※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(公開日:2022年4月21日)数値などは取材当時のものです。
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会員制ファンコミュニティプラットフォーム「Fanicon」を取材しました。
THECOO株式会社 星川隼一さん、ムラキさん
Fanicon(ファニコン)について教えてください。
星川:
会員制のファンコミュニティです。月額課金ユーザーである「ファン数」は約16万人。年間売上(2021年1〜12月)は約19億円となっています。
コミュニティの開設者である「アイコン数」は2,200、月間ARPU(1ユーザーあたりの売上)は1,200円を超えています。
※アーティストやインフルエンサーが「月額制ファンコミュニティ」を運営できる。
ファンクラブから「ファンコミュニティ」に転換した理由
初期の「Fanicon」はどのような感じでしたか?
星川:
初期のFaniconは「ファンクラブ」と称していて、ブログのような投稿ができる機能と、タレントとDMができる機能がくっついたサービスでした。
ただDMは何通でも送信できたため、ファンは嬉しくてもタレントは疲弊してしまったんですよね。タレントの方からも「私はチャットレディじゃない」と言われてしまうこともあったくらいでした。
これだと成り立たないな。どうしたらいいのだろうか…。
そんなとき、初期の頃からFaniconをつかってくれていた、ドズルさんというYouTuberのファンが、ファンクラブのメンバー限定の「LINEグループ」をつくっていたんですよね。
そこに僕も入ってみると、すごく驚きました。ファンとファンがつながって交流していて、それも熱狂度がめちゃめちゃ高かったからです。
ファンがつながる場所が求められていて、グループチャットがあるとコミュニティになるんだ、ここで気づきを得てグループチャットを実装します。
「グループチャット」を追加すると何が起きましたか?
星川:
ファンクラブのときは一方向の「コンテンツ」でしたが、これが双方向の「コミュニティ」になったことで、提供価値がガラッと変わりました。
ファンクラブではコンテンツを「買っている感覚」だったのが、コミュニティになったことで、ファン間の会話も価値になって「その場所にいること」にお金を払う感覚に、変わったのだと思います。
それは退会率にも影響します。実際に、月次の解約率が15%から5%くらいに下がったんです。かなり大きな変化ですよね。
つまり「ファンクラブ」から「ファンコミュニティ」に変わったんですね。その頃から「ファンコミュニティ」に呼び名も変更しました。
これがFaniconとしての、1番大きなターニングポイントだったと思います。
※最初にあったDM機能は、「ファンレター」という伝え方に変更したところ、「返さなくて良いもの」「返信を期待しないもの」に変わり、期待値がコントロールされてうまく機能するように。
デジタルくじの「スクラッチ実装」で収益性が2倍に
サービスの「成長のキッカケ」になった出来事があれば教えてください。
星川:
成長の起点になったのは、コミュニティに「スクラッチ」という、限定コンテンツが当たる、デジタルくじ引きのような機能を入れたことでした。
例えば、スクラッチを削ると、A〜E賞などの形で「今日も頑張ってね」といったオリジナルボイスや、「未公開の自撮り」などが当たります。
はじめは試しに、一部コミュニティに「スクラッチ」を導入したんですよ。すると、約150人のコミュニティで、70万円ほどの売上が上がっていて。
これはすごいぞと。それで、全体に「スクラッチ」を導入してみたところ、ARPU(1人あたり売上)が、2倍以上に成長したんですね。
現在のARPU(1人あたり売上)は1,200円ほどですが、当時はサブスクだけのARPUが400〜500円だったので、かなり影響は大きかったです。
ただ、ARPUは伸ばしすぎないことも意識しています。コミュニティ開設者はファンに「長くファンでいてほしい」と思っているからです。
※2017年の10月頃に「スクラッチ」を実装した。コミュニティ内で「これが当たった」などの会話も生まれて「コミュニティの熱量」を加速させる効果もあった。
収益性の高さがファンクラブからの「リプレイス」を加速
そこからは、どのようにサービスが成長しましたか?
星川:
スクラッチで、ARPU(1人あたり売上)が伸びたことで、既存ファンクラブからFaniconへの、リプレイスが促進されて成長しました。
なぜなら、リプレイスって、ファンにも負担がかかりますし、すこし良くなるくらいでは動かなくて、「大きな理由」がないと動かないんですね。
その「大きな理由」として機能したのが、収益性の高さだったんですよね。Faniconをつかえば「もっと収益性が上がります」と、事務所の方などに数字で証明できるようになったわけです。
僕らは「熱量の高いコミュニティをつくりましょう」と言えば、ファンクラブからリプレイスできると思ったけど、全然そうじゃなかったです。
それで、とくに2021年からリプレイスが多くなって、どんどんコミュニティが開設されたことで、サービスが成長していきました。
「継続されるコミュニティ」をつくるには?
Faniconを運営してわかった「コミュニティをつくるためのコツ」があれば教えてください。
星川:
まず、コミュニティが形成されるタイミングは、2つあるかなと思っていて。ひとつは、コミュニティを新設したときで、既存のファンが一気に入ってくるというタイミングです。
でも、実はここでのコミュニティ形成って、そこまで難しくないんですよ。なぜなら、みんなが「はじめまして」の状態からスタートするから。
難しいのは、後からファンが入ってくるときです。既に出来ているコミュニティに入らないといけないので、ここはサポートが必要なんですね。
具体的には「どんなサポート」をすると良いのですか?
星川:
ポイントは「まず1人の友達をつくること」なんですよ。学校とかでも1人と友達になれると、関係性が広がるじゃないですか。
それで「1人友達をつくる」ときに重要なのは何かというと、コミュニティの中心メンバーと、なるべく早くコンタクトをとってもらうことなんです。
すると、大阪出身の人なら「あの人も大阪だよ」と繋いでもらえたりして、友達ができやすくなるわけです。
僕らは、中心メンバーのことを「コミュニティリーダー」と呼んだりもしていますが、中心にいる人ほど「花園を守る意識」も高いんですよ。
それは「施策」としてはどう落とし込むのでしょう?
星川:
Faniconでの施策としては、コミュニティ内コメント数がトップ3の人には、新規ファンが入ったら「新しい人が入りましたよ」と通知していて。
入ってきましたよ挨拶しましょう、みたいな。グループチャット内で「案内してあげてね」のように伝えていますね。
ムラキ:
そこから、コミュニティで「関係性の線」がいくつもできてくると、線が1本切れても繋がりが続くので、コミュニティの継続率も高くなります。
どんな条件を持つ人のコミュニティがうまくいくか
星川:
他には、男性ファンがいる女性、女性ファンがいる男性、つまり「異性のファンが多いこと」は、コミュニティに人が増えるトリガーになっています。
アイドルなどでも、お金を払ってコミュニティに入りたい人は、多いイメージがありますよね。もちろん、行きすぎると良くないと思うのですが。
コミュニティ内では「高クオリティ配信」が求められない
ユーザー心理として「印象的だった話」はありますか?
星川:
あるアーティストさんのライブ配信をお手伝いしたときに、僕らはパソコンにOBS(配信ソフト)をつないで、失礼がないように照明や機材もバッチリ準備していたことがあって。
ところが、アーティストの方が来たときに言われたのが、「どうしてスマホでやらないの?」「これファンコミュニティでしょ?」だったんです。
どういうことかというと、作り上げた完成品を出すなら、外で有料の作品として出せばいい。これはファンコミュニティなんだから、ラフなスマホ配信のほうがファンが喜ぶんじゃないかと。
これは「本当にそうだな」とハッとしました。たしかにファンの方も外では見られない「ラフな姿」をみたいと思っているだろうなと。
カスタマーサポートは「ユーザーの熱量が集まる場所」
Faniconの運営で「大事にしていること」を教えてください。
星川:
大事にしているのはカスタマーサポートです。どんな部署でもどんな偉い人でも、入社したらカスタマーサポートを必ずやってもらっていて。
「問い合わせする」って相当な熱量ですし、カスタマーサポートって「こうしてほしい」という熱量が、すごく集まる場所なんですよね。
カスタマーサポートは軽視されていると思うんです。いかにコストを下げていくかが正義になりがちですけど、そこはそうじゃないんですよね。
やることに意味があるってよりは、誰かを挟まずに「生の声」を聞いて、開発にフィードバックして、プロダクトを良くすることに意味があります。
僕はGoogleで働いていたのですが、Googleでもはじめにカスタマーサポートをやるんですよね。そのときも「ここはユーザーとの接点だ」と言われて、「本当にそうだな」と思ったので、そこからも影響を受けていて。
Faniconがはじまってからも、2年ほどは全部自分で返していたのですけど、これは長い間やっておいて本当に良かったです。
ムラキ:
私もTHECOOにデザイナーで入社して、2週間くらい研修として、カスタマーサポートで働いていたのですが、やってよかったなと思います。
例えば、ご年配の方からの「文字が小さくて読めません」という声が多かったので、文字サイズを大きくしたり、コントラスト比を高めたりしました。
Faniconはユーザーの年齢層も幅広く、UIの改善が「ユーザー体験の改善」に必ずしもつながらないのだな、と実感することができました。
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【取材協力】
THECOO株式会社:https://thecoo.co.jp/
Fanicon:https://fanicon.net/icon
星川さん:@hayato1986
ムラキさん:@u_vf3
ドズルさん:YouTubeチャンネル
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https://hrmos.co/pages/thecoo/jobs/100000027
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