今回は地方でアプリをつくって暮らしている、2名のアプリ開発者さんにお話を伺いました。アプリ業界が「だんだん厳しくなってきている」という声も。
1.北海道でアプリ開発をしているアソボックスさん
※株式会社アソボックス 代表取締役 赤羽 駿人さん
アソボックスについて教えて下さい。
北海道でアプリ開発をしています。現在は法人化していますが、夫婦でアプリをつくっているので、実態としては「個人開発」に近いです。私がプログラミングで、妻は企画を担当しています。
とくに北海道にいて、不自由なことはないですね。不便なのは「amazonから荷物が届くのがちょっと遅い」というくらいでしょうか。
夫婦でアプリをつくっていて、メリットはありますか?
夫婦で仕事をするというのは、「仕事が家庭と直結している」ということです。なので、良いところも悪いところもありますね。
例えば、すぐに打ち合わせが、家の中で出来るのはメリットです。逆に、仕事でケンカをしてしまうと、もう夕飯のときにはハシが進みません。笑
あと、メリハリがなくなるのもデメリットかもしれません。外で仕事をしていると、家に帰ってきて、気持ちをリフレッシュできますが、それができないわけですから。
アプリ開発をはじめたのはどうしてですか?
もともとは「パオン」という、東京のゲーム会社に勤めていました。ゲーム開発の仕事をするうちに「自分でアプリをつくれば、お小遣いが稼げるんじゃないか」と思い始めまして。
そこで、長期の休みを利用して、試しにアプリをつくってみたんです。それが「脳力+ 支払い技術検定」というアプリでした。
そのアプリがすぐヒットしたんですか?
リリース当初は「まあ、こんなもんか」というくらいしか遊ばれませんでした。ところが「アイコン」を変えてみたところ、ダウンロードがものすごく伸び始めたんですね。
結果的に、当時の給料よりはるかに稼げてしまって、月数十万円くらいの収入になりました。それで「独立してアプリをつくろう」と会社を辞めてしまったわけです。
現在「脳力+ 支払い技術検定」については、累計140万ダウンロード(iOS110万、Android30万)されています。
それから、いろいろアプリを出していますが、いまの調子はどうですか?
これまで全部で9アプリをつくってきて、累計で200万ダウンロードくらいされています。ただ、未だに一番ヒットしたアプリは「脳力+ 支払い技術検定」のままです。
いまはだんだん厳しくなってきている状況で、「かろうじて生活できている」というレベルですね。「新作」を出すたびにダウンロード数も下がってきています。
「だんだんダウンロード数が下がっている」というのは、どういうことなんでしょうか?
やはり「競争が激しくなっている」というのが大きいです。とくにAppStoreのランキングは一回落ちると、もうぜんぜんダウンロードが伸びません。
といっても、スマホユーザーの数は増えているので、「そこに届くもの」さえつくることができれば、大きなチャンスがある状況だとは思いますけどね。
個人的に「カラカラ惑星」はおもしろかったのですが、そこまでヒットしなかったんですね。
そうですね、今年リリースした「再生! カラカラ惑星」は、思ったよりもダウンロードされませんでした。数で言うと、10万ダウンロードくらいです。
1ダウンロードあたりの収益性は、「放置ゲーム」として考えても悪くないですし、「収益の半分は課金」というくらい課金率も良いのですが、ユーザー数が伸びなかった感じです。
これまでの、アソボックスのアプリを振り返っても、必ずしも「ゲームとしておもしろいもの」が売れるわけではないなと感じます。
「カラカラ惑星」は開発にはどのくらいかけたんでしょうか?
開発は7ヶ月間くらいかけてつくりました。「音楽」「マップチップ」「キャラクター」は、基本フリー素材でつくっていて、一部のグラフィックス(街と神殿)はオリジナルでつくっています。
ダウンロード数を増やすために、工夫していることはありますか?
最近、GooglePlayの「ABテスト」の機能をつかって、アプリストアの「アイコン」「スクリーンショット」「説明文」を改善しています。
最近だした「大繁盛! まんぷくマルシェ」というアプリでは、説明文をシンプルにしたところ、1日のダウンロード数が上がりました。Googleのデータによると3〜30%上昇しているようです。
その後「アイコン」「スクリーンショット」「説明文」を、「キャラクター推し」に変えてみたのですが、さらに「1日のダウンロード数が10〜35%上昇」という良い結果が出ています。
「キャラクター推し」にした理由は、ユーザーの感想に「キャラがかわいくて好き」という声が多かったからですね。
いま収益的には苦しくても、ゲームをつくるのは楽しいですか?
そうですね。ゲームをつくるのは好きなんですよね。例えば、企画が固まって「ゲームが動く状態」になったときは嬉しいですし、完成間近のゲームをブラッシュアップしているときも楽しい。
あとは、アプリのリリース後に「ユーザーの反応」をレビューやツイッターでみること。これが本当にやめられないくらい楽しいです。
もしこの先、アプリがまったく売れなくなったら、再就職せざるを得ないですけど、ずっと「ゲームづくり」は辞めないと思います。
2.岡山でアプリ開発をしている岡田さん
※岡田 光弘さん(個人開発者)
いまは岡山でアプリをつくっているんですよね?
はい、岡山で個人でアプリ開発をしています。岡山のシステム開発やソーシャルゲームの会社で働いたあと、独立して現在に至ります。
そもそも「独立するきっかけ」はなんだったのでしょう?
最初のアプリ「ひまつぶクエスト」は、就活のためにつくったんです。面接のときに「こういうゲームをつくりました」と言うためです。そしたら、それが思ったよりも人気がでてしまって。
それで、妻に「アプリで独立しようと思う」と相談しました。ところが「ちゃんと働いて欲しい。安定しないのは怖いから」と反対されてしまいました。
そこからどうしたんですか?
最終的には「2年で結果が出なかったら就職する」という条件で独立しました。
ちなみに、それから1年くらいたって「アプリの売上」を見てもらったところ、妻から「このまま、アプリ開発を続けても良い」と合格をもらえました。
じゃあ、ここまでかなり順調なんですね。
はじめは順調でしたが、いまは厳しくなってきています。どんどん収益性が落ちてきていて。流行りの「動画広告」にも対応できていなかったり、少しずつ置いていかれている感じがします。
もちろん、普通に生活はできてはいます。ただ、サラリーマンと違って「退職金」がないので、それを考えると「ちょっとやばいな」という感覚です。
何にせよ、早くはじめて良かった。今年からはじめる人はつらいと思いますよ。「ひまつぶクエスト+」も86万ダウンロード超えていますけど、今出していたらそこまで売れていないと思います。
※アプリの累計ダウンロード数は約170万ダウンロード。なお「ひまつぶダンジョン」の広告収益は82万円(iOS23万円、Android59万円)とのこと。
ゲームをつくるときに「こだわっているところ」はありますか?
「操作性」にはこだわっています。スマホなんだから、できるだけ「一本指」で遊べるようにしたい。「バーチャルパッド」「矢印キー」「ジャンプボタン」みたいなものは、極力使いたくない。
「スマホで遊びやすくする」って重要。ボタンが小さくて押しづらかったり、ストーリーの「スキップ機能」がないゲームをよく見かけますが、もったいないと感じます。
※指1本で遊べる「ひまつぶダンジョン」(iOS/Android)
編集後記
どちらの開発者さんも「生活はできているものの、厳しい状況になってきている」と話していたのが印象的でした。
これからアプリ開発をはじめる人は「これくらいクオリティの高いアプリを、つくれる人でも苦戦している」ということは、頭に入れておいたほうが良いかもしれません。
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