」と考える人もいるでしょう。これは価値観というか、哲学的な問題になってしまうので、解決できない問題なんです。

AppStoreの審査担当が、このゲームをずっとやってると思うとおもしろいんですけど、そのアップルからのメールには返信していません。この質問は「価値観の問題」だから解決できないんです。

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※「オヤジに水をかけて罵倒されて終わり」というアプリ。オヤジのセリフは約200バリエーションあるのだとか。

なるほど、アップルと「価値観のすれ違い」があったわけですね。

会社員A:
そうですね。あとアプリをだしていてあれなんですけど、私たちアップルがすごい嫌いなんですよ。

なぜかというと、たぶんコンプレックスなんですよね。アップルの「イケてる人がつかっている」っぽいところが、ちょっと分かり合えない感じ。

我々って、意識低い系で、情報弱者だし、「ネットといえば、面白動画とエロ動画しか知らない」という民族なので。

相方の「会社員β」さんはスマホを持ってないそうですね。

会社員A:
ええ、「会社員β」はアプリ開発者なのに、いまだにスマホを持ってなくて、ガラケーの「月額300円」のゲームが、どんどんサービス終了していくのを、よく嘆いています。

あと、彼もアップルは嫌いで「”スタバでMac”よりも”河原でガラケー”のほうが風情がある」と話しています。

※なお「会社員β」さんは休日出勤でインタビューに参加できず。

クリーニングスのお二人が、お金を稼げなくても、アプリをつくり続けるのはなぜでしょうか?

会社員A:
なんて言うんでしょうね、「正気を保つために、アプリをつくって出している」というのが近いと思います。「普通の会社員でいること」がつらいです。根は真面目なんで、仕事は一生懸命やるんですけどね。

そういう意味では、我々にとってアプリは「排泄物」なのかもしれません。健康でいるために、出し続ける必要があるわけですね。

アプリをつくるのは楽しいですか?

会社員A:
楽しいですよ、好きなことをやっていますし、次のアプリを考えているときも、すごく楽しいですよね。
いくら周りから「クソゲー」と言われようが、これからもつくり続けようと思っています。

いつか努力は報われるかもしれない?そんなわけないだろうと思いますね、そんなものはもう信じていませんよ。

まあ、仮にアプリがヒットしてお金をたくさん手に入れたら、田舎に土地を買って、牛を育ててチーズをつくったりして、暮らしたいとは思っていますね。

取材協力:クリーニングス

編集後記

儲からないクソゲーをある種の「ストレス発散」としてつくっていると。「路上で歌っているミュージシャンと同じようなものだ」とも言っていましたが、ちょっとなるほどと思いました。

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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