アドネットワーク「nend」さんに、2016年のアプリ広告マネタイズの変化、上手に広告を入れているアプリの事例など聞きました。
※株式会社ファンコミュニケーションズ 牛木 大介さん(左)、天川 毅さん(右)
アプリの広告マネタイズ「新フォーマット」が拡大
「ネイティブアド/インタースティシャル」の売上が2倍に。
今年はアプリ広告の「新フォーマット」の導入がすごく進んだ年でした。具体的には、ネイティブアドとインタースティシャル広告、この2つの枠のことです。
実際に「nend」アプリ全体の売上をみても、この1年で「新フォーマット」の売上が2倍に増加しています。
年間報酬「トップ100アプリ」の69%が、新フォーマットを活用。
また、nendの年間報酬「トップ100アプリ」を分析してみたところ、69%がこの「新フォーマット」を活用している、という結果になりました。
つまり、トップデベロッパーの大半が、「ネイティブアド/インタースティシャル広告」をつかうようになっている、という状況です。
新フォーマットをつかったアプリ成功事例「Q」
具体的に、うまく広告を入れているアプリを、紹介していきたいと思います。
まず、リイカさんの「Q」です。こちらは、もともとバナーとインタースティシャル広告で収益化していたのですが、途中からネイティブアドと動画リワードを追加しました。
入れ方としては、ステージ選択の画面に「ネイティブアド(インフィード型)」、問題のヒントと引き換えに「動画リワード」を、実装しているような形です。
※nendでは「動画リワード」は現在提供していない。
すると、アプリの収益額が最大2倍に伸びたそうです。追加で実装した「ネイティブアド」と「動画リワード」の収益が、そのまま積み上がったようなイメージですね。
ちなみに、リイカさんに「ユーザーさんの反応」も聞いてみたのですが、「広告が増えることに反感はすこしあったものの、特筆するほどではなかった」とのことでした。
広告のカスタマイズ事例1「君の目的はボクを殺すこと。」
ここからは「ネイティブアド(カスタム型)」をうまくつかっているアプリの事例です。
「君の目的はボクを殺すこと。」というゲームでは、キャラクターから「吹き出し」が出るような形で、テキスト広告を表示していて、売上全体の5%になっています。
このとき上手なのは、テキスト広告を「1文字ずつ」表示して、キャラがしゃべっている風に見せていること。自然にゲーム内に溶け込ませています。
このような「吹き出し型」のテキスト広告は、意外に広告効果もすごく高くて、上手に「空きスペース」を収益化できる方法のひとつだと感じます。
広告のカスタマイズ事例2「ソンビ彼女」
そして、次は「ソンビ彼女」という放置育成ゲームです。画面の左上に「ネイティブアド(カスタム型)」を設置していて、それが売上全体の35%になっています。
このアプリで上手なのは、広告枠の「背景デザイン」を工夫することで、コンテンツを邪魔しないデザインにしていることです。
こういった形で「デザインを揃えて、コンテンツの隙間をマネタイズする」という使い方が、ゲームアプリではいちばん多いですね。
広告のカスタマイズ事例3「謎解きあの人からメール」
最後は「謎解きあの人からメール」です。こちらは「メッセージアプリ風」の謎解きアプリでして、チャットで会話をしながら、問題に答えていきます。
そして、その「メッセージ」のひとつとして、たまに「ネイティブアド(カスタム型)」が入るようになっていて、この広告枠が売上全体の30%を占めています。
このような感じで、広告素材をカスタイマイズして、空きスペースを収益化すると、感覚的には平均+20%ほどの広告収益になることが多いです。
広告主が「獲得ユーザーの質」を重視するように
インストール後の「アクション」まで見るようになった。
アプリ広告主の視点でいうと、2016年は広告主が「獲得ユーザーの質」を、より重視するようになった年でした。
これまでは「いかに低いインストール単価で獲得できるか」が指標だったんです。それが今年はインストール後の「アクション」まで評価するようになってきた。
実際に、ユーザーがインストールした後に、「チュートリアル突破」とか「課金が発生した」まで見ているプロモーションの数も、どんどん増えてきています。
機能で収益性に差が出た2つの「トランプアプリ」
では、広告主が「ユーザーの質」を追うようになると、アプリデベロッパー(メディア)には、どんな影響があるのか? これを、とある「トランプゲーム」の事例で説明したいと思います。
この「トランプゲーム」AとBは、同じ会社がだしている、ほとんど同じアプリです。ちがいとしては「対戦機能」と「課金プラン」がついているかどうかだけ。
ところが、広告の収益性には、130%もの差が出ていました。対戦と課金のついた「アプリB」の方が、明らかに広告の収益性が良かったんですね。
そこで、なぜそうなったのかを調べるために、アプリABの両方に配信していた、広告案件XYのデータを分析してみることにしました。
すると、Bから獲得したユーザーのほうが、「チュートリアル突破率」も高く出ていて、質の高いユーザーが獲得できていることがわかりました。
結論としては、アプリBには「質の高いユーザー」がたくさんいて、広告主もそれを評価していたため、広告の収益性も良くなっていた、ということです。
※「チュートリアル突破率」が高いのは、母数があまり多くないから。通常は50〜60%くらい。
高収益性アプリは「競争性」と「課金意識」が特徴
先程の「トランプアプリ」の事例のように、広告収益性を上げていくには、「質の高いユーザー」をいかに確保できるかが大切になってきます。
そこで、nendでの獲得ユーザーで「優秀だね」といわれやすい、アプリの特徴をまとめてみました。簡単にいうと「競争性」と「課金意識」の二つがあるかどうかです。
言い換えると、アプリに「やり込めるコンテンツ」を用意すると、質の高いユーザーを獲得しやすいです。
たとえば、ボードゲームのアプリなども、「オンライン対戦」をつけるだけで、ユーザー層が変わって収益性が上がる可能性がありますよね。
まとめ
まとめると、多くのトップデベロッパーは、バナー以外の「インタースティシャル」や「ネイティブアド」を活用するようになっている。
そして、今後は「どんなユーザーがいるか」で、アプリの収益性が変わってくる。「ユーザーの質」が評価される時代になってきている、というところです。
もちろん、ジャンルとして「カジュアルゲームがダメ」というわけではありません。上手くいっているアプリもありますし、ユーザーを集めやすい、という良さもありますよね。
※nendのネイティブアド機能は、広告主様に広告素材を入稿して頂き、それをメディア様がnendの定めた制限範囲内で、コンテンツUIに合わせてカスタマイズできる機能です。今回の事例では、インフィード型として利用している場合は「ネイティブアド(インフィード型)」、その他のカスタマイズの場合は「ネイティブアド(カスタム型)」と表記しています。一部ネイティブアドの定義と異なるケースがあることはご了承ください。