先日、東京で開催された、カイト株式会社さん主催のセミナー「非ゲーム系アプリビジネスモデル最前線!」のレポートです。時間の都合上、一部の講演内容についてまとめています。
目次:
1、「マンガボックスのビジネスモデル・企画・UIについて」 byディー・エヌ・エー
2、「ニコニコ動画のビジネスモデル・アプリ最適化について」byドワンゴコンテンツ
3、「非ゲームアプリの費用削減からマネタイズまで」byカイト
マンガボックスについて
マンガボックスとは?
・アプリで読める週刊誌
・人気作家の描き下ろし連載
・基本無料(過去直近12号分のバックナンバーは無料公開)
・複数出版社の作品が掲載
・同時に世界配信(英語に翻訳)
2013年12月リリースし、1月に200万DLを突破。OS比率はiOS7:Android3くらい。
コアメンバーは5人+α
プロジェクトマネージャー、iOSエンジニア、Androidエンジニア、サーバーエンジニア、UI/UXデザイナー
なぜ漫画アプリか?
マンガ(雑誌)の市場規模は15年で半分くらいになっている一方で、マンガ(単行本)市場は大きく落ちていない、マンガの需要はあるが紙で読まれなくなっているという市場背景がある。また、大手の主要雑誌は残っているが、かなりの雑誌が休刊廃刊になっていてマンガを発表できる場が少なくなっている。
つまり「ヒットを出しやすい人」しか連載ができなくなっていて新人漫画家にとっては厳しい状況。「ワンパンマン」などネット上の無料公開から話題になった例はあるが、「ネット上でヒットコンテンツが生まれる場」というのも多くない。
ユーザー行動を変えるインパクトを
2010年から電子書籍元年と言われ続けているその流れを変えないといけないと思った。いままでマンガを紙で見ていた人(もしくはみていなかった人)にスマホでマンガを見てもらえるということを企画段階では重視していた。
ツイッター上で評価してもらえる声も増えてきている、一番嬉しいのは「ふつうにおもしろい」という感想。WEBマンガはクオリティが劣るというイメージを払拭したい。
マネタイズやプロモーションについて
はじめに利用したユーザーが抜けていくというのはソシャゲでもよくある話なので気に入って継続して読んでもらうこと(継続利用)も大事。継続利用してもらえてこそ一部のユーザーがお金を払ってくれるはず。また「ユーザーがユーザーを呼ぶ」という構図をいかにつくるかを意識した。
マネタイズ
人気さえ出れば、単行本が紙でも電子でも売れる。マンガの映像化・ゲーム化も視野に入れていて、トータルで利益が出れば良いと考えている。
テレビCM効果は抜群
(DeNAだからこそだが)広告費で短期間で読者を集めたいと考えていた。流入したお客さんが初回利用でストレスなく読めるというのも大事。
テレビCMを流している。「金田一少年」や「進撃の巨人」をつかって、「無料だけどクオリティが高いものが読める」というコンセプトを明確化した。
テレビCM効果で2万DL/日⇒8万DL/日まで伸びて結果的に200万DLを達成。ユーザー獲得単価はテレビが圧倒的に安かった。
継続利用を重視
初週の閲読作品数とリターンレート(ユーザーがまたアプリに戻ってきてくれる確率)を分析。初週に7作品以上読んでもらえると多くのユーザーが翌週や翌々週に返ってきてくれる。作品の質が高いからこそ読んでもらえば続けてもらえる。
「シェアして先読み」で自然流入を獲得
シェアして先読みという機能をつけている。ツイッターやFacebookでシェアすれば、最新話の1個先が先読み出来る。ツイッター、Facebook、LINE上で累計540万の拡散効果があり、今のところうまくいっている。
具体的にどういうことが起きているかというと、以下の2つのパターンで口コミが起きている。
1、これが無料で読めるなんてすごい!
シェア⇒「何これ?」⇒「マンガボックスっていうアプリだよ」という会話
『天空侵犯』知ってる?面白いよ。 #天空侵犯 http://t.co/Zv807VIshi pic.twitter.com/cTD1boG7UU
— T.Yuhei (@yuhei729) 2014, 1月 15
@mateo0405 なんかマンガボックスっていうアプリで読める漫画!
— T.Yuhei (@yuhei729) 2014, 1月 16
2、これがおもしろい!
シェア⇒「それおもしろいよねえ」⇒「だよねえ」という会話
@______xX__ おもしろいよね!!! マンガボックスで読んでる(笑)
— あなや (@__tymayn) 2014, 1月 20
(編集部注:マンガボックスに関するツイートが多すぎてわかりやすいツイートが探せず…。)
初回利用時に譲れない4つのこと
1、登録不要
『登録✕DeNA』に対してのユーザーのネガティブ反応はすさまじいので、登録は絶対ナシにした。(どういうユーザーか知りたいということもあり)継続して使ってくれているユーザーには登録を促している。レビュー依頼のように一定のロジックで登録促進するポップアップをだしている、ポップアップをだすと10%くらいが登録してくれる。
2、チュートリアルは最小限
チュートリアルはなしがベスト。「ここ、わかりにくいからチュートリアル入れとくか」という話がよくあるが、チュートリアルを入れればいいという考えは作り手の言い訳だと思っている。
マンガボックスの場合は、1枚におさめ文字を読まなくてもなんとなく分かるというのを意識している。
3、とりあえず絵が見たい
一番左が最初の案。「何か読みたくない」という意見が出た。原因は「絵が少ないから」という仮説を立てた。真ん中が二番目「絵を見せよう、ボタンは残す」、しかしどこを押せばいいかわからなくごちゃごちゃした。三番目が今のスタイル「とりあえず押せば漫画がはじまる」というスタイル
4、ダウンロードを待ちたくない
暇時間で読もうとしたらダウンロードで暇時間が終了してしまうのは残念。
▼プログレッシブダウンロード(ダウンロードしてなくてもとりあえず開く)
とりあえず押したら1ページ目がひらく。
▼アンダーグラウンドダウンロード(先にダウンロードしておく)
設定をすれば最新号をバックグラウンドで読み込んでおき、すぐよめるようにしている。「暇なときに気軽にタップしたらすぐ読める」を実現。
アンダーグラウンドダウンロードに関してはアメリカの一部以外は回線速度が遅いため、すぐに回線が詰まってしまって、結果マンガボックスをひらくと何も表示されないということが起こりうる。国によっていろいろ変えないと行けないと感じている。
マンガボックスの開発を通じて思ったこと
・世に出すからにはインパクトを与えたい。電子書籍元年を終わらせスマホやタブレットでマンガをよむ文化を普及させたい。
・意見をいってくる人は多いけど無責任な人も多い。
・自信をもつためには圧倒的に考える。
・プロダクトがシンプルすぎるということはない。
質問コーナー
Q、UI/UXで工夫したことは?
「号」を遷移するときに転がるようなエフェクトを入れるようにした、当初スライドで「号」を移動していたが「移動している感」がなかった。「これでは、ユーザーが気づかないのではないか?」というのがあったので、転がるエフェクトを入れて結果的によかった。
マンガビューアーを開いて「読み終わった時に閉じる」アクションとして、左上の「閉じるボタンを押す」を通常行動として用意しているが、下スワイプでもサッと閉じてメニューに戻れるようにした。親指で全ての操作が出来るようにしたのがiOSユーザーに好評だった。
Q、自然流入を増やすための「シェアして先読み」により540万シェアされているが、どのくらいのユニークユーザーがやっているのか?
デイリーのアクティブユーザーの10%〜20%が「シェアして先読み」で拡散している。この施策で数1,000DL/日は入ってきていると思う、ソーシャルシェア時の文言や画像の最適化も今後試行錯誤していきたい。
聞いてみて感想:
テレビCMの話などは貴重で勉強になった。「シェアして先読み」施策も540万シェアという結果がでているように、リアルタイム検索を見ていると数秒に一回はシェアされていますね。
niconicoについて
ドワンゴの中で企画や営業をやっているのがドワンゴコンテンツ。動画にコメント載せられる動画サービス「ニコニコ動画」がメイン、その他、ニコニコ生放送(映像配信)、ニコニコ静画(イラスト投稿)、ニュース、ブロマガなど。
登録会員数3626万人
有料プレミアム会員211万人(2013年9月時点)
女性会員1000万人以上(3人に一人は女性)
スマホ版のニコニコ
デバイスの特性によってデザインを変えている。例えばiosだったらフラットデザインなど
・スマホweb版はiphoneユーザー少ない(safariでは動画にコメントが載せられない)
・iOSアプリ版は累計1000万DL超えている(WEB,Androidよりも先を行っている)
niconicoにおけるスマホの存在
元々はPCサービスだがスマホのシェアが増えていっている。スマホは10代比率が多い。スマホでしかニコニコをつかったことないユーザーも多く、新規会員の半分はスマホから。スマホはPCよりもコメント投稿率が低い。
niconicoのマネタイズ
プレミアム会員について
月額500円、動画の高画質再生、読み込みが早い、生放送を見逃し視聴出来るなど。
▼スマホだけのプレミアム会員機能も
スロー&倍速再生機能(iOS版)⇒入会若干増
バックグラウンド再生(BGM代わりに使える)⇒入会そこそこあり
動画の連続再生⇒全然増えず、結局無料開放した
iOSのプレミアム会員登録
昔はWEBにとばして(アプリの外の出して)課金してもらっていたが、2011年にAppleにリジェクトされ、90日2000円でのアプリ内課金(In-App Purchase)に変更。2013年9月に少しライトに変更、30日600円の課金に。(⇒30日ごとの更新だとユーザーが離れやすくなってしまった)
2013年12月Auto-Renewable Subscription(定期購読)対応。価格設定は、毎月700円・年間6400円の2種類。
AppleのAuto-Renewable Subscriptionの審査はとても厳しい。文章化されていない決まりがとても多くて大変、半年くらい審査にかかった。
月600円⇒700円に値上げした結果、ユーザーレビューなどへの反響は小さかったが、入会数には影響がでた(減った)
iOSアプリ課金ユーザーの1割は(月額700円ではなく)年間購読6400円を選択。初課金のユーザーで年間購読ユーザーという人も割といた。
Auto-Renewable Subscriptionの注意点
為替の影響でApple側で価格帯が変更された場合、「ユーザーにとって値上がり」になると更新が停止される仕様になっている。
値下げのスパイラルが起こり得る。
1、為替変動による価格変更で6400円の価格帯が消えた。
2、値上げすると現在の課金ユーザーを失うので急遽ひとつ下のtierに値下げした(例えば6200円に変更)
例 毎年6400円更新の課金が円安による価格変更で毎年6500円になった場合、自動更新はオフになる。円高・円安のたびに発生すると延々値下げを繰り返すことになってしまう。
質問コーナー
Q、700円の価格設定(価格変更)はどのように決めた?
エイヤで決めました。「値上げした結果、入会数がこのくらい減ったら戻そう」というシミュレーションはしていた。
Q、Auto-Renewable Subscriptionの審査はどのようなところが大変だった?
どこにも書いていないが、「アプリ説明にこういうことを書かないといけない」とか、「課金のときにこういう文言を入れなくてはいけない」というのが、どんどん出てくる。
ニコニコの場合「機能のアンロック」でひっかかった、つまり「機能を解放するためにプレミアム会員になるのがダメ」と言われたので、
ニコニコ公式生放送の定期配信を視聴する機能を、「機能のアンロック」ではなくて「コンテンツの配信」ということで説明をして審査を通した。
聞いてみて感想:
月額課金の審査がめちゃくちゃ厳しいというのが良くわかった、ニコニコレベルのサービスでもすんなりとは行かないんですね、貴重な情報。筆者もニコニコユーザーだがPCでしか見ないので、「新規会員の半分はスマホ」などもびっくり。想像以上にスマホの時代だ。
appC cloud導入メリット
CPI型広告(インストールしてはじめて報酬が入る)導入メディア数:約8000
appC cloud:https://app-c.net/
マッチアップ広告
マッチアップ広告・・・UIをくずさず自由なデザインでアプリ内になじませて広告表示できる。バナー広告のクリック単価に対して、インストール率30%、クリック率5.8%、クリック単価45円の事例も。(※ツール系広告アプリのインストール単価の相場150円で計算)
実装が簡単
appC cloud利用者は、PUSH通知、リワード広告、課金アイテムを1Liner(行)で実装可能。
レビュー掲載保証
appccloudの利用アプリは、giveapp等のメディアにレビュー掲載保証。(※exciteニュース、読めるモなどの大手サイトにもレビューは転載配信される)
今更気づいたというか興味をもったのだけど、appC cloudって超便利なのか?広告はさておき、アイテム課金、データストア、プッシュ通知、レビュー掲載保証、PRページの作成(英語翻訳付き)などが簡単に実装できるならすごい魅力的。逆に、本当に大丈夫なの?って気になる。
— kude (@kude104) 2014, 1月 30
プッシュ通知びっくりするくらい簡単に導入できた( ´∇`)appCcloud様様だね
— RaikaSoft@アプリ開発 (@RaikaSoft) 2014, 1月 17
マンガボックスの「シェアして先読み」でうまいなと思うところは以下の2点、
1)「ユーザーがしゃべっている風の文章」をちゃんと複数パターンで仕込んでいるところ(一見、自然な口コミに見える)
2)マンガの画像を入れているところ(タイムラインでの視認性が大きく高まる)