※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2021年12月22日)数値などは取材当時のものです。
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通話コミュニティアプリの「Yay!」さんを取材しました。
※ 株式会社ナナメウエ 代表取締役 石濵 嵩博さん
「Yay!(イェイ)」について教えてください。
石濵:
趣味や話題をきっかけにつながれる、通話コミュニティアプリです。登録者数は450万人を超えていて、24歳以下が85%を占めています。
とにかく「素を出せる」というのを意識していて、本当の自分をさらけ出せる場所、というニュアンスを込めてつくっています。
使い方としては、ツイッターのようにタイムラインを見たり、誰かと通話やグループ通話をしたり、好きなサークルで話したり、という感じですね。
Yay!の成長は「既存SNSへのアンチテーゼ」
いま「Yay!」が伸びている背景を教えてください。
石濵:
僕らは「メディア化」と呼ぶのですけど、今って既存SNSが前に比べると、めっちゃ投稿しづらくなっていて、基本は「見るだけ」になっている。
僕も「土日に牧場にいきました。羊とたわむれた」という投稿を、Facebookには上げづらいですね。投資家やほかの起業家の友達に「遊んでいるな」と思われたくないので。
高校生とかでも、「自撮りをあげにくい」と思っている人がいる。
理由は比べられてしまうから。可愛い子は1,000いいねつくけど、自分には10しかつかない。すぐにわかって、劣等感が刺激されてしまう。
若い世代って、みんな「そういう劣等感」を抱えていて、既存SNSに対してなんか気まずいな、なんか息苦しいなと感じている。
実際、インスタやFacebookの投稿数は、緩やかに落ちてきている。ユーザー数は減っていない。でも、投稿数が落ちているわけです。
なるほど、確かにそうかもしれません。
石濵:
それで、この「投稿数」って先行指標なので、いずれどん詰まりになってくるんですよ。確実に。この息苦しさはもうずっと続いていく。
だから、Yay!って「既存のSNSのアンチテーゼ」なんです。みんなが承認をもらえなくなったので、その「揺り戻し」としてYay!が伸びている。
SNSって「誰かからの反応」があるから気持ち良い。そもそもSNSをはじめて、僕たちが楽しい!ってなった理由って、何気ない日常をアップしたときに、それに反応があったからなんですよね。
投稿して「いいね」と反応をもらったり、「わたしも行きたい!」と言ってもらえたほうが、楽しさが10倍違うよなと思うんです。
このまま行くと、SNSはどうなっていくのでしょう。
石濵:
この流れが行き着く先は、リアルな人間関係を取っ払い、なりたい自分で、バーチャル上に居場所をつくれる世界なんですよ。
これが「メタバース」とも呼ばれています。
Yay!も文脈はこれと同じで、インフルエンサーを生まない、フラットな構造であることを意味して、「アンチインフルエンサー的なプラットフォーム」と言っています。
これは、階層構造をつくらない、みんなが自己表現をしやすいプラットフォームなんです。
「おはよう」といえば「おはよう」と返ってくるし、食べかけの餃子の写真をあげてもOK、フォロワーが10万人の人なんて滅多にいない。
投稿ハードルは死ぬほど下げるけど、反応はめちゃくる。そこにフォーカスすることで、多くの人が承認をもらえる設計にしているんです。
ツイッターやインスタは、もはや「メディア」なんですよ。Yay!はメディア化をしません。ただのSNS。むしろこれこそがSNSなんです。
SNSをつくるときに意識すべき「スロット理論」
Yay!のようなSNSをつくるときに「ここは意識すべき」と思うポイントを教えてください。
石濵:
僕らは「スロット理論」と呼んでいるのですが、スロットに入らないとソーシャルは確実に死ぬ、という法則があると考えていて。
スロットとは何かというと、人って誰かを思い浮かべて「この人と話そう」と思ったときに、連絡ツールも一緒に思い浮かべるんですよね。
○○さんに連絡するならインスタ、お母さんに連絡するならLINEみたいに。その連絡ツールに入ることを「スロット」と呼んでいます。
そして、スロットは同じ人と繋がるのに「最大2つ」なんです。基本は1つと言ってもいい。とにかく2つまでなんです。
つまり、誰かを思い浮かべたときの「2つのスロット」を取り合っている。
スロットに入れば、長期で継続してつかわれるので、積み上がり続ける。これが、ソーシャルをつくるときのエッセンスだと考えています。
長期で継続しないと、アクティブユーザーが積み上がらないから、生き残ることができないと。
石濵:
そうですね。バズったサービスはいっぱいあるけど、誰かと話したいと思ったときに「スロット」に入らないと、継続してつかわれないんですよ。
例えば、Clubhouseはツールとしてはつかわれます。講演会やりますとか。でも連絡する手段は、結局ツイッターかFacebookになってしまう。
つまり、ソーシャルには「ユニークなソーシャルグラフ」が絶対に必要で、言い換えると「ならではのコミュニティ」をつくらないといけない。
そうしないと、コミュニティの誰かを想起したときに、つかわれるシーンが存在し得ないことになってしまうから。
なので、Yay!は「スロット」を取ることを意識して、Yay!の中で「人と人」をマッチングすることで、誰かを思い浮かべたときに、必ずスロットに入るような設計にしていますね。
例えば、Yay!で仲良くなったAさんと、後日「また話したい」と思ったときに想起されるアプリがYay!ですよね。Yay!でしか繋がっていないので。
だから長期で継続してくれる。ここのストラクチャーには、めっちゃこだわっていますね。
スロットを「書き換える」というのは難しいですか?
石濵:
難しいと思います。僕も「母親との連絡ならLINE」と決まっていて。今からそれを上書きするって、めっちゃ難しいんですよ。
なぜなら、リアルな人間関係(リアルグラフ)の「スロット」は、もう大抵2つ埋まってしまっているからです。
だから、これから流行り得る「メタバースや新規のSNS」は、バーチャルの関係性(バーチャルグラフ)以外は、ありえないんですよ。
Yay!での関係性は、リア友よりはバーチャルな関係性が多いので、仲良くなったときに、また「その人と話そう」と思ったらYay!にくるんです。
Yay!ができるまでに「SNSを200つくった」
Yay!は「どんな過程」で生まれたのでしょうか?
石濵:
初期に出した「SlideStory」は、土日しかつかわれにくいのが課題でした。お出かけに行ったときにしか、スライドショーをつくらないからです。
次に、Vineのような動画SNS「Lily」を出したのですが、これもうまくいかなったですね。半年やってもDAUが1,000人でした。
そこから200アプリを出す中で、学生向けの「ひま部」が公開から1週間でDAU 1,000人を超えたので、そっちにシフトするようになりました。
学生向けで伸びていた「ひま部」から、「Yay!」に変更した理由はなんだったのでしょう?
石濵:
初期のFacebookがそうだったように、どこかのタイミングで間口の小さい「学生専用」の冠を外していく必要がありました。
ひま部は「学生専用」だったので、社会人ユーザーを凍結していたんです。なので、その状態から「全年齢にします」と方針を変えると、ユーザーから大きな反感を買ってしまいます。
それで、ギリギリまで「ひま部」のまま、学生制限をなくすことも考えたのですけど、新アプリとして「Yay!」を出すことにしました。
SNSを200アプリつくるというのも、簡単にできないと思うのですが、なぜそこまで出来たのでしょう?
石濵:
実はそのときに社長が変わって、僕が社長になったのですけど、その時点で後がなかったんです。会社がなくなりそうだったんですね。
お金も全然なくて、当時は銀行の残高も40万円くらいになっていて、もう来月には会社を畳まないといけないよね、という絶望的な状況でした。
20日後には、給料が支払えなくなる状況で、投資家を見つけて交渉したり、銀行からお金を借りてきたり、とにかく必死だったんです。
なので、やれることは全部やろうという中で、できることはアプリをつくることだったので、朝4時くらいまでアプリを開発していましたね。
タイ子会社をつくって投稿監視をAI化
SNSを運営してみて、「ここは大変だったけど、こうしたら解決できた」、というものはありますか?
石濵:
Yay!のようなアプリの、投稿コンテンツのチェックって、難しいんですよ。不適切な画像や動画をアップする人が、どうしてもいるためです。
ただ放置してしまうと、コミュニティが腐っていく。不快に思って誰もつかわなくなってしまう。これを僕らがどう解決したかです。
最初は何をしたかというと、365日24時間、社員がチェックしていました。でもずっと続けるのは難しくて、専門の企業に頼もうとしたんですよ。
そしたら「月700万円かかります」という見積りが出ました。当時はお金もなかったので、支払える金額ではありませんでした。
次に、僕らがやったのは、CTOがタイ人だったのですけど、タイに子会社をつくったことでした。
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【取材協力】
株式会社ナナメウエ:https://nanameue.jp/ja
Yay!:https://yay.space/
CEO 石濵さん:@takachan114
広報/マーケ 井上さん:@tomoyasu_inoue
【告知】ナナメウエさんでは、Yay! x eSports (Apex)の「WEBドラマ」も公開。ご興味ある方はぜひご覧ください。
https://www.nomdeplume.jp/special/yay_bokuria/
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