雑魚キャラ出身の「なめこ」世界の人気者に。4,100万ダウンロード「なめこ栽培キット」シリーズのこれまでと、グッズ展開で知っておくべき5つのコツ。

2016年08月09日 |
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※株式会社ビーワークス ダンボールなめこさん、内海 仁湖さん

「なめこ」が誕生するまで

「なめこ」アプリの状況についておしえてください。

ダンボールなめこ(以下DN):
現在、シリーズ累計で4,100万ダウンロードという状況です。海外のファンも多く、国内70%、海外30%という比率になっています。

ちなみに、先日ちょうど「なめこ」誕生から、5周年を迎えたところです。

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※シリーズ6タイトルで、累計4,100万ダウンロード。

「なめこ」のアプリは何人くらいでつくっているのでしょう。

DN:
1つのアプリを2~3人で開発しています。基本はすべて内製していて、小規模なチームでつくっているイメージですね。

ビーワークスの従業員は、全体で230名ほどいるのですが、ゲーム開発部としては15人しかいないんですよ。

初代の「なめこ栽培キット」はどのように生まれたのでしょう?

DN:
もともとは「おさわり探偵 小沢里奈」というゲーム(iOS移植版)を知ってもらうための、「販促アプリ」として企画したゲームでした。

そもそも「なめこ」というキャラも、主人公である「小沢里奈」の、探偵助手(サブキャラ)だったんですよね。

なので、初代「なめこ栽培キット」をつくっていたとき、アプリ単体で収益化しようなんていうことも、まったく考えていませんでしたね。

販促のつもりでつくったアプリが、本家を超えてしまったということですね。

DN:
そうですね。もちろん「販促アプリ」としても上手くいきましたけど、結果的には「小沢里奈」よりもヒットしてしまう形になって。

あともっと言うと、元々「なめこ」って別のゲームの「雑魚キャラ」としてつくられたキャラだったんですよ。スライム的な立ち位置の。笑

結局、そのゲームは世に出なかったのですけど、その「なめこ」というキャラクターだけが、そこからスピンアウトして、「小沢里奈」の助手に抜擢されることとなりました。

いま振り返ってみると、それが「なめこ」のシンデレラストーリーのはじまりでしたね。

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※社内のグラフィッカーが描いた、初期の「なめこ」のラフデザイン。

初代「なめこ栽培キット」は開発にどれくらいかけたのでしょう?

DN:
開発期間は1ヶ月くらい、人数は3人でつくりました。とにかく「広く遊ばれるゲーム」を短期でつくることを意識していましたね。

ゲームシステムについては、当時のディレクターいわく、「農園ゲームの楽しさ」のエッセンスだけを、ゲームに閉じ込めたものだそうです。

農園ゲームって、食べ物を育てて、収穫していきますよね。そのプロセスを単純化して、誰でも楽しめるゲームにしたようなイメージです。

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「なめこ」はどう広がっていったのか。

初代「なめこ栽培キット」がリリースされたときは、どんな感じだったのでしょう?

DN:
もう、アプリを公開した当初から、「うわ、なんだこれは!」という手応えはありましたね。

とにかくすごい勢いで、クチコミが広まっていて。アプリのダウンロード数も、毎日3〜4万ダウンロードずつ増えていきました。

「クチコミ」というのは、どのように広がっていくんですか。

DN:
友だちにスマホを見せて、「いまスマホでなめこ育ててる」「え?何コレきもい!」という感じで、クチコミされていったのだと思います。

今やこのシステムのゲームって、いろいろ出ていますけど、当時は「ユーザー体験」としても、すごく新鮮だったのかなと。

あと、見た目も名前も「なめこ」なのが覚えやすくて、しかも「アプリストアに一個しかない言葉」だったのも良かったのだと思います。

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これまでシリーズアプリを出してきて「想定外だったこと」って何かありますか?

内海:
なめこアプリの「通信なしであそべる」というところが、実はユーザーさんに評価されていたこと、これがひとつ想定外だったことです。

具体的には、昨年「なめこ栽培キットSeasons HD」というアプリを出したとき、シリーズで初めて起動時に「通信が必要な仕様」にしていたんです。もはや「通信なんて当たり前だろう」と。

ところが、いざリリースしてみると「通信しないと開けないって、どういうこと!?」と、問い合わせがたくさん来てしまいました。

つまり「通信なしであそべること」を、ユーザーさんはなめこアプリの良いところとして見てくれていたんです。それで、急いで「通信なし」の仕様に改修したということがありました。

グッズ展開について

グッズ展開についてお聞きしたいです。いろんな「なめこグッズ」を出されていますが、最初はどのようにはじまっていったのでしょう?

DN:
「グッズ展開」については、メーカーさんから「なめこグッズつくりませんか?」と、声をかけていただき、実現していったような形ですね。

アプリの公開から1ヶ月たった頃から、ちらほらと声が掛かりはじめて、どんどんグッズが増えていったようなイメージです。

※本、ぬいぐるみ、リアルなめこ栽培キット、アニメ、CDなどに展開している。

CDまで出ているんですね。

DN:
はい、「なめこのうた」というCDが出ています。「まいんちゃん」で有名な、福原遥さんが歌ってくれています。

福原さんってネットの人気も高くて、何かやると絶対にネットで話題になるんですよね。「あの、まいんちゃんが何々に挑戦」という風に。

もともと、お母さんと女児に認知度があって、ネットでの人気もあるということで、すごく「なめこ」にも合っているなと思っています。

ちなみに、いまNHKで「なめこ」のアニメも放送しているのですが、主役の「なめこ」の声も福原さんが演じてくれています。

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グッズ展開してわかったコツ

これまでいろんな「グッズ展開」をしてきて、わかったことなど教えていただけますか?

1、在庫を持たず「ライセンス形式」でやるべき。

DN:
まず、アプリをつくっている会社さんが、グッズ展開をするのであれば、在庫をもたずに「ライセンス形式」でやったほうがいいと思います。

なぜなら、グッズをユーザーに届けるための「販路の開拓」がむずかしいからです。「グッズをつくる」まではカンタンなんですけどね。

たとえば「ファンシーショップに置いてもらう」「ゲームセンターに置いてもらう」こうした販路の開拓というのが、予想以上に大変なのです。

2、1国に1社「ライセンスエージェンシー」を置くのもアリ。

DN:
グッズなど「ライセンス展開」の話が増えてきたら、外部の「ライセンスエージェンシー」と提携してしまうのもひとつの方法です。

「なめこ」の場合は、国内に1社、台湾に1社といった形で、信頼できる「ライセンスエージェンシー」を1国に1つずつ置いています。

そうすることで、現地企業とのやりとりなどは、自社で対応する必要がなくなります。日本でやることは「デザインの監修」などだけですね。

3、「メインキャラ」のグッズを増やすほうが売れる。

DN:
いままで「なめこ」のグッズを、たくさん出してきましたけど、結局はどのグッズもメインの「なめこ」が圧倒的に一番売れるんです。

なので、グッズをつくるときには、いろんなキャラをグッズ化するよりも、メインキャラのグッズの種類を増やしたほうが、売上は良くなると思います。

たとえば、帽子をかぶらせたり、ラーメンを食べさせたりして、バリエーションを増やしていくようなイメージでしょうか。

※「なめこ」のキャラは全700種類ほどいる。

4、グッズ展開は「UFOキャッチャー」からはじめる。

DN:
これはおもしろいなと思った話ですが、グッズの展開をしていくときって、まず「ゲーセンのUFOキャッチャー」から入るんだそうです。

なぜかというと、「UFOキャッチャー」のぬいぐるみって、そのキャラのことを知っていなくても、商売として成立しやすいためです。

お店で買うぬいぐるみって「このキャラが好きだから買う」ですけど、UFOキャッチャーって「ゲームやりたいからお金を払う」じゃないですか。

だから「無名に近いキャラ」でも、お店にも置いてもらえやすいし、キャラの人気指針をはかるためにも、まず「ゲーセン」からはじめるらしいですよ。

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5、海外でうまくいっているのは台湾。

ダンボールなめこ:
「なめこ」がグッズ展開も含めて、海外でうまくいっている国は台湾です。本当に台湾という国は、日本に趣向が近いんだなと感じます。

ちなみに、台湾の展開をスタートするとき、すでに偽物のぬいぐるみが「夜道の露店」で大量に売られていたので、びっくりしました。

ラーメンマンみたいな顔の「偽なめこ」も勝手につくられていました。笑

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※台湾では「なめこ列車」まで走った。

海外展開について

「なめこ」のアプリが、海外に広まっていった経緯をおしえてください。

DN:
海外は「マカオ→香港→台湾・シンガポール」という順序で火がつきました。おそらく、中華圏のコミュニティで広がっていったのかなと。

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欧米の国だとこういったテイストだと厳しいと感じますか?

DN:
そうですね。アジア圏に比べるとそう感じます。海外の企業さんに「なめこ」を見せると「赤とかにならないの?(地味だよね)」とよく言われます。

欧米のキノコキャラって「赤と白のキノコ」がテンプレなんですよね。しかも、毒キノコ系のイヤな感じの敵が多いという。笑

そもそも、ここまでキノコの種類を「なめこ、ひらたけ、しいたけ」と答えられるのって、日本人くらいなのかもしれないですね。

アプリのデータを見ていて「国ごとの傾向」が出ているところはありますか?

内海:
GooglePlayで、各国でフィーチャーされたときに、わかったことなのですが、アプリの継続率には、国ごとに傾向が出ていまして。

たとえば、ドイツは日本と似て「我慢強い人」が多いのか、アプリの継続率が高いんですよ。ちゃんと待って、収穫までしてくれるんですね。

一方、ブラジルなどのラテン系の国では、すぐアンインストールされてしまうんです。国民の気質的に、あまり待てないのかもしれません。

そういった数値から「ゲーム性と国民性」にも相性があるのだろうなと感じました。

「なめこ」の人気がでた理由を分析

この5年を振り返ってみて、ここまで「なめこ」というキャラが人気になった理由で、何か感じることってありますか?

内海:
ユーザーさんから、言われることが多いのは「表情」ですかね。「なめこ」の顔って見る人によって、表情がちがって見えるんです。

たとえば、自分が嬉しいときには、笑ってくれているように見えるし、悲しいときには悲しんでくれているように見える

だから、なんていうんですかね、親しみを感じやすいというか、「人の気持ち」に寄り添っているように、見えやすいのかもしれません。

実際に「入院のとき、なめこを連れて行ったら癒された」といった声も、たくさんいただくんですよ。

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※「なめこ」のなんともいえない表情、見る人によって違って見えると。

それはおもしろいですね。

内海:
ちなみに、カップルの方から「なめこがキッカケで、付き合って結婚しました」みたいな、ご報告もかなりいただくんです。

いままで、10組くらいは「結婚のご報告」をいただいています。そうした場合は、結婚式用の「お祝いビデオレター」をつくって、お送りすることもあります。

なるほど、すばらしいですね。

DN:
あと「なめこ」って男女の区別がないんです。だから、男の子のファンも多いし、女の子のファンも多くて。

「男の子向け」みたいに限定しなかったことが、パイが広がった要因のひとつかなと。そういう意味では、アンパンマンに近いですよね。

あと、意外に大事だと思うのが「真似して描きやすい」ことです。子どもでもカンタンに絵が描けるからです。

これからも「なめこ」のアプリは出てくるんでしょうか。

DN:
はい、秋には「なめこの巣」という最新作のリリースも予定しています。今までとは変わったシステムのゲームになっていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

取材協力:株式会社ビーワークス

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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