アラブ人がスマホゲーに廃課金する理由「娯楽がないし、暑すぎてサッカーも出来ない」アナリストに聞く新興国のゲーム市場。

2015年06月29日 |
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新興国のゲーム市場に詳しい、メディアクリエイトさんに「世界のゲーム市場の近況」を聞いてきました。アラブの課金王が出てきているらしい…。

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※株式会社メディアクリエイト チーフアナリスト 佐藤翔さん

<目次>
・1、「アラブ人」がゲームにお金をつかいはじめている。
・2、「格安Android」の勢いがすごい。
・3、「通信が頻繁に必要なゲーム」は好まれない。
・4、新興国で「スマホゲームのアーケード版」が登場。
・5、中東に「女性起業家」が増えている理由。
・6、「東ヨーロッパ発のゲーム」がひそかにヒットしてる。
・7、「ナイジェリア映画」は先進国の事情からはじまった。
・8、ゲームや音楽の「違法コピー問題」

1、「アラブ人」がゲームにお金をつかいはじめている。

「日本人はモバイルゲームに世界一課金する」というのは有名ですが、最近は海外で課金する国ってでてきていますか?

佐藤:
最近「アラブ」の人たちがモバイルゲームに、本気でお金と時間をかけるようになってきていると感じます。

やっぱりアラブの国々って、すごいお金持ちなんですよ。UAE、サウジ、クウェートとか。石油産業がものすごく強いので、たとえば「家族に公務員がいる」というだけで、裕福に暮らせてしまう。

例えば、この前「クラッシュ・オブ・クラン」で、トップ5にアラブ系ユーザーのクランが、3つもランクインしていました。

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そして「アラブは娯楽が少ない」というのも理由で。だって、宗教の関係でお酒さえ飲めないんですから。夜にバーのような盛り場も開いていないわけですね。すると、お金も使えないしヒマなんです。

国でいうと、飲酒などに一番厳しいのはサウジアラビアですね、宗教警察が町をパトロールしているくらいですし。逆に、レバノンやヨルダンあたりは、比較的ゆるい国です。

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娯楽がないから、みんなスマホでゲームやるようになっていると。

佐藤:
そうですね、アラブ諸国での手頃な娯楽って「車」「テレビ」「ゲーム」の3つなんですね。

とくにサウジの人たちはね、車が大好きなんですよ。そして、サウジ人の乱暴運転っぷりは「サウジドリフト」と呼ばれていて、グローバルでも有名ですね。

サウジって「道が広い」っていうレベルじゃなくて、周りが砂漠ですからね。

あと気の毒なのが、アラブってサッカーがすごく人気なんですけど、いざサッカーやろうとすると、外がめちゃくちゃ暑すぎてサッカー出来ないということもあって。

それで結局、「テレビしか見るものなかった」という状況だったんですけど、そういう人たちがスマホゲームにわっと流れているのが今なんだと思います。

「アラブのゲーム市場」は先進国に比べるとまだまだですが、ユーザー単位ではものすごく課金している人が増えてきている。おそらく、もう3〜4年するともっと勢いが出てくると感じますね。

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アラブ地域での「コンテンツの消費のされ方」に特徴ってありますか?

佐藤:
アラブ地域って「情報の伝達」がめちゃくちゃ早いんです。なぜならアラブ諸国は、西から東までアラビア語ですからね。話し言葉はちがうのですけど、書き言葉は一緒なんです。

例えば「東南アジア」って、国ごとに言語が違うので、流行の広がり方にも違いが出てくるのですけど、アラブではFacebookやメッセージアプリで情報が一気に拡散していく。

ちなみに、メッセージアプリはすごく人気ですね。やっぱりアラブでは「男女の出会い」が少ないので、その反動もあって「手軽な出会い系」みたいな感覚でつかわれています。

2、「格安Android」の勢いがすごい。

「新興国で使われているスマホ」はやっぱりAndroidが強いですか?

佐藤:
そうですね、アラブや東南アジアなどの新興国では、スマホはほとんどAndroidです。お金持ちはiPhoneを使う人もいますけど、とくに格安Androidの勢いがすごい。

これはインドネシアの「Advan」というメーカーのAndroidスマホで、7,000円くらいで買いました。もっと安いスマホもあります。「OPPO」という中国メーカーも東南アジアで勢いがありますね。

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※実物をさわってみたが、思ったよりもサクサク動く。

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3、「通信が頻繁に必要なゲーム」は好まれない。

日本のアプリやゲームが「新興国で苦労していること」ってなんですか?

佐藤:
新興国において、日本のモバイルゲームが苦労するポイントは、「通信」「決済」「販促」の3つだと感じます。

特に「通信」の感覚は大きく違っていて。新興国のユーザーは「ネットは有料」という感覚が強いんです。なぜなら、例えばプリペイドカードをお店で買って、その都度チャージしているからですね。

なので、日本のソーシャルゲームのような「通信が頻繁に必要なゲーム」を遊ぶには、無料Wi-Fiのあるカフェ等にいかないと厳しいし、そもそもWi-Fiが繋がらないことも多いんです。

そうなると、やっぱり遊ばれにくいですよね。逆に「キャンディクラッシュ」みたいに、「1回ダウンロードすると、長く遊べるコンテンツ」は好まれる傾向にあります。

「通信環境」が違うだけで、ユーザーが遊ぶコンテンツも変わるんですね。

佐藤:
そうですね、通信環境が変わるとユーザーの行動も変わります。あと似たような話でいうと、新興国では、最近「ネットカフェ」に来る人が減っているんですよ。

もともとネットカフェって「求人をネットで探したい」「友だちにメールを送りたい」などの目的で使っていた人も多かったのですが、もうそのへんはスマホで出来ちゃうじゃないですか。

なので、いま東南アジア(都市部)の「ネットカフェ」は、どんどん専門化している。例えば「PCのオンラインゲームを遊ぶ人向けのネットカフェ」みたいにですね。

4、新興国で「スマホゲームのアーケード版」が登場。

中東あたりでは、最近おもしろい動きはありますか?

佐藤:
最近おもしろいなと思ったのが、「モバイルゲームのアーケード版」が出て来ていること。これは中東アフリカナンバー1の、ゲームセンターのオペレーションをしている会社の方に聞いたのですが。

そこの会社では、例えば「フルーツニンジャ」「キャンディクラッシュ」「フラッピーバードっぽいゲーム」など、スマホで人気が出たゲームコンテンツを、アーケード化したものを輸入しているんですね。

アフリカの後進国では通信も遅くて、決済の環境も整っていないため、アーケードでのゲームビジネスのほうが成立しやすいのだと思います。

もちろん遊んでいるのは、観光客や一部のお金持ちの人たちです。

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「アーケードゲーム」って他の国でも普及しているんですか?

佐藤:
東南アジアでは、最近「メダルゲーム」に似た仕組みの、中国製のアーケードゲームが普及しているようですね。

僕もベトナム・シンガポール・フィリピンあたりにいったとき見かけました。ショッピングモール内のゲーセンだけでなく、なぜかさびれた路地裏に、ぽつんと置いている店があったり。

例えばこの「海王」は、魚を銃で撃ってポイントをためる「デジタルのメダルゲーム」みたいな感じですね。合法的なお店では、ポイントを実物の「ぬいぐるみ」などに交換してくれます。

メダルゲームだと色々と規制があるのですが、デジタルであれば端末だけ置いておけばいいので、「店側の導入のしやすさ」という点で人気が出ているのかもしれません。

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5、中東に「女性起業家」が増えている理由。

中東のほうで流行っている「アプリやサービスのジャンル」ってありますか?

佐藤:
中東発でひとつおもしろいジャンルは「クラウドシッピング」です。これは友だちが外国に旅行にいったときに、ついでに「自分の欲しいもの」を買ってきてもらうサービスです。

基本はFacebookを通じて友だちにお願いします。新興国って家族や友人のつながりで動く「コネ文化」が強いので、こういうサービスは成功しそうです。

あと中東って女性のIT起業家が多いのも特徴ですね。起業時に「共同創業者」として女性が入るケースが38%もあるそうで。

これも中東独自の理由で「女性が外で働くことを認めない」という家庭も多いから。ITなら在宅で起業できるじゃないですか。僕の知人(ヨルダン人女性)も、ファッションアプリをつくっていました。

6、「東ヨーロッパ発のゲーム」がひそかにヒットしてる。

「意外にヒットコンテンツが出てる地域」ってありますか?

佐藤:
最近「東ヨーロッパ発のゲーム」に勢いがあります。アメリカで人気の「My Talking Tom」は、元々スロベニアにあった会社(CEOもスロベニア人)がつくっています。

他にも、ウクライナのFPS「S.T.A.L.K.E.R」、最近だとポーランドの「ウィッチャー3」なども東欧発でヒットしたゲームです。

それで「なぜ東欧発のゲームが盛り上がっているか?」というと、歴史的な背景に関係しています。

もともと東欧では、共産主義の時代(ソ連の時代)に「技術や工学への教育」に予算をつぎ込んでいました。要するに「エンジニアを育てないと、工場も新しい武器もつくれない」からですね。

それで昔にたくさんつくられた「工科大学」の人材が、最近ITやゲームに流れてきている。東欧の工科大学をでた優秀な人が、クリエイティブなゲームをつくりはじめているわけです。

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※ネコを育てる「たまごっち型」のゲーム。アメリカの売上げランキングで100位以内に入っていた時期も。

7、「ナイジェリア映画」は先進国の事情からはじまった。

アフリカのほうで「おもしろいコンテンツや文化」は何かありますか?

佐藤:
ナイジェリアで「ノリウッド映画」という、低予算のアフリカ映画が、ものすごい数つくられているんですね。それで、この文化が実は「先進国の流通事情」から始まっているのはおもしろいですね。

むかし、先進国で「VHS(ビデオ)からCDやDVDに一気に変わった時期」があったじゃないですか。そのときに「VHS」が余ってしまって、先進国からアフリカに流れてきたんです。

そこでナイジェリアの流通業者が「この余ったVHSに、コンテンツをのせて売ってしまおう」ということで、流通が主導で広がっていったのが「ノリウッド映画」の文化らしいんですね。

「ノリウッド映画」は「iROKOtv」などのサイトで有料で見ることができます。僕がみたやつは「黒魔術がでてくるホームドラマ」で、やはりすごく低予算でつくられている感じがしました。

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※「iROKOtv」で多くのナイジェリアを視聴することができる。

8、ゲームや音楽の「違法コピー問題」

新興国にコンテンツが広がる時「これは課題だな」と思うことってありますか?

佐藤:
やっぱり新興国の「海賊版・違法コピー問題」って深刻だと感じます。これはモバイル時代においても解決できていないんです。

よく新興国の町中をあるいていると、「iOS GAME」みたいな怪しい看板のお店がでていて。この手のお店は、インドネシア・フィリピン・タイあたりでは、全部見かけましたね。

そこでは例えば、数百円払って一時間くらいスマホを預けておくと、違法コピーした(本来有料の)アプリを100個くらい入れてくれるらしいです。

どう考えても違法なんですけど、こういうのが多すぎて取り締まれないんですよ。マーケット上には数字が表れていなくても、こういうところでお金を払って遊んでいる人がたくさんいる。

※最近はごく普通の無料アプリ(Facebook,LINE等)を入れてくれるサービスもあるらしい。(通信が有料のため)

アプリでもそういう「闇商売」があるんですね。

佐藤:
そうですね。ただ、こういうビジネスって昔からあるんですよね。音楽がそうでしたから。ネット上で違法ダウンロードした音楽を、CDなどに入れてレストランとかに売っていたわけです。

もうね、そういうお店がたくさんありすぎて、「違法データの卸業者」もいるくらいなんですよ。

あと興味深いのは、そういう「違法コピー」の流れはなかなか止められないので、「違法コンテンツのネットワーク」に上手に乗っかる人も出てきています。

例えば、とあるナイジェリアの音楽家は、「違法コピーCD」をつくっている業者にかけあって、「私の曲をぜひ使って下さい」と、自分の曲を入れてもらっている。

それで、自分の歌をいろんなひとに聞いてもらって、知名度を上げていく。「じゃあ、どうやって稼ぐのか?」というとライブで稼ぐんですよ。

ナイジェリアでは企業などが開くパーティが盛んなので、パーティに「有名ミュージシャン」としてゲストで呼んでもらうことで、それなりに良いギャラをもらうわけですね。

「有料でCDを売る」のではなくて、「無料で音楽を配って、ファンを増やしてライブで稼ぐ」というモデルに切り替える人が出てきているのは、興味深いことですね。

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取材協力:株式会社メディアクリエイト

編集後記

メディアクリエイトさんでは「新興国ゲームビジネスレポート」の発刊などもされていますので、ご興味あればどうぞ。

先日「マサイ族はひとり一台携帯もってる。読み書きはできないので通話のみ。」というのをテレビで見たが、新興国のスマホ事情はなかなか奥が深そう。

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