解約される理由を深ぼって「継続率92%」累計1,000万食の「PETOKOTO FOODS」が語る、継続されるサブスクをつくるコツ。再開率が2〜3倍に伸びた施策

2022年11月10日 |

※本記事はnoteにて公開した記事を転載したものです(2022年8月25日)数値などは取材当時のものです。
https://markelabo.com/n/n502a6489f5aa

フレッシュドッグフードのD2C「PETOKOTO FOODS」を取材しました。


※株式会社PETOKOTO 代表取締役社長 大久保 泰介さん

「PETOKOTO FOODS」について教えてください。

大久保:
愛犬のための国産食材を使用した「フレッシュドッグフード」です。2020年に販売をスタートしたブランドです。

2020年にリリースして、販売食数としては累計1,000万食を突破していて、ARRでは5億円を超えています。(前年同月比でARRは8倍に)

特徴としては、初回からの定期購入モデルにもかかわらず「継続率が92%」と継続率がとても高いことです。また、顧客の40%は「自社メディア」から自然流入で集客できていて、集客コストが低いことも特徴です。

「PETOKOTO FOODS」はどのようにスタートしたのでしょうか?

大久保:
PETOKOTO FOODSは、僕が愛犬のコルクに「良いものを食べてほしい」という想いからスタートしたブランドです。

僕たちにとって「愛犬は家族」です。家族であるなら人間と同じ、新鮮でおいしいごはんを食べてほしい。それが健康につながると思ったのです。

はじめは100の工場に連絡して、やっと製造してくれる工場を見つけました。最高のレシピをつくるために、海外の専門家にも会いに行って、レシピ開発に協力してもらえるように交渉しました。

レシピも100回くらい試行錯誤しました。人間が食べられるほど信頼できるものにしたかったので、社内でハンバーグにして食べたりもしましたね。

ブランドの急成長につながった「2つのポイント」

約2年で「累計1,000万食の販売」を突破しましたが、急成長のポイントがあれば教えてください。

大久保:
認知拡大につながったのは、パッケージに「愛犬の名前」をラベリングしたことです。これによってSNSでの投稿がたくさん生まれました。

僕たちも飼い主なのでわかりますが、「愛犬の名前」で何かが届く体験ってすごく嬉しいんですよ。そこの「驚きの体験」は大事にしていますね。

フレッシュフードの中でも「名前が入るところ」と覚えてもらえれば、想起してもらいやすくなるため、差別化になるとも考えています。

もうひとつは、社内にいる獣医師や栄養士に、お客様が「ペットの悩み」を365日相談できるようにしたことで、継続率や売上を高められています。

相談と購入のチャネルが分かれると「買い替え」が起こりやすいんですよ。なので「買ってから相談するまで」を全てサポートしようと。

米国の「Chewy」という企業も、24時間のペットヘルプを展開することで、支持を集めています。つまり、商品のみではなくて顧客データを基にした、1to1サポートを提供することで、高い収益性を生み出しているんです。

「解約理由の深ぼり」で解約率を大きく下げられた

「継続率92%」という数字を実現するために「ここを見ることが大事だ」というポイントを教えてください。

大久保:
例えば「解約の理由」を深ぼっていくことは、とても大事だと思います。

とくに離脱が起こりやすいのは「初回の離脱」なんですよね。現在は1回目の解約率は15%程なのですが、当初は40%くらい解約されていました。

そこで解約の理由を深ぼっていくと、解約の半数は「ワンちゃんがごはんを食べない」という理由で、もともと解約されていました。

さらに深ぼると、そのうち「フードの問題」というのは20%で、「飼い主さんの食育の知識」によるものが80%を占める、とわかってきました。

例えば、必要以上に「おやつ」をあげるなど、意図せず「食欲のない状態」をつくってしまっていて、その状態で「フードを食べない様子」を見て、「このフードは良くないね」と解約されてしまう現象が起きていました。

それは「どんな施策」を打てば解決できるのでしょう?

大久保:
解決策としては、購入後の「最初の1ヶ月」にナーチャリング期間を置いて、飼い主の方に「正しい知識」を届けるような施策を打ちました。

例えば、LINE公式アカウントで食育コンテンツを届けたり、メルマガを送るようにしたり、教育コンテンツとの接点を増やしていく感じです。

結果、初回の解約率は下がっていきました。今ではロイヤルカスタマーさんの80%は食育をきちんと理解している方だ、というのもわかっています。

つまり「食育についての知識」が、プロダクトの継続率や収益性につながるとわかったので、そこに力を入れるようにしていますね。


※同梱している冊子などでも「正しい知識」を届けている。


※フードの品質(嗜好性の改善)も解約率の改善に貢献。例えば、肉のサイズを「5ミリ→10ミリ」にすると、匂いが引き立ってよりおいしく食べてもらえた。

カスタマーサクセス期間は「ペットの一生」で考える

PETOKOTO FOODSの運営で「大切にしていること」があれば教えてください。

大久保:
僕らは、最も重要な指標として「お客様のペットライフが幸せであったか」を置いて大切にしています。これは健康でいたかどうかと、愛犬との絆が生まれたどうか、この二軸で定義していますね。

例えば、おいしいフードを提供できれば、飼い主さんがフードの準備をしているときに、ワンちゃんが寄ってきてジャンプして喜びますよね。

すると、フードを起点にコミュニケーションが生まれますし、愛犬が喜ぶ姿を通じて飼い主さんにも、笑顔になってもらう体験を提供できます。

実際、お客様にお話を聞いても、ごはんをあげるときに「絆を感じられる」から継続してくれている、という方もすごく多いんですよ。

カスタマーサクセスも、通常は「継続が終わるまで」だと思いますが、僕らは「ペットが家族として迎えられて亡くなるまで」で考えています。

例えば、解約時のコメントに「愛犬が亡くなりました。最後までおいしそうに食べてました」とあれば、お客様に花束と手紙をそえてお送りします。

PETOKOTO社内のメンバーは全員、犬か猫の飼い主でもあるので、みんながそうすべきだと思うことを、良しとして実行しているんです。

ほかには、配送中にもし愛犬が亡くなってしまった場合は、僕たちが返送分の送料を負担して、返送いただけるようにも対応しています。

会社のコストが増えても、カスタマーサクセスの予算は柔軟に用意して、飼い主さんにとって「正しい選択だ」と思える行動をとります。

そのほうが、回り回ってブランドを応援してもらえると思いますし、飼い主である僕ら自身が「嬉しい」と思える行動をとるブランドにしたいなと。

ブランドの運営において「実は意外と大事じゃないか」と感じることを教えてください。

大久保:
ブランドの「透明性や信頼性」ですね。これはすごく大事だと考えていて。なぜなら今のお客様は「こだわり」まできちんと見てくれるからです。

実際に、サイトの第二階層のページに「ブランドへの想いや透明性」などを掲載したところ、これを知っているかどうかで、ロイヤルカスタマーの比率に2倍もの差がでたんですよね。

つまり、産地情報や製造過程、そして運営者の想い、こうした情報を伝えることって実は大切で、ブランドの信頼につながるということです。なので、SNSでも「今月の産地情報」などを積極的に公開しています。

数値の改善につながった「うまくいった施策」

ほかにPETOKOTO FOODSで「成功した施策」があればぜひ教えてください。

大久保:
解約については「一時停止」という形も用意して、再開のハードルを下げるように意識したところ、再開率が2~3倍くらいに改善されました。

偏食で悩まれている方が「手作りごはんや他のフードも一度試してみます」と一時停止して、試した結果で戻ってきてくれることも多いですね。

解約理由を聞けば「解約理由の変化」が時系列のデータで可視化されます。これを可視化したことにもすごく意味がありました。

ほかには、JR東日本さんと一緒に、日本初の「ペット専用新幹線」を走らせる取り組みをしたことがあります。飼い主がペットと一緒に旅行できると。

結果的に多くのメディアに取り上げられて、自然流入の割合が増えました。新しいチャレンジをすると、自然流入も伸びる傾向があるんです。

こうした取り組みで結果を出すには、①本当に意味のあることか、②最先端で新しいものか、この2つだと思っていてそこに投資しています。

こうしたことを続けて、PETOKOTOはペットの未来を変えようとしている、本気でペットを愛してる会社だと認めてもらえれば、強いブランドの信頼性にもつながってくるはずだと信じています。


※「既存商品 × 新しいネーミング」の企画も売上に貢献した。

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【取材協力】
株式会社PETOKOTO:https://corp.petokoto.com/
PETOKOTO FOODS:https://foods.petokoto.com/
CEOの大久保さん:@OkuboTaisuke

【告知】PETOKOTOさんでは各職種で採用も強化中。エンジニアやCSなど、募集しているそうです。ご興味ある方は下記サイトよりどうぞ。
https://www.wantedly.com/companies/syrup

※続きのマニアックな事例は5つほど、note購読者向けにまとめています。「解約時の離脱」を60%削減できた工夫、ポップアップでの購入率が8倍も変化した要素、効果の高かったプロモ手法、などご興味あればご覧ください。
https://markelabo.com/n/n502a6489f5aa

アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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