※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2021年10月12日)数値などは取材当時のものです。
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バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」さんを取材しました。
※ REALITY株式会社 代表取締役社長 DJ RIOさん
REALITYについて教えてください。
DJ RIO:
スマホ1台で好きな姿に変身できる、バーチャルライブ配信アプリです。
ユーザー数でいうと、App Annie調べで世界500万人を超えています。また、この1年でアクティブ配信者数は「約6倍」に伸びています(前年同期比)
アクティブユーザーの滞在時間は「1日あたり平均170分」、視聴者の数に対する配信者率は「38%」となっています。
REALITYは「海外のユーザー」も多いそうですが、海外のユーザー比率はどれくらいですか?
DJ RIO:
海外比率は90%ほどです。地域セグメント別だと、北米(米国・カナダ)、APAC(アジア)、欧州、中南米、日本という順に多いですね。
ただ、これまで「海外でユーザーを増やそう」と思って、特別にやったことってないんですよ。アプリも英語への対応を最低限しているだけ。
なので、グローバルでの成長は視野には入れていたものの、ここまで急成長するというのは、正直なところ驚きでした。
REALITYが海外で伸びている理由「VTuberへの憧れ」
なぜここまで「北米など」で伸びているのでしょうか?
DJ RIO:
文化的な下地としては、日本の「アニメ漫画文化」の裾野が、配信サービスの影響などで、北米ですごい勢いで広がっています。
そして、いま北米ではVTuberが人気になっていて、「VTuberのファン」が急えると、今度は「自分もやってみたい」と考える人が増えます。
そういう人たちが、REALITYにたどり着いて、アバターで配信するケースがすごく増えているんですよね。
REALITYのアンケートでも、「VTuberを知ってますか?」と聞くと、ホロライブなどは人気がありますし、アニメ好きのユーザーも多いです。
そもそも、スマホ1台でアバターをつくって、ライブ配信まで出来るサービスというのは、世界的に見てもまずないんですよ。
だからこそ、そこのニーズに応えられているのかなと。
他に海外では「どんなユーザー」に支持されていますか?
DJ RIO:
あと属性としては、セクシャルマイノリティ系のユーザーさんも多いです。プロフィールにそのように記載されている方も多いですね。
アバターだと「見た目」から解放されるので、生まれ持った肉体に対して、不自由さや制約を感じていた人が、使ってくれているのかなと。
それから「顔出し」をしたくない方も多いです。Twitch等で配信している、顔を出したくない配信者って、海外にもたくさんいて。
そういう方って、声だけで配信するのですけど、それだと伸びにくいということで、REALITYで配信してくれるのだと思います。
初期に成功した「コンテンツを絞る戦略」2つのメリット
REALITYを日本で立ち上げたときに「これはうまくいった」という施策があれば教えてください。
DJ RIO:
REALITYで、立ち上げ初期にうまくいったのは、提供コンテンツをあえて絞るという戦略でした。これで「最初の20万人」を集めることができた。
REALITYって、はじめの2ヶ月ほどは、有名なVTuberが出る「公式番組」が見られるだけの、アプリだったんですよ。
なので、夜だけ「1時間くらいの番組」があって、残り23時間はコンテンツが何もない、という状態でした。
そして2ヶ月後から、アバター配信の機能がでて、それも運営が予め選んだ人だけが、「18時〜24時」にしか配信できないようにしました。
つまりコンテンツを、自社のオフィシャル番組から、クローズドなユーザー配信に、そして一般ユーザーへと、徐々に解放していったんですよ。
コンテンツの「時間と品質」を絞ると、どんなメリットがあるのでしょうか?
DJ RIO:
ひとつは「盛り上がってる感」を生み出せることです。
特定の時間だけに絞って、コンテンツ提供する設計にすると、見にきてくれたユーザーさんの人口密度がその時間だけ高いので、「このサービスは盛り上がってる」と感じます。
初期は集客力のあるVTuberが、1日に1時間だけ配信する。でもその1時間に何万人とくれば、見るほうは盛り上がりを感じます。
次のステップとして、こちらで選んだ配信者の方が「18時〜24時だけ」配信するようにすると、そこでも「賑わっている状態」がつくれます。
コミュニケーションサービスって、熱量や盛り上がりが大事なので、意図的に「時間の制限」をしたのが、良かったのだと思います。
なるほど。ほかには「どんなメリット」がありますか?
DJ RIO:
もうひとつは「雰囲気づくり」です。プロの配信者からスタートしたことで「いい雰囲気」をつくることができたと感じます。
アバターに「自己投影」してもらう体験のデザイン
REALITYで「こだわっているところ」を教えてください。
DJ RIO:
REALITYのアバターに、どれだけ「自己投影してもらえるか」には、気を配っています。アバターを「自分だと思ってもらう」ということです。
具体的には、アバターが画面に出るときには、顔を大きく見せつつ、スマホが手鏡になるイメージで、常に顔の動きに追随させています。
最初にアプリを起動したときも、アバターがパッと前に出てきて、自分の顔の通りに動くようにしていて。
すると、ユーザーさんは「あっ、動くんだ」とそこで気づきます。そこからアバターのカスタマイズに入っていきます。
また、アバターも服を着替えたら、ちゃんと「自撮り」してアイコンに設定されるようにもしています。
アバターの自己投影度にマイナス影響が出る、「やってはいけないこと」というのはありますか?
DJ RIO:
これは「勝手に動かさないこと」ですね。アバターが勝手にくるっとジャンプしたり、ウィンクしたりすると、自己投影感を下げてしまいます。
なぜなら「自分ではない動き」をした瞬間に、アバターのことを人形のように感じてしまうからです。「これは自分だ」と思えなくなるんです。
逆に、目の前にアバターがいて、自分と同時に動くと「これは自分なんだ」という感覚が、本当にだんだん強くなってくるんですよ。
そのためREALITYでは、アバターを見れば見るほど「これは自分だ」という気持ちが深まるような設計にしています。
メタバース(もうひとつの現実)としてのREALITY
REALITYの運営で「印象的だったこと」を教えてください。
DJ RIO:
僕たちは、REALITYを「メタバース」、言ってみれば「もうひとつの現実」として運営しているのですけど、それを体感した瞬間があって。
ひとつは、2020年に「花火大会」を開催したことです。REALITY内で「この時間に、夜空に花火を上げます」というイベントをやったんですね。
去年って花火大会が、軒並み中止になったじゃないですか。だから現実で花火を見にいけなかった、ユーザーさんのために花火大会をやろうと。
なるほど。すると、どうなったのでしょうか?
DJ RIO:
何が起きたかというと、まずみんな配信で相談をはじめるんです。「花火大会があるらしい。」「その時間いける?誰と行こうか?」みたいに。
そして、浴衣のアイテムも出していたので、「花火大会といえば浴衣だね」ということで、みんなアバターを浴衣でお揃いにする。
当日は、待ち合わせて花火を見る。花火が上がると「綺麗だね」とみんなで夜空を眺めて、最後は「記念写真」を撮ってSNSにアップする。
この一連の「もうひとつの現実感」がすごくって。僕たち運営チームもそれを見ていてすごく感動しました。
他には「印象的だったユーザーの話」はありますか?
DJ RIO:
ユーザーさん同士が、REALITYで仲良くなって付き合って、結婚するときに「結婚発表の配信」をしてくれる方がいたことです。
お互いの友達に配信に集まってもらい、みんなでドレスを着てお祝いする、もはや「バーチャル結婚式」みたいな感じですね。笑
当人たちに聞いてみると、通常のSNSと比べても「生声」でしゃべるから、やっぱり距離感が近くなるそうなんですよね。
コラボ配信だと、お互いアバターで同じ空間で、おしゃべりしながら配信するので、「人と人との関係性」を急速に深める効果があるんだなと。
おもしろいですね、他にはどうでしょうか。
DJ RIO:
あとは、clusterというVRプラットフォームと連携して、REALITYのアバターをclusterにそのまま持っていけるようにしたんですよ。
すると、REALITYの友達同士で、カラオケボックスに集まったり、お出かけする人が出てきました。これもメタバース感がありましたね。
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【取材協力】
REALITY株式会社:https://reality.inc/
REALITY:https://reality.app/
DJ RIOさん:@djrio_vr
【告知】REALITYさんでは採用も募集中。エンジニア、コミュニティマネージャー、プロダクトマネージャー、マーケターなど募集しているそうです。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
https://reality.inc/jobs/
※続きの、マニアックな話をnote購読者向けにまとめています。REALITYにゲームを入れた影響、どんな指標(KPI)を見て運営してるか?、アバター配信の「距離感」をデザインする、などご興味あればご覧ください
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