11月に開催されたメタップスさん主催「人気マンガ系アプリに学ぶ勉強会!」の講演を紹介します。勢いのあるマンガアプリ運営者による、収益やプロモーションの話など参考になります。
<目次>
1、累計150万DLを突破の大ヒットアプリ「マンガ読破!」の企画・運営術。byGreen romp
2、 コミック系アプリの分析とマーケティング戦略について。byメタップス
3、「マンガボックス」のマネタイズやプロモーションについて。byDeNA
4、「マンガ読破!」「マンガボックス」によるトークセッション
1、「マンガ読破!」さんの講演からピックアップ
[講演者]株式会社Green romp 副社長 増田桂己さん
「マンガ読破!」について
「マンガ読破!」は2013年の12月にスタート、収録タイトルは300作品以上。肌感ではあるがユーザー層は30代前半が多く、男性60%:女性40%。
アプリのダウンロード数
「マンガ読破!」のダウンロード数は165万ダウンロード、姉妹アプリの「マンガ読破!EX」は35万ダウンロード。DAUは15万、MAUは50万。(※DAU=デイリー・アクティブユーザー、MAU=マンスリー・アクティブユーザー)
マネタイズは課金と広告
マネタイズは課金と広告のふたつ。広告はインタースティシャルと上下のバナー収益。課金はもっと読みたい人(「プレミアム」というマークがついているマンガを読む時)に課金してもらう仕組み。
割合としては広告80%:課金20%で、一番課金するのは30代後半の男性。(全巻無料という形なのでページ数が多い=impも高くなるため広告の割合が高い)
当初は広告だけだったが、他社の漫画アプリがアプリ内課金で成功しているのをみて、課金も実装した。
人気のマンガジャンル
読者数が伸びるコンテンツは「ヤンキー」「水商売」「なりあがり」の3つ、いわゆる「アウトロー」と呼ばれるジャンル。ガラケー時代からこの3ジャンルは売上が立ちやすい鉄板ジャンルである。
2、「メタップス」さんの講演からピックアップ
[講演者]株式会社メタップス ゼネラルマネージャー 原周平さん
マンガアプリが伸びている。
100万ダウンロードを超える、マンガアプリが出てきている。
※ダウンロード数は調査当時のもの。マンガボックスは現在500万ダウンロードを超えている。
電子書籍の市場予測。
電子書籍の市場規模は今後5年で2.5倍(2500億円以上)になる予測もでている。
マンガアプリのマネタイズ手法。
マネタイズ手法をもとにしたマンガアプリの分類図、マネタイズ方法は様々で各社試行錯誤している。
「縦軸」がコンテンツを販売している単位、「購読時間」を時間売りしていたり、1話2話と切り売りしている。「横軸」が課金寄りか広告寄りか。
バグは排除しないといけない。
とあるマンガアプリの星1(低評価)レビューの単語を分析すると、「更新」+「使えなくなる」「読めない」「出来ない」というワードがでてくる。
つまりアプリの更新時(アップデート)の不具合がフックになりネガティブレビューがついている。
ブーストとストアの特徴
ブーストプロモーションはゲーム以外でも有効、GooglePlayとAppStoreのランキングの特徴。
マンガアプリの男女比
コミック系アプリの男女比(メタップス推計データ)。
ユーザー層を考えて獲得するのが大事。
ユーザー層にあわせて獲得をしていくことが大事。ダウンロード数だけ見ずに、重課金ユーザーをベースとしながらアクティブユーザーを増やすこと。
3、マンガボックスさんの講演からピックアップ
[講演者]株式会社ディー・エヌ・エー IPプラットフォーム事業本部 部長 椙原誠さん
マンガボックスは600万ダウンロード突破。
「マンガボックス」とは、アプリで読める週刊誌。人気作家の書き下ろしも連載。英語と中国語版も配信している。ダウンロード数は600万を突破している。
ソーシャルで先読み。
バイラルプロモーション。ソーシャルでシェアしてくれたら、1号先の作品を先読みすることができる。
テレビCMの効果。
具体的な数値は公開できないが、平常時と比べると第一弾のCMは8.9倍の流入があった。第二弾のCMは4.1倍の流入があった。
マネタイズ1「単行本販売」
リアルな書店で紙の単行本を販売している。電子書籍もマンガボックス内で販売している。巻数がまだ少ないが、それなりの売上になっている。
マネタイズ2「先読みリワード」
「先読みのためにソーシャルでつぶやくのは嫌だ」という人のために「このアプリをダウンロードしたら1話先読みできますよ」という取り組みもしている(リワード広告になっている)。「先読みリワード」と「先読みシェア」の比率は半々くらい。
マネタイズ3「タイアップ漫画」
直近ではブルボンさんの「アルフォート」(お菓子)の漫画をつくって特設サイトへ誘導した。
マネタイズ4「グリッド広告」
「グリッド広告」を12月から販売開始予定(いままでもテストしていたが、それなりに良い数字がでている)
4、マンガアプリトークセッション
[登壇者]ディー・エヌ・エー椙原誠さん、Green romp 増田桂己さん、葛城さん
[モデレーター]メタップス佐藤 航陽さん
海外でどれほど日本のマンガが受け入れられるか次第で、マンガアプリのスケーラビリティが決まってくると思いますが、海外のユーザーの粘着性は日本と比べてどうでしょうか?
椙原(マンガボックス):
基本的に日本も海外もコンテンツは同じなのですが、マンガボックスでは「最初の号」と「最新号」が見られて「真ん中は単行本を買って読んでください」というモデルなんですね。
それで実は、海外ではまだ「単行本」が販売できていないため、(最初と最後しか読めなく)ユーザーが定着しづらい状況になっています。もちろん今後は権利者さんと調整をして解決していきます。
日本のコンテンツを海外に持っていくと「海賊版」が問題になりますが、無料のマンガアプリでもその問題は起こり得るんでしょうか?
椙原(マンガボックス):
そうですね。日本のマンガがたくさん読める、おそろしい海賊版サービスがあって、マンガボックスに無料で載っているマンガすら載っているんです。もちろんそれは競合にもなりますよね。
アプリをグローバル展開する際の「言語のローカライズ」っていうのは、専門の業者さんに頼むものなんですか?
増田(マンガ読破):
そうですね、アプリ内のメニューなどの言葉は簡単に翻訳ができるのですが、マンガのセリフって翻訳がすごく大変なんですよ。
まず翻訳をしてから、理解しやすいよう噛み砕かないといけない。コストでいうと1巻あたり20万円くらいかかるんです。
あとはわざわざ翻訳したとしても海賊版が出ていると「これ、読んだことある」なってしまう。中国版の「ブラックジャック」は200ダウンロードしかされてないですよ。
マンガって独特のニュアンスがあると思いますが、「翻訳後の文章が正しく自然に訳されているか」って、どうやってチェックしているんですか?
増田(マンガ読破):
チェックしようがないんですよね。アレンジしてしまうと作家さんに許可をもらわないといけないですし、基本は出来るだけ直訳にしています。
そういえば、英語版のカイジの「ざわざわ」ってどうやって翻訳しているんだろう?
「マンガアプリ市場」には、まだまだ参入の余地はあるのでしょうか。
椙原(マンガボックス):
「ポテンシャルはまだまだあるな」というのが実感です。
ジャンプの全盛期って数百万部後半レベルで売れていた時期もありますよね。そう考えると、無料マンガが600万ダウンロード程度で終わるはずがない。
マンガアプリの「サービスごとの棲み分け」というのは、出来はじめているんですか?
椙原(マンガボックス):
先ほどメタップスさんの資料にもあった通り、comicoさんは明確に女性向けのマンガを出してきているなと感じます。
逆に「マンガボックス」では特定のセグメントは狙っていません。デジタルの良さって「紙面の都合がない」ことなので、どんなユーザーにとっても面白いと思えるマンガがある状態を目指しています。
「マンガ読破」さんのように旧作品を載せているアプリでは、作家さんへの営業力が重要になってくるんでしょうか?
増田(マンガ読破):
はい、ガチで重要です。僕ら「いいとも方式」と呼んでいるのですが、漫画家さんに「仲の良い作家さんいますかね?」と、紹介で話が進むこともすごく多いんです。
葛城(マンガ読破):
「マンガ読破」では0から始めて、今100人弱の作家さんとつながりが出来ています。
作家さんが、マンガアプリにコンテンツを提供してくれるかどうかって、「収益がどれくらい出るか」と「多くの人に読んでもらいたい」のどちらで決まるのでしょうか?
増田(マンガ読破):
もちろん収益に敏感な先生もいらっしゃるので、収益(料率)の話がメインになるケースも多いです。
ただ麻雀をやったり、一緒に飲みに行ったら、いい条件でGOサインがでるということもあります笑。つまり泥臭い属人的な営業を、1件1件丁寧にやってくのが大事ですね。
葛城(マンガ読破):
ただ作家さんってアーティストでもあるので「お金はいらない。多くの人に読んでもらいたい」という人も中にはいます。
椙原(マンガボックス):
僕も「マンガボックス」の担当になって会食が異常に増えました笑。やっぱ人と人の繋がりで「こいつと仕事して楽しい」とならないと話が進まないですよね。
漫画アプリならではのコンテンツの消費のされ方というのも出てきていますか?
椙原(マンガボックス):
ひとつ面白い事例があります。「アポカリプスの砦」というマンガが、雑誌が休刊になってしまって、公開する場所がなくなっちゃったんですね。
それで、マンガボックス上で改めて第1話から公開してみたら、一気に単行本が売れたんです。マンガボックスに載ることで100-200万人には読まれるので、そういう現象も出てきています。
出版社さんからも、完結系のタイトルをマンガボックスに載せて、単行本を売りたいというお話も増えてきていますね。
ウェブで無料公開した後に、リアルな書籍でも販売するビジネスモデルって、まだ成功事例が少ないと思うのですが、マンガでは手応えはどうですか?
椙原(マンガボックス):
「無料で読んでたものを有料で買う」というハードルは間違いなくありますよね。
あと、マンガボックスの単行本って「アプリ内の単行本コーナー」ではすごく売れているのですが、Amazonなど(外部の電子書籍サイト)ではぜんぜん売れていないんです。
ということは、「マンガボックスの漫画が単行本でも買える」ということが全然認知されてないということ。そこがそもそもの課題だったりします。
やはり(Amazon上の)kindleストアでマンガを売るには「1巻無料」の施策をやらないといけないので、単行本の巻数もたまってきたことですし、今後やっていきたいですね。
「マンガボックスインディーズ」の漫画家さんたちは、どのようなところがモチベーションになっているんでしょう?
椙原(マンガボックス):
「自分の漫画がたくさんの人に読まれる」というのがモチベーションだと思います。
「マンガボックスインディーズ」のユーザー数も、マンガボックス本体の半分くらいには育ってきているので。(マンガボックスインディーズの漫画は、現状単行本化されていない)
アクティブユーザーを増やすための施策として、やっていることはありますか?
増田(マンガ読破):
comicoさんが「ReLIFE」というマンガで、「1巻だけ読ませて、2巻以降はcomicoの本体アプリで読んでね」という施策をやっているのですが、「マンガ読破」でもやっていてうまくいっています。
なぜうまくいくかというと、「マンガの続きを読みたい」という導線で集まるので、自然にいいユーザーさんが残ってくれるからですね。
ブーストで4万人のユーザーを無理に獲得したとしても、結局4,000人(10%)ぐらいしか残らないですからね。
会場からの質問
DeNAさんの「SHOWROOM」(アイドルがネット上で仮想ライブを配信するサービス)とマンガボックスって親和性が高いと思うのですが、連携などは検討しているのでしょうか?
椙原(マンガボックス):
「自社のリソースを最大限活用するためにどうするか」というのは日々話しています。
妖怪ウォッチみたいに、アニメ・ゲーム・玩具で一気に展開するようなアプローチは、いずれやっていきたいですね。
「1話だけタダで読ませて、他のアプリに流入させる」という話がありましたが、Appleの場合「無料から有料への誘導」はNGがでそうですが、その辺は大丈夫なんでしょうか?
葛城(マンガ読破):
そうですね、単体で切り出したようなアプリだと、Appleさんとしては「iBooksストアで売れ」という方針なのだと思います。
「中身だけ変えた同じアプリ」だと審査が通らないので、1個1個アプリの仕様を変えて、ゲームを入れたりとか、パズルを入れたりという工夫をしています。