名古屋の「アプリ工場」ことGoodiaさんが、東京(原宿)にもオフィスをオープンしたとのことで、お話を伺ってきました。
カジュアルゲームをつくっている開発者さんはきっと参考になるはずです。
※グッディア株式会社代表の深野 真人さん
Goodiaの近況について
Goodiaさんはどのくらいの人数でやっているのでしょうか?
深野:
いまスタッフは約50名です。名古屋(開発)が30人、ベトナム(開発)が10人、東京(企画・営業)が10人弱って感じですね。
アプリの総ダウンロード数と、どのくらいのペースで出しているか教えていただけますか?
深野:
累計で3,500万ダウンロードです。いまカジュアルゲームを週5本のペースで出しています。
iOSとAndroidでいうとiOSが1.5倍ぐらい多くて、ほぼユーザーは日本です。
2年前と今で比べると、カジュアルゲームでいうとどんな変化がありましたか?
深野:
2つあります。1つはやっぱりソシャゲをはじめとした「ブースト攻撃」が激しくなったことですよね。
2012年くらいって、本当にノンプロモーションでもランキング上位に入れることもありましたけど、ほぼそれがなくなった。
そして2つ目は、ここ1~2年で「ユーザーが求めるクオリティー」の部分、「ゲームのおもしろさ」のハードルが一気に厳しくなったと感じます。
2012年とかって「ソフトクリームが降ってくる」みたいな単純なゲームばかりでしたもんね。
深野:
そう、全然それでよかった。うちの「レジの達人」なんて累計では100万ダウンロード以上されてますけど、いま出したとしてもたぶんランキング100位にも入れない。
グラフィックというよりか、ゲーム性のハードルは間違いなく上がっていると感じますね。
けっこう昔につくったアプリが、ずーっと稼ぎ続けるパターンってあるんですか?
深野:
ありますね、「鬼蹴り」とかはそうです。やはり、アクティブユーザーの維持が出来ると息が長いです。ゲーム性がよく出来ていたり、中毒性が高いものは長続きする。
ただ、基本的にはいわゆる「カジュアルゲーム」って、すぐユーザーがいなくなっちゃいます。
ストアでパッとアイコンを見て「おもしろそうだな」ってアプリを落として、なんとなく遊んでみて「おもしろかった、でも飽きちゃった」という感じでしょうね。
となると、Goodiaさんの収益って「今月の売上≒最近つくったアプリの売上」という構図になるんでしょうか。
深野:
ですね。たぶん「直近3か月でつくったアプリが、今月の売上の8割を稼いでいる」というイメージです。そういう意味では、新作アプリを出し続けないといけない。
「ダウンロードを増やす」という点では何をされていますか?
深野:
基本的に、新作アプリをリリースしたらブーストを少量打っています。
それに併せて他のアプリからユーザーを送客をして、ランキングをあげている感じです。
最近、調子のよい広告ってありますか?
深野:
バナーよりかは全画面広告が調子いいですね。もう少ししたらパフォーマンス的には落ちていくかもしれないですけど。
アイコン広告も最初「なんだこりゃ」ってレベルで調子よかったんですよ、目新しい広告形態だと押してくれるんでしょうね。
ちなみにアイコン広告は、うちもAppStoreの審査で落ちること全然ありますよ。
※Goodiaさんが全画面広告(インタースティシャル広告)だすタイミングを調べてみたら「ゲームオーバーからタイトル戻るとき」「ステージクリア画面」「ゲームオーバー画面」など、オーソドックスに一区切りつくタイミングで入れていました。
逆に今年になってやりやすくなったところっていうのはあるんですか?
深野:
あんまりない気がしますね。
でも「大きくヒットしなくても、そこまで売上が下がらない」というのはありますかね。収益が出せるランキングの最低ラインは下がっています。
つまり「なんとしても25位に入る!」ということではなくても大丈夫ということです。もちろん、ランキングが高ければ高いほど収益も伸びますけどね。
Goodiaのゲームもそこまでランキング上位は狙っていなくて、AppStore総合40~50位ぐらいで、ほどよく遊んでもらえればOKって感じ。
Goodiaさんのビジネスモデルとしては「そこそこおもしろいアプリを、できるだけ速いスパンで出していく」っていうのがカギということですかね。
深野:
そうですね。単純に今、週5本で月20本だしているとする。
それで1本あたり平均100万円の収益だったら、だいたい月2,000万円になるし、それが1本150万円だったら3,000万円みたいな感覚ですよね。
2014年のGoodiaアプリ「4つのジャンル戦略」について。
今年に入って、4ジャンルのゲームをつくってるじゃないですか。ここのジャンル分けについては何か戦略があるんですか?
深野:
考えていることの中心としては「いろんな切り口のGoodiaのゲームを多くの人が遊ぶ」という状況を目指しています。
まず、フラットデザインのおしゃれなゲームをつくっている理由は2つあって。
ひとつは、ゲーム内容が同じでも「棒人間のダサいゲームはやらないけど、デザインがかっこよければやる」みたいな層もいると思ったから。
つまり、元々つくりまくっていた「棒人間系」のカジュアルゲームって、カジュアルゲームを遊ぶユーザー全体の一部でしかないということです。
もうひとつは、アメリカでもシンプルなゲームが流行ったりしてるじゃないですか。なので今後の展開を見据えて、海外でも勝負したいという意図もあります。
うちは基本ローカライズはやらないのですが、このタイプのゲームだけは英語にローカライズもしていますね。
放置系の育成ゲーム、店舗経営シミュレーションゲームも今年からはじめましたよね。
深野:
はい、これは女性含めて「忙しいアクションゲームはやらないけど、のんびりやれる育成ゲームはやりたい」というユーザー層が確実にいるためです。
あと今までまったくやってなかった「アプリ内課金」が、どのくらいされるのか試してみたかった。
謎解き脱出ゲーム「ビリー」シリーズはどうでしょうか?
深野:
やっぱり「謎解きの脱出ゲーム」はコアなファンが多いという印象です。
「ビリー」を遊んでいるユーザーは、他のカジュアルゲームは遊ばず、このシリーズしか遊んでない可能性も高い。
「ビリー」シリーズは制作に手間がかかりそうですがどうでしょう?
深野:
そうですね。ストーリーもあれば、謎解きも考えないといけないので、このシリーズが一番手間がかかるのは間違いないです。
そして、「ビリー」シリーズは手間の割には、そんなに収益がでない。数日で1本つくれるシンプル系ゲームのほうが収益性が高くなっちゃうことさえあるんです。
1ダウンロードの収益性が高いジャンルとはどれですか?
深野:
1ダウンロードあたりの収益単価でいうと「お店経営系」が一番高いですね。
課金もある程度はされていて、割合でいうと広告90%で課金は10%以下という感じですけど。ただもう少し課金は伸ばせるかもしれない。
総合的に「稼ぎやすい度」でいうと、どういう順番なんですか?
深野:
総合的に稼ぎやすい度でいうと、1位「激ムズ」、2位「お店経営」「放置系」、3位「棒人間カジュアルゲーム」、4位「脱出ゲームビリー」、5位「おしゃれなシンプルゲーム」ですかね。
「激ムズアクション」みたいなすぐ終わるアプリよりは、100ステージくらいある「激ムズ系ゲーム」が収益性としては良いですね。すぐやめないというか、継続率が高いんです。
1本のアプリで、平均どのぐらい稼いでるんですか。
深野:
どうなんですかね、けっこうバラバラなんですよね。
「シンプル系」1本で月100万円いくアプリもあるし、一方で手間をかけてつくった「ビリー」がそれ以下だったりというところです。
今年で一番ヒットしたアプリはどれでしょうか?
深野:
今年一番ヒットしたのは「激ムズ迷路100」(AppStore)です。
ダウンロード数でいうと50万ダウンロードぐらい。順位ではAppStore総合2位までいきました。
50万ダウンロードで、1ダウンロード30円の収益性として、売上1,500万円。そんなにいきますか?
深野:
うーん、そこまでいかないですね。4月にだして・・・収益でいうとたぶん1,000万円は超えているレベルじゃないかな。
1,000万円超えてくるアプリは、ほとんどないですね。やっぱりポイントとしてはアクティブユーザーがどのくらい残るかだと思います。
そういう意味では、「アルパカにいさん」とか「ネズミだくだく」あたりは何千万円というレベルまでいっているんじゃないでしょうか。
海外はどうしたらうまくいくんですかね?アメリカで流行っているカジュアルとGoodiaさんでつくっているカジュアルは、質やデザインにはそこまで差がないと思うんです。
深野:
そうですね。海外はまだ攻め方がつかめないんですよね。
今のところは「ローカライズして出してるだけ」って感じなので、もっと色々仕掛けないと難しい。そこに対するコストを考えると、まだ攻めきれていない状況です。
アメリカでカジュアルゲームだしまくっている「アメリカ版goodia」みたいなデベロッパーいますよね、たしか名前が「ketchapp(ケチャップ)」っていうところ。
深野:
いますいます、あそこはすごいですよね。まさにうちが日本でやっているみたいに、1回ユーザーを捕まえて、ずーっと回している感じ。
アメリカってブーストが一般的じゃないから、ランキングの入れ替わりも激しくないし、北米で当たると、ヨーロッパのほうにも飛び火していきますし、あれをアメリカでやりたいんですよね。
※KetchappのアプリはいつもAppStore(米国)のトップ100にランクインしている。次々にゲームをだして(Goodiaよりはペースは遅いが)、ユーザーを次のアプリにどんどん流している。
スタッフが増えた話
いま全部で50名とのことですが、1年前くらいってそんなに人数いましたっけ、どのようにメンバーが増えていったのでしょう?
深野:
去年の夏からちょうど増えはじめたんですよ、1年前は6~7人だったと思います。名古屋で知り合いのエンジニアがどんどん入ってくれて。
あと、岐阜県が主催で「スマホエンジニアの育成事業」をやっているんです。
愛知は岐阜のとなりなので、そこの卒業生がうちに来てくれたりという感じです。あの辺の地域だと「iPhoneアプリといえば岐阜」みたいな雰囲気もありますね。
岐阜県が「学生のスマホエンジニア」を事業として育ててるんですか?
深野:
いや、学生ではなく社会人ですね。岐阜県が、社会人に半年〜1年間くらい給料を払いながら、エンジニアの育成をしているんです。
それで「スキルを身につけて就職しましょう」ということで、卒業してGoodiaに入ってくれる人が月3-4人いた。
エンジニアからすると幸せなシステムですよね。給料をもらいながらアプリの開発とかが覚えられるのですから。
今後の展開について教えてください。
深野:
カジュアルゲームを中心にしつつも、隙間時間に楽しめるエンタメ系のアプリなんかも挑戦していきたいです。
常に試行錯誤を繰り返して、良いものは残して、という感じでやっていこうと思います。
最後に告知などがあればどうぞ。
深野:Goodiaの東京オフィスをオープンしたこともあり、ゲーム企画系のスタッフを募集しています。
ちょっとおもしろそうだなと思っている方がいたら、ぜひ一度オフィスに気軽に遊びにきてください!
取材協力:Goodia Inc.
編集後記
激ムズ系のステージクリアゲームが熱いっていうのは意外でした。
東京オフィスの企画担当をめっちゃ募集してるそうです。Goodiaさんの原宿のおしゃれな新オフィスの写真を載せて終わります。
なぜか草が背景にあってステルスなロゴ
カフェのような雰囲気。
カウンター席っぽいのもある。
打ち合わせ席