本日はnanapiさんのインタビュー記事をお送りします。アプリ企業に取材をしていて多いのが「良いエンジニアをもっと採用したい(足りていない)」という声。採用も順調であるnanapiのCTO和田さんにエンジニア採用のコツなどを聞いてきました。
※写真はnanapiの和田さん。
nanapiのエンジニア求人について
ワダさんはCTOとして、普段どんなことをやっていらっしゃるんですか?
和田:
当然現場の技術もやってはいるんですけれども、今うちはエンジニアが10名いるので、そこの組織作り、風土作りを大きくやっています。
あとはプラスアルファ採用ですね、一次面接や書類選考は全部私がやっています。
良いエンジニアを採用するのって大変ですか。
和田:
まあ難しくはあると思うのですが、正直うちは結構うまくいっていますね。
当然大変ですよ、お金もかかりますし労力を使ってはいますが、うまくできているなって感じですかね。その分、他社さんの倍は時間をつかっているとはおもいますけど。
※nanapiの開発メンバーは徐々に増えており、採用も順調とのこと。
市場に「良いエンジニアの絶対数」は足りていないですか?
和田:
当然「良いエンジニア」って誰もが欲しくて、サーバーサイドできて、アプリも書けて、デザインもちょっとできたらいいですよね。
でもそれを「良いエンジニア」って言っちゃいけないと思うんですよね。実際そんな人って、そう多くはいないんです。
僕はやっぱり良いエンジニアというのは「そういう風になれる資質があるエンジニア」だと思っています。素質があれば、あとは成長できるフィールドがうちにはあるし、機会は提供するので成長して欲しいと思っているんですよね。
最初からパーフェクトなフルスタックエンジニアを求めなくていいと僕は思っていますね。ただ多くの会社はそのあたりの採用要件がうまく詰められてないんじゃないかなと思います。
フルスタックという採用要件はクソ。でも目指すのはいいと思う。結局は、その人なりのフルスタックの解釈をした上で自分に足りないスキルを学習していくのだから。
— wadap@nanapi/CTO (@wadap) 2014, 5月 14
ちなみにエンジニアじゃない人が面接して、良いエンジニアって採れるものですか。
和田:
100%採れないです。優秀なエンジニアが優秀なエンジニアを採れるかといったら、それも違いますね。
面接は「面接」っていう特別なスキルなので。エンジニアが、面接の特別なスキルを持って初めてまともな面接ができるんですよ。
nanapiにエンジニアで求人で応募してくる人は、どういうところをみて応募してくる人が多いんですか。
和田:
いろんな方がいらっしゃいますね。うちが大切にしている「技術が正義って言えるような会社にしよう」というのがあって、やっぱりそこに惹かれてだったり。
あとは「新しい技術を学習する時間」を毎日強制的に取っているんですが、それがすごくいいと思ってきた人が多いですね。
紹介会社経由と、直接ホームページから応募してくる人では、結構毛色が違っていて、ホームページから来る人は、もともとうちの代表や私のブログをウォッチしてくれているて人が多かったりします。
※nanapiのCEO古川さんのブログ、CTO和田さんのブログもエンジニア採用に間接的につながることがあるようだ。
エンジニアが「入りたい」って思ってくれるにはどうしたらいいですかね、プロダクトの魅力、社内制度などどのへんが重要ですか?
和田:
nanapiでいうと完全に「風土のマッチング」です、「エンジニアがエンジニアらしく働ける職場」というところをどう伝えるかですよね。
プロダクトで引っ張る会社もありますけれども、僕はあれ正直一番失敗するパターンだとは思っていて。
「そのサービスが好きで働きたい!」っていう人ばかり集めたとしても、その事業やサービスをやり続けるかどうかって会社としてはわかりませんよね。
なので僕はプロダクトへの愛よりは、風土のマッチングの方が採用は絶対うまくいくんじゃないかなと思っています。
「この人と働きたい」みたいな応募もあるんですか?和田さんや古川さんと一緒に仕事してみたい的な。
和田:
中にはいますけど、採用に至るケースの方が少ないですね。このケースの場合多くの人は「憧れ」が大きな理由だったりします。
そう言ってもらえるのはすごく嬉しい事ではありますが、やはりそこに実力がともなっていないと採用にはつながらないですね。
エンジニアの給料ってどういう風に決めるものなんですか。
和田:
難しいですね・・・それは本当に難しいと思います。当然スタートの給料の話もありますし、それこそ評価の話もあると思うんですけど、そこは正直まだうちもこれから整備しなきゃいけないなあと思っているところです。
コードを見たら実力が大体わかるものですか?
和田:
ある程度はわかりますが、それだけで正しい評価は出来ないと思いますね。コードプラス「なぜこういうコードを書いたのか」「なぜこの設計をしたのか」という思考のプロセスは必要ですね。
あと情報感度だったり、技術やインターネットへの興味などを複合して決めなくちゃいけないなあと思っているんです。
なるほど。面接の時にコード見せてもらったり、情報感度も会話の中で測ったりするということですか?
和田:
そうですね、「コードを見せて」って言うことはあまりないですけれども、多くの人がGitHubのアカウントを持っているので、事前に見ちゃいますね。
GitHubや(技術的なことを書いている)ブログはあった方が、より深い話がしやすいですよね。
逆にヘッドハント的に、こっちから採りにいくことってあるんですか。
和田:
ありますあります。最近で言うと、僕の講演のレポートを見てTwitterで「nanapiいいな」って言ってる人がいたんですよ。
それでTwitterにGitHubのアカウントが書いてあったので、それを見てすぐにTwitterで声をかけるということが実際にありました。
そんな感じでこちらから積極的にアクションするケースもよくあります。
テックブログでの情報発信について
nanapiではテックブログを運営していますが、記事がネットでバズってそこから求人がくることもあるんですか?
和田:
いわゆる直接の求人のコンバージョンはないんですけれども、やっぱ後から話を聞くと「テックブログで書いていたあの記事にすごく惹かれて」という声は多いですね。間接的にすごく影響があるなと感じます。
※nanapi Techblog。ソーシャルで話題になっている記事も多い。
テックブログをやっている身として、ブログでの情報発信はどういうところでメリットがあると思いますか?
和田:
大きく二つあると思うのですけど、一点目が「採用時のブランディング」で、二つ目が「情報発信を行って欲しい」という想いからです。
エンジニアって情報を発信することでより価値が上がるというか、自分の考え方に対して周りの人から突っ込まれることで、ブラッシュアップされていくべきなんですよね。
だから自分の使っている情報を外に発信していくことで、その人が磨かれていくと思うし、より成長していって欲しい。
ブログの更新は毎週ローテーションでやっています、担当を決めてみんなでレビューしてから公開する、というフローでやっていますね。
記事を書いたあとに一回みんなでレビューするんですね。
和田:
はい。毎回みんなにレビューして見てもらって「この言い回しおかしいよ」とか「タイトルはこうした方がいいよ」ってやっていますね。
やっぱり一番考えるのはタイトルです「このタイトルはバズるよね、バズらないよね」とか。そこが毎度突っ込みが入る部分ですね。コツは難しいですが、やっぱり惹かれるタイトルにするという点はすごく意識しています。
例えば、タイトルを見ただけでブログ記事の中身がわかるように、流行ワードやテクノロジーの単語を入れるようにするなどですかね。
※nanapi Techblogの記事タイトル例。事前にレビューしてから公開している。
開発メンバーがたくさんいる会社が「ブログうちもやってみよう!」ってなった時に、おすすめしたいですか。
和田:
絶対やった方がいいです、ただやる理由はちゃんとつけた方が良くて。それがないと多分意味ないだろうって感じはしますね。
あまりテクノロジーがわからないような社長が「テックブログ流行っているらしいからうちもやろう」というのが一番良くないパターン。
うちも正にそうなんですけれども、うまくのってくるとテックブログを書いてバズる行為がゲームっぽくなるんですよね。「俺こんだけツイートされた」とか「いいね!これだけついた」とか楽しんでやれるんですよ。
あと有名なエンジニアがブログについて言及してくれたりすると、それってやっぱり嬉しくて面白いんですよね。エンジニアのモチベーションってそういうところだと思うので。
nanapiの企業文化など
nanapiでは「エンジニアじゃない人もプログラミングを学ぶ」みたいな制度があるじゃないですか。どんな感じでやっているんですか?
和田:
週に1回ずつ会議室に集まって、そこで毎週1回1時間教えるんですね。実際にコードを書いてもらいながらやってます。もう5ヶ月くらい続けていますよ。
これまで続けてきて「やってよかったな」と思ったのはどの辺ですか。
和田:
うーん、やっぱり技術ってどうしても エンジニアしか触れられないし、他人事感がすごいんですよね。これをやることで技術自体がすごく身近なものになるんですよ。
エンジニアや技術に対するリスペクトが正しくされて、お互いに頼み方だったりコミュニケーションが全然変わりますね。
飲食店とかでいうと、ホールの人がシェフがどんな風に料理をつくってるか学ぶ、みたいな感じですか。
和田:
それに近いですね。ホールの人がそのシェフの料理技術を学ぶことによって、別に美味しい料理を作れなくてもいいんですよ。
知ってることが大事なので。なので風土作りのためにやってるっていうのが一番大きいですね。
nanapiの古川さんのブログで「実装してしまって、ダメなら後から謝った方が早い」と書いてあった。機能改善する時って権限をそれぞれに与えてしまうスタイルなんですか?
和田:
はい、基本は「出せばいい」という感じ。「新しい機能を追加するから役員の定例会に出ないといけない」とかは全くないです。どんどん自由にやっちゃっていいかなって思っています。
“よく社内でいうのが「許可より謝罪」という言葉です。
これは、簡単に言うと「許可とか求めるより、謝罪したほうが楽だから、相当クリティカルじゃない限り、許可とりにこなくていいよ」という感じです。” nanapi社長日記より
和田さんが知らないうちに、新機能が追加されてたということもあるんですか。
和田:
ざらですね。やっぱり私がコントロールしちゃうと、最大限に出来るのが私の想像の範囲内になっちゃうんですよ。そこを超えないと絶対ブレークスルーが生まれないので、むしろそれを支援している感じです。
事後報告さえもそんなに受けてないです、CTOはエンジニアがやってることをコントロールしちゃいけないと思うんですね。アウトプットは彼らに任せたいんです。
エンジニアを取り巻く環境など
エンジニアとして、年収というか市場価値を上げるためにどういうことをやっていけばいいですか?
和田:
難しいですよね。結構会社によって評価する場所が変わりますからね。年収を上げるためにですよね・・・深さと広さっていう話だと思うんですけど。
「なんからの技術に対してすごく深く知っています」という強さって、やっぱりすごい重要だと思うんですよ。プラスアルファでサーバーサイドできるし、ネイティブアプリもいけますよって広さも大事だとは思うんですよね。
ただエンジニアが年収を上げるとしたら、何よりも「自分がこれだけスキルがありますよ」っていうことをプレゼンテーションできるスキルが大事かなって気がしますね。
当然面接官はそれをわかってあげるのも仕事ですけれども、やっぱりそれでも素晴らしい人を落としてしまうのが採用なんですよ、面接だけではわからない部分って絶対にあります。
そこを「どうアピールして自分の価値を伝えていくのか」っていうのが、最後自分の価値を上げていく重要なプロセスな気がしますね。
「Umano」というアメリカのスタートアップのアプリの人に「シリコンバレーではエンジニアは年収1,000万円は当たり前だよ」って聞いた。日本のエンジニアって年収低いんですか?
和田:
シリコンバレーに比べると低いのは事実ですね。というかシリコンバレーは基本的に物価がすごく高いんです。先ず、大企業が多いというのもありますし、そもそもバブルで跳ね上がり過ぎています。
特に家賃なんかすごい金額ですよね。シリコンバレーで住むとしたらまず10万じゃ住めないはずです。そういった点を考えると、ただ単純に日本と比較するのも難しいなとも思います。
「日本ではエンジニアが評価されてない」という話ではないということですよね。
和田:
そうですね、評価は確実にされている。まだ弱いと思いますけど、確実に時代は変わっているなという感じはしますね。
私が会社始めたのは2009年で、ずっと採用だったり市場もみてますけど、やっぱり確実に年収は上がってきています。
最後に、エンジニア採用がうまくいっているnanapiから、求人で困っている会社の人たちにアドバイスをするとしたら?
和田:
大きく2つあります。先ず「うちはエンジニアがこれだけ楽しめる環境なんだよ」という風土をちゃんと作ることです。最初は経営者や役員の意識から変えることが大事ですね。
続いて二つ目は、非エンジニアが技術を正しく理解すること。うちでは発生していませんが、多くの場合技術者の邪魔をするのは技術を理解していない人なんです。
これは小手先ではいけなくて、ちゃんとエンジニアだけじゃなくて他の職種にも全員DNAがつながっていて、理解している状態を作るのが先ず一点ですね。
大体みんな、小手先のテクニックと小手先の発信だけに目がいくんですよ、例えば「20%ルールをつくりました!」みたいな感じで、とりあえず「よくわかない尖った制度」とかにいきたがるんですよね、それは本質的ではない。
次は、それをちゃんと発信することですね。発信に関してはブログ・イベント登壇・取材などがありますが、取材などはいきなり話がくるもんじゃないので、やっぱり積み重ねなんですよね。
その2つがあって初めてエンジニアを採用しやすくなるんじゃないかなと思ってます。
取材協力:株式会社nanapi
編集後記
話を聞いて思ったのは、そもそもエンジニアが働いてみたくなるような会社をつくるのが大事なんだなということ。お店が来店客の数を増やすにはお客さんが来たくなるお店をまずつくらなくてはいけないのと一緒か。
そこの順番やアプローチを間違ってしまうと、きっと「テックブログ流行ってるからおまえらやれ」じゃないけど、おかしなことになってしまうんだなあ。
nanapiのエンジニア募集ページ、めっちゃちゃんと作ってますね。社員インタビューのコンテンツとかは雰囲気も伝わるし効果ありそう。