今回は「今日、彼女が死んだ」というアプリが好調の、Nagisaさんにお話を伺いました。「放置ゲーム」のつくり方、狙うべきジャンル、マネタイズのコツとは?
※株式会社Nagisa 執行役 井上大紀さん、吉丸奈那さん。
「今日、彼女が死んだ」について
「今日、彼女が死んだ」について教えてください。
井上:
タイムマシンで過去にもどって「死んでしまった彼女の未来を変える」というストーリーの放置ゲームです。
「ゲームを進める順番」は全部で243通りあって、彼女の容姿などもそれに応じて変わったり、マルチエンディングにも対応しています。
ダウンロード数でいうと、いまどのくらいですか?
井上:
リリースから20日間で約85万ダウンロードです。iOSが75万ダウンロード、Androidが5万くらいですね。デイリーだと、ここ数日は15,000ダウンロードくらいされています。
85万ダウンロードまでは、どのように伸びていったんでしょうか?
井上:
最初に4万件ほどブーストをかけたところ、AppStoreの18位までランキングが上がりました。そこからは自然に1位まで伸びていった感じですね。
3月中旬はずっとトップ3に入っていたのですが、3月末の(とくに金土)、ブーストラッシュがものすごくて…その時は30位くらいまで押し戻されてしまいました。
「App Store1位」をとれた要因としては、何が大きいと感じますか?
井上:
ひとつは「アイコン」ですね、アイコンがすごくキャッチーだったのが良かった。
ただ実は、開発中につくっていたアイコンは、ちょっとダメでした。というのも「ホラーっぽいアイコン」になってしまっていたんです。
なぜ「ホラーっぽい」がダメかというと、カジュアルゲームのメインターゲットである若い女の子には、「ホラー」が苦手な子が多いんです。
これは、社内でアイコンを見せたら「こわい!」と女の子たちに言われたことで「まずいな」と気づきました。それで、かわいらしい見た目に変えたんですよね。
あと、前にうちで「日本人形のホラーゲーム」を出したことがあるんですけど、たしかに「ホラー」って、ランキング20〜30位でよくみますし、人気のジャンルなんですよ。
でも、やっぱり苦手な子が多くて、「ホラーは人気が出やすいけど、トップ10位はとれないジャンル」なんだなとも感じていました。
アプリの企画について
井上さんは「放置ゲーム」をたくさんつくってきたと思いますが、企画をたてるときって、どんなことが大事だと感じますか?
井上:
そうですね、まず「放置ゲーム」のターゲットユーザーって、10代〜20代前半なので、その世代の子たちが、好きなジャンルじゃないといけない。
例えば、引きが強いジャンルとして「恋愛系(彼氏・彼女)」は鉄板だと思うんです。あとは「お金」「ねこ」とかですかね、なるべくそういうジャンルに張る。
最近の例でいうと「恋愛系」は「リア充爆発しろ」とか、「お金系」でいうとDeNAの「パズ億」なども人気が出ていましたよね。
「彼女が死んだ」は放置ゲームには珍しく、ストーリーがありますけど、そこはどんな意図があるんでしょうか?
井上:
放置ゲームって、基本的にはどれも一緒じゃないですか。そんな中で、遊んでもらえるかどうかは「イラストの楽しさ」と「ストーリー」の2つにかかっていると考えていて。
なので、まず「ストーリー」は必要。そして、ユーザーが「放置ゲー」を遊びたくなるモチベーションは、「めちゃシュール」か「先が知りたい」のどちらかなんです。
なので、その文脈に沿ったストーリーをつくる必要があります。
今回のストーリーは、どんな発想でつくったんでしょうか?
井上:
ストーリーの発想としては「タイムマシンで行く時代を選べる、って楽しそうだな」というところからつくりました。
もともと僕は、学生時代に放送作家をやっていて、映画をつくったりしていたのですが、映画の「バック・トゥーザ・フューチャー」とか好きなんですよね。
なので、マルチエンディングだったり、ゲームの進め方にバリエーションがあるのも「収益性うんぬん」ではなく、「タイムマシン感」を出すための演出です。
ストーリーが「1本道」だと、タイムマシンっぽくないじゃないですか。
「彼女が死んだ」は、どのくらいの期間で、何人でつくったのでしょうか?
井上:
開発期間は1.5ヶ月くらいです。僕がディレクター、イラストレーター2人、UIデザイン1人、開発1人の5人でつくりました。
声については、「ココナラ」というサイトで、フリーの声優の方にお願いしました。「声が入ってる放置カジュアルゲーム」って少ないんですけど、ユーザー体験としては大きいと思っていて。
例えば、わざと性格は悪いまま、顔と声はキレイになるようゲームを進めて「こんな彼女に、ののしられたい」と、「声ありきの楽しみ方」をしているユーザーもいました。
マネタイズ(収益面)について
今までだしたゲームと比べて、「彼女が死んだ」で良い数字がでている部分って、どこでしょうか?
井上:
やっぱり、単純に「新規インストール数の伸び」が圧倒的でしたね。
Nagisaでつくっている「放置ゲーム」の滞在時間って、だいたいクリアまで2~3日、平均滞在時間11分くらい、1DAUあたりの収益も15〜20円なんですけど、その辺はあまり変わらないです。
収益額については、どのくらい出ていますか?
井上:
「今日、彼女が死んだ」は収益額でいうとリリースから半月で3,000万円くらいでています。「49人目の少女」の時は、1か月で1,500万円だったので、初動は4倍ほど良いですね。
課金は「早くリリースしたかった」こともあり入れませんでしたが、「49人目の少女」も数千万円の収益のうち、15%が課金収益でしたし、入れても良かったかもしれません。
広告の種類ごとの比率は、どんな感じですか?
井上:
割合としては「バナー広告」が40%、「アイコン広告」40%、「テキストポップアップ」が20%という感じです。
バナーは「nend」、アイコンが「i-mobile」、テキストポップアップは自社の「pop ad」を、それぞれ主力でつかっています。
インタースティシャル広告じゃなくて、テキストポップアップを使うのはなぜですか?
井上:
もちろん「自社サービスだから」というのもありますが、テキストポップアップって、画面推移がないアプリでも使えるのが、良いところなんですよ。
「今日、彼女が死んだ」って「49人目の少女」と違って、画面Aと画面Bを行ったり来たりする動きがあまりないんですよね。なので、インタースティシャル広告が入れづらい。
テキストポップアップの入れ方としては、「25回アイテムを蹴ったら、1回広告を表示する」という設定にしています。
この「25回に1回」のような数値は、「pop ad」をつかうと、サーバー側ですぐ変更できるので、様子を見ながら調整しています。
吉丸:
もちろん、インタースティシャル広告も収益性が高いので、ゲーム終了画面にはインタースティシャル、それ以外はテキストポップアップ、という併用もアリだと思います。
あと、「pop ad」は、広告のテキストが、チューニングできるのもおもしろくて。
例えば、「49人目の少女」に「ブスで飽きたらほんとの美少女!」というテキストで、「ラブライブ」のアプリの広告をだしたら、ものすごくダウンロードされました。
「ソーシャルシェア」について。
今回は「ソーシャルシェア施策」は入れていますか?
井上:
はい、ソーシャルでシェアすると「カプセル」がもらえるようにしています。
シェア施策については、「いつでも出来るもの(インセンティブ小)」と「成功体験をしたタイミングで出来るもの(インセンティブ大)」の両方を置くのが良いと思います。
今回の「彼女が死んだ」でいうと、「1時間に1回までのシェア」でカプセルが1つと、「進化完了時のシェア」でカプセルが3つ、もらえるようになっている。
シェアされる時の、ツイッターとFacebookの割合はどうですか?
井上:
「彼女が死んだ」の場合は、Twitter9:Facebook1でした。Twitterはピーク時で1日2万くらいシェアされていましたね。
あと、Twitterで気をつけなきゃいけないのは「サブアカ対策」なんですよ。
最近は「シェアしたら何かもらえる」って、割と当たり前になってきているので、「そのため専用のサブアカウント」をつくっている人が、ほんとうに多くてですね。
当然「フォロワー0」のアカウントがほとんどなので、シェアされたとしても拡散されないわけです。ユーザーも、ある意味賢くなってきている。
なるほど、それはどうしたらいいんですか?
井上:
一言でいうと「本アカウントでシェアしたくなるゲーム」をつくるのが一番。例えば「ねこあつめ」だと「猫こんなに集まったよ」って友だちに自慢したくなるじゃないですか。
もちろん、そういうゲームをつくるのは、簡単ではないと思うので、すぐ出来そうなことでいうと「シェアをお願いする時のテキストを変える」でしょうか。
例えば「シェアしたらプレゼント!」という文言を、「友だちと一緒に遊ぶとプレゼント!」に変えるだけでも、本アカでシェアされる確率って上がると思うんですね。
うちの「ブリ猫」という放置ゲームは、TwitterとFacebookのシェア比率が50:50なんですけど、出来ればそういう「Facebookでシェアされるゲーム」をつくりたいですね。
※ゲーム画面によって、シェア時のテキストが変わる。
「放置ゲーム」のつくり方
「放置ゲーム」をつくるときに「ユーザーが長く遊んでくれるためのコツ」って、何だと思いますか?
井上:
やっぱり「ゲームバランス」はすごく重要だと思います。
放置ゲームのバランスって、「次の進化までのゲージの長さ」「1画面に出るアイテムの最大数」「何秒に1つアイテムがでてくるか」の3つの要素で決まってくると思っていて。
まず「ゲージの長さ」については、かなり短めで良いんですね、「すぐ終わるじゃん」と思うくらい。そこが長いとユーザーはうんざりしてしまうから。
基本的には、ゲームの前半40%くらいは、出来るだけテンポよく成功体験を積んでもらって、ゲームにハマってもらうことが大事。
まずはテンポよく進めて、のめり込んでもらうのが重要と。
井上:
そうですね。それで中盤以降は「先がめちゃめちゃ気になるんだけど、1回の待ち時間が長い」という状態になっているのが、たぶん一番良い。
そして、マネタイズのポイントは「スマホを置いて放置」じゃなくて「スマホ画面を見ながら待っている状態」が長くなるようにすることです。
これは、アイテムを収集し終わって、広告に視線がいく時間をつくりつつも、心理的には「ゲージがもうすぐたまるし、もうちょっとやろうか」という状態ですよね。
その状態にもっていくために、「1画面に出るアイテムの最大数」「何秒に1つアイテムがでてくるか」を、うまく調整するわけです。
「彼女が死んだ」では、いろいろ調整してみた結果、「1画面に出るアイテムの最大数」は10個、「何秒に1つでてくるか」は9秒にしています。
一番、最悪なのは「どんどんアイテムが出てきて、ユーザーはタップに忙しいけど、次ステージまでのゲージが長過ぎてなかなか進化しない」という状態。これだと飽きちゃう上に、広告を見る暇がないんですね。
最後に、告知などがあればお願いします。
井上:
先ほど紹介した「pop ad」は、広告マネタイズにも使えますし、自社アプリの広告をだしたり、レビューのお願いなどもできて便利なので、ぜひ試してみてください。
お問い合わせいただければ、「Nagisaならこう配置します」的な、広告設置のアドバイスをさせていただくことも可能です。
また、Nagisaでは、いま一緒にゲームアプリを作ってくれる仲間を募集しています。「おもしろいこと考えるのが好き!」という人は是非ご覧ください!
ゲームディレクター募集ページ
https://www.wantedly.com/projects/19603
取材協力:株式会社Nagisa
編集後記
「放置ゲーム」が進化していくと、最終的に「小説や映画の合間に、ゲームがはさまってるゲーム」みたいな感じになってくのではないかなと思った。