「夢だったゲームアプリ開発。700万円かけて売上14万円でゾンビ化」京都のアプリ開発者「room6」が語るアプリビジネスの厳しさ。

2015年10月05日 |
1737
Pocket

今回は京都のアプリ開発チーム「room6」を取材しました。長年の夢だった「自社ゲーム」。700万円かけて開発した「とっとこダンジョン」。累計売上はいくらなのか。

【11/25 追記】room6さまの都合により、記事内容を一部修正しました。

room6_photo
※room6 代表 木村征史さん(左)、デザイナーさん(右)

1、「とっとこダンジョン」について

「room6」について教えてください。

受託開発の仕事をやりながら、ゲームアプリを開発しています。現在は、僕(エンジニア)とデザイナーの2名で会社として活動しています。一人で夜中までプログラミングしていますよ。

起業してもうすぐ丸5年です。「ゲームつくってから死にたい」と思い、「room6」を立ち上げました。人生も後半戦に差し掛かってきたので。

今年だした「とっとこダンジョン」が、本格的につくった、最初の自社ゲームですよね?

そうですね。ずっと受託開発をやっていたので。前々からゲームつくりたかったんですけどね。

それで、今年つくったゲームが「とっとこダンジョン」です。だから、ようやく「表舞台」に立てた嬉しさがあって。何をやっても楽しいです、今は。

セミですね。ようやく土から出てきたセミが、ミンミン鳴いているんです。1週間は鳴くとおもいますよ。鳴き終わったら、すぐ死ぬかもしれませんが。笑

「とっとこダンジョン」の調子はどうですか?

「とっとこダンジョン」は、今年1月にリリースして、ダウンロード数でいうと、2万ダウンロードくらい(iOS12,500、Android7,500)ですね。ほんと、泣かず飛ばずで。

開発については、3人で8ヶ月ほどかけてつくりました。開発コストは700万円くらいはかかっています。

room6_tottoko
※「とっとこダンジョン」(iOS/Android

開発に700万円かけて、売上はどのくらいなんですか?

売上はですね、(累計で)14万円ほどです。課金が5万円で、広告収入が9万円くらい。つまり、686万円の赤字です、投資回収率でいうと2%。ひどいですよね。

だから、いま「排水の陣」ですよ。というか、もう「ゾンビ」なんです。本当は死んでるはずなのに活動してる。そんな感じですね。資金繰りもスレッスレで、いつもヒヤッヒヤしています。

room6_tottoko_revenue

2、ゲームアプリを出してみて。

こういう状況だと、現実的に「つらくなるとき」はどんなときですか。

現実的に「売上の集計表」をつけているときが、一番悲しくなりますよ。普通は「売上集計」ってニヤニヤしながらやるものでしょ? でも、うちは涙しか出てこない。

「今月の売上は、えーっと…はっぴゃく、870円か。ふぅ〜」って。「870円って、この表つけてる時給で消えるわ」って。勉強のためにつけてますけど。

ブログで「とっとこダンジョンの売上」を、公開したのはなぜだったんですか?

あれは、やけくそになって書きました。「世の中、景気の良い話ばかりじゃない。これが現実じゃあ!」って言いながら、アプリの売上の数字とかを、ブログにバンバン貼ってみたんです。

正直なところ、半分くらいは「ライバルを減らしてやろう」という気持ちでした。「甘い気持ちのやつは、これ見てやめてしまえ」と。

ところが、そのブログが、あまりにかわいそうだったからか、励ましになったのか、アプリ開発者の人たちは注目してくれました。そこから「アプリ開発者の飲み会」に誘っていただいたり。

実際「自社アプリ」を出してみて、感想としてはどうですか?

実際にゲームをだしてみて、衝撃だったのは「ダウンロード数が全然伸びない」ということ。ありがたいことに、メディアに掲載いただくことは度々あるんですよ。

例えば「とっとこダンジョン」が、天下の「AppBank」さんに掲載されたとき。「わあー、AppBankに載ったぞ!バンザーイ、バンザーイ!」と盛り上がりました。

2年前くらいに「AppBankで紹介されて、ランキング5位まで上がった」という景気の良い話を、聞いていたので、その感覚でいたんですよね。

ところが次の日、ダウンロード数をみたら「あれ、500ダウンロードしか上がってない」「おかしいな、0がふたつくらい少ない。0どっかいっちゃったのかな?」となりました。

でも、これはどのメディアでも同じ。名だたるゲームメディア、「AppBank」「4gamer」「ファミ通」、どれに掲載されても「500ダウンロード」くらいしか増えませんでした。

一番は「アプリの質」が高くないのが原因ですが、これだけ「パズドラ」や「モンスト」が流行っていると仕方ないかなと。そりゃ、みんなブースト広告に走りますよね。

room6_cocotto_gamemedia
※もちろん「ゲームのおもしろさ」に大きく影響される。

3、プロモーションやイベント出展について

プロモーションも、いろいろ試されているんですよね。

プロモーションも色々やりましたね。もがいてもがいて、あまり変わらず。まず、「Admob(バナー広告)」に6万円つかいました。これは、100ダウンロードくらいしか増えませんでした。

「ツイッター広告」にも5万円つかいましたが、ピクリともしませんでしたね。もう計測する気も起きないくらい。なんも効果なかった。文言が良くなかったかもしれません。

あとは「YouTuber」のプロモーションもやりました。「iCON CAST」というサービスで10万円ちょっとつかって、YouTuberさん2人に「ゲーム実況動画」をあげてもらって。

結果としては、1万回ほど再生されて、300ダウンロードくらいは増えましたけどね。

他に「露出を増やす」という意味で、やってきたことはありますか?

ゲーム関係のイベントは、積極的に出ています。例えば「Bitsummit」は、お祭りみたいで楽しかったです。インディーズの方と交流できたり、メディアさんに掲載いただいたり。なにより「無料」でしたし。

「東京ゲームショウ」も出展されているのですよね。

はい、「東京ゲームショウ」のインディーゲームコーナーに出展しています。これも抽選ではありますが「無料」ですね。

ただ「旅費」が高かったです。うちは京都なので。滞在費(2人)が、新幹線とホテル代で25万円くらいかかりました。ノベルティ(バッジ・チラシ・装飾など)は、せいぜい5万円くらいです。

「インディーゲームコーナー」の出展者は、いわゆる「ガチインディー」みたいな方々が半分以上いらっしゃいました。「PS4のゲームをガチでつくってます」みたいな。

room6_novelty

「イベント出展するときのコツ」って何かあるんでしょうか。

「イベント出展のコツ」ですか? まずは、お茶と水をいっぱい飲むことですかね。喉が枯れて、口が口内炎になるから。ほんとに。

あと「ブースは派手」に限ります。派手じゃないと、人もメディアも寄ってこない。チラシとノベルティだけではダメです。あと、おっさんが待ち構えているよりも、女の子がいたほうが良い。

ノベルティは、意外と「チロルチョコ」が喜ばれました。「デコチョコ」っていうアプリから、写真をアップすると、簡単につくれました。値段も手頃で、24個で2,500円くらいですね。

room6_manga_event

4、今後や次回作について

いま「次回作のアプリ」もつくっているんですか?

そうですね、来月に「ここっとダンジョン」というアプリがでる予定です。とりあえず「イラスト」はカワイイんですよ。見てください、これが「ココ」ちゃんで、こっちが「ユニ」ちゃん。

これは「room6」のデザイナーの子が描いてくれました。僕だけではこんなに頑張れなかったと思いますので、本当に感謝しています。

room6_cocotto_chara

「キャラクター」は、随分かわいくなったんですね。

本当に、かわいいは正義ですよ。「ここっとダンジョン」では、かわいいアイコンをつくったら、「事前予約サイト」での予約数が、すごく伸びました。「グラフィックは大事だな」と実感しました。

今回は10万ダウンロードはいきたいです。ていうか、10万ダウンロードいかないとヤバい。「自分の人件費」を抜きに考えても、また200万円くらいかけていますから。

木村さん的には「アプリでうまくいくイメージ」はあるんですか。

そうですね、「根拠のない自信」はあるんですよねえ。だから、なんというか「それを信じて、素直に頑張っている」という感じです。

僕なんて「三流エンジニア」だから。アプリで売れてる人たちにはオーラがあるので「僕にはなれへんなあ」と思ったりはするんですよ。別世界の住人というか、スーパーサイヤ人ばっかり。

だから「違う階段」を登らないとダメでしょうね。エスカレーターじゃなくって、階段をのぼります。非常階段かもしれません。でも、がんばり続けていれば、少しは花開くかなと。

いまの夢は「ゲームで食べていくこと」です。つくったゲームの収益で、ちゃんと自分たちにお給料が払えること。そうなったら「言うことなし」です。

木村さんからみて「アプリ開発」はオススメですか?

うーん…どうでしょうか。「個人の副業」なら良いと思いますよ。でも、会社の事業としてはどうですかね。

個人で独立するとしたら「売れなくても、ゲームつくるの楽しい」という人じゃないと、続けていくのは厳しいと思います。まあ、私が言えた話じゃないんですけどね。

取材協力:room6

1737
Pocket

アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
スポンサーリンク
広告掲載
btn_fb btn_tw btn_rss

Latest stories

Related stories