スタートアップ必見!iQONアプリ滞在時間90秒アップのカギは「コロコロとヤンジャン」-VASILYセミナー後編

2014年03月11日 |
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2/28に東京(恵比寿)で開催された、株式会社VASILY主催のセミナー「iQONグロースハック・セミナー。VASILYが考えるグロースハックの追体験」に参加してきました。

後編である本記事では、グロースハッカーの築山さんのグロースハックの考え方の講演についてまとめています。

前編の記事はこちらからどうぞ。
まずは根性、そして「ユーザー体験の最大化」を考えろ!iQONの投稿数を40倍に急成長させたグロースハック

「iQONにおけるグロースハック」
株式会社VASILYグロースハッカー築山さん

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iQON内でやっているグロースハックを、実際の具体例を元に、みなさんがハラオチするような形で説明をしていきたいと思います。

・UXデザイン、金山が先ほど説明した”ユーザー体験の最適化”
・スピードをあげるためのMVP
2つの観点から説明させていただきます。

僕は1年前にVASILY(iQONの運営会社)に入社したのですが、一番最初にやった大きなグロースハックでは、月の会員登録数を1.5倍にすることに成功しました。

その時の思考の流れを追体験できるように、話をしていきたいと思います。

事例1:”ユーザー体験の最適化”で会員登録数1.5倍

まず自分は最初、iQONの会員登録フォームみて「どこを改善しようか?」と考えたときに、他社サービスの良いところを真似ようと思いました。

なので海外のECサイト「FANCY(ファンシー)」の事例(※下記の画像右)をみました。アメリカなのでSNSログインがあって、しかもかっこいい。

じゃあiQON(※下記の画像左)を見てましょう、女の子の好きそうなアイテムが散りばめられていて、(日本ではアメリカほど女性がSNSを必ずしも好きではないので)当初はSNSに加えてメールアドレスでも会員登録ができるハイブリッド型になっていた。

vasilygh02_slide1

ただ、これは”ユーザー体験(UX)”ではなくてUIでしか考えていないです。

なので”ユーザー体験”として考えてみました。iQONに会員登録をするためには、まずアプリをダウンロードするためにApp Storeで見つけますよね。DLしてアプリを立ち上げてサービスにいくという流れです。

この流れを”ユーザー体験”にそって、具体的にユーザーの気持ちになって考えてみました、

この春から大学生になるアミちゃん、多感な時期ということもあり、今まで高校で来ていた服装でダサくないか心配です。

今の時代なのでLINEとかLINEポコパンは当たり前につかっていてアプリが大好き、ただ無料ランキングは基本ゲーム系のアプリばかりなので、そこでは見つけられない。

そこで「ファッション」で検索をする。iQONでは、ASO(アプリストアでの検索最適化)をきっちりやっているので、「ファッション」で検索するとiQONが1位にでてきます。

「ピンクでおしゃれな感じのアプリだな、ダウンロードしてみよう」そして、アプリを起動するとこの登録フォームがでてくると。

ここでメールアドレスで登録するでしょうか?普段の連絡手段ってLINEやSNSですし、個人のキャリアのメールアドレスなんて覚えていない。メアドで登録するかというとしないはずです。

じゃあ「SNSで登録できるじゃん」となるか?高校生といったら「SNSは気をつけましょう」という教育をする時代です。
「Facebookは個人情報が抜かれそうで怖いし…やめた!」とSNS登録が嫌な人も絶対いる。

そしたら「せっかくダウンロード数は稼いだけれど登録はやめる」というユーザー体験になります。そしてさらに、これは実はデータとしても数字上に出ていました。

なのでユーザー体験(UX)にそって、以下のようにデザインを変えました。

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(※アプリ初回起動時の会員登録は不要にし、「はじめる」をおすとすぐに始められるように変更)

アプリをダウンロードしたあと、ウォークスルーで横にスライドしていくと、「コーディネートも見れてセールの通知もくるのか、これは便利そうだぞ」と。そして「はじめる」のボタンをただ押せば良いと。

「登録する」でも「アカウントを作る」でもない、簡単にただ「はじめる」を押すとコーディネートが立ち上がるようにした。

コーディネートがみれるアプリなんだ⇒立ち上げたらやっぱそうなんだ⇒はじめたらコーディネートが見れた。当たり前のユーザーが期待する体験を一貫して行ったんです。

このように“ユーザー体験”(UX)に沿って変えたことによって月の会員登録が1.5倍になりました。UIを変えるではなくてUX(ユーザー体験)を変えるということを意識して、VASILYでは企画をつくってグロースハックさせています。

事例2:年齢最適化で滞在時間と継続率アップ

女性サービスの改善を男性にも理解させる

ふたつめの事例です、MVP(ミニマム・バリュアブル・プロダクト)と呼ばれるもので、最小単位で価値のあるプロダクトをだしていくという考え方です。

MVPに入る前にですね、実はiQONでは、リテンション(ユーザーをアクティブな状態で維持する)に問題がありました。

例えると、ザルに水を流すと水はぜんぶ流れてしまって溜まらないですよね。iQONはまだ網の目が粗いザルの状態でした。

ザルの目がつまっていたらユーザーが登録すれば登録するほど増えていくのですが、登録後にやめてしまっているユーザーが多くいる状況だったのです。

そのようなデータが見えていたので、次にグロースハックすべきはリテンションだと特定していました。じゃあユーザー体験から考えてどのように改善したのか。

iQONでは先ほどご覧いただいたように、ユーザーがコーディネートをみる時にライクが一定数以上の、質がいいコーディネートを優先的に見せている、おしゃれでかわいいコーディネートが優先して目に入ってきます。

ですが、こう考えました。

実際リアルで考えた時に、30歳だったら30歳のファッション雑誌を読むし17歳が同じものは読まない。なので「年齢別にコーディネートを分けたほうが良いんじゃないか」と、まずユーザー体験として想像したとこからはじまります。

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次にグロースチームに、この熱量を伝えました。

ただうちのエンジニアって女性向けサービスなのに全員男なので、BAILA(バイラ)がどう、Seventeen(セブンティーン)がどうと説明してもなかなかピンとこない。

そこで、男でもわかる事例にしようとおもって、こんなのを社内プレゼンで用意しました。

30歳だったらコロコロとかボンボン見ないよね、30歳だったらヤンジャンとか見るよね、と。

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いまのiQONの状態というのは、雑誌を読んでいるとヤンジャンの「キングダム」の次になぜか「ドラえもん」がはじまって、その次に「テラフォーマーズ」が始まったと思ったら、「おばけのQ太郎」がはじまる、みたいなそんな状態なんだと。

この例えで説明した瞬間に、エンジニアの男たちも想像しだした、

「それはちょっとやばいね」
「逆にそれを直せば伸びるんじゃない、おれそしたら嬉しいもん」
「たしかにそれ改善したら、ユーザー体験が絶対よくなる」 と。

これはユーザー体験を大きくするために必要なことなんだということを、グロースチームのエンジニアとデザイナーと想いを共有しました。

結果的には、30歳のユーザーにはかっこいい雰囲気のコーディネートをだしたり、17歳にはふわっとしたかわいいコーディネートをだしたり、

ユーザーの年齢によってコーディネートを分けたことによって、新規で登録したユーザーの翌週継続率が5-10%アップと大きく改善することに成功した。

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MVP-最速で価値ある改善を行おう。

本章の主題であるMVP(最小単位で価値あるプロダクトをだす)に沿って話をすすめます。まず先ほどのような「年齢で分ける」ということを、最速で価値ある状態でやろうと思いました。

iQONってコーディネートがあったりブランドがあったりと、いろいろあるので、「全部年齢対応してよ」という依頼の仕方をすると2-3週間かかってしまうんですよ。2-3週間というのはグロースハックのスピードとしては遅いです。

なので、まずは一番見られている「人気コーディネート」の一部分で年齢別で対応してもらうようにお願いしました。

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そして、その週に実装してリリースしてみたところ、結果として滞在時間が3秒伸びて「やっぱ、これもしかして良いんじゃね?」という仮説が立ちました。

ただデータだけじゃなくて実際にみんなで触ってみました。30歳の女の子にもさわってもらったところ「あ、これいつもと違うね(いつもより良いね)」となった。

やっぱり明らかに違ったんですよ。ここでチームとして「いける!」と強くおもえたのが重要でした。

そして一部で成功したので、今度は全体に適用してオプティマイズしたところ、結果として滞在時間が20秒上昇しました。

この段階でも確実にグロースした、という話ですが、もっとグロースさせたいと考えて、今度はルールを変えました。

「年齢を入力してコーディネートが年齢ごとに変わったら滞在時間が上がる」ということが事実として分かったので、

今度は最初から年齢だけ必須で入力してもらうように変えてしまった。(※これ以前は年齢は後から設定する形だった)今まではiQONは「はじめる」ボタンを押したら使えたけど、年齢だけは入力しないと使えませんというルールに変えたということです。

そしたら結果としては、滞在時間が90秒伸びて、継続率も5-10%上昇しました。

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まとめ

まとめると、まずはユーザー体験をより良く出来る確信を得たら、その後はスピード重視で最小でリリースしてみる。

そして自身とチームのユーザー体験に確信とともに、データ上でも「ユーザーの動きが良くなる兆し」をウォッチできたらすぐ最適化を進める。

最適化して「数字が伸びて良かったね」じゃなくて、さらに「だったらルールを変えてスケールさせる方法はないのか?」を考えるという流れです。

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参加者からの質問コーナー

Q、「ユーザーの動きが良くなる兆し」はどうやって見つける?

築山:
実際、ユーザーの兆しをウォッチするのはなかなか難しいですよね、

iQONでいうと、コーデを公開する、コーデをライクする、アイテムやブランドをライクする、スタイリストをフォローなど、やはりいろんなデータがありますし。

これをとりあえず全部ばーっと出してみて、施策をうってリリースした後どこが変わるかなあってウォッチしてみて、「あれ、滞在時間が3秒だけ上がっているぞ」という感じで見つけています。

あとは自分たちの体験として、年齢が変わったことによってコーディネートをみるのが嬉しく楽しくなった、というようなことがあれば、進めていこうとなります。

Q、施策をするときは、直感かそれともデータをみて入っているのか?

築山:
僕の場合はデータです、なぜかというと僕が男だからです。iQONは女性向けサービスなので、そもそも直感ではどうこう出来ない。データを並べてみて「こうしたら良いんじゃないか?」と仮説をたてて当てにいきます。

ただ、定性的なアプローチもしなきゃいけないです。VASILYでは、実はiQONのユーザーにアルバイトとかインターンとして参加してもらっています。

その子たちにデータ上ででてきた仮説を元に、「こんな改善を考えているんだけど、実際どうおもう?」って聞いて、「私それ嫌だったんですよ」「このメールアドレス入力嫌だったんですよね」と意見を聞いて、やっぱそうなんだなって納得しながら進めています。

iQONでは定量と定性で両方やっています。

Q、iQONをはじめた一番最初の0のとき、お金もなくて最初のユーザー獲得はどうやったのか?

金山:
ぼくが最初のユーザー100人を集めたのはすごい原始的でしたよ。ネットでWEBサーフィンして、かわいいブログを書いている女の子、おしゃれなTumblr(ミニブログのようなサービス)をやっている子に、メール攻撃をしたり、コメントを書きまくりました。

『こんにちは、ネットしてたらたまたま拝見しました、すごいおしゃれなブログですね、実はわたしたちVASILYはiQONというこんなサービスつくったんですけど、良かったら使ってみてくれませんか?』

みたいな文章を100人くらいに送って、そのうちの何人かが使いはじめてくれた…って言うのが最初のスタートです、なので、ぼくアメーバからアカウントBANくらってます、笑

あとはもちろん知り合いとか友だちには全員に言いましたし、わりと地道なことです。今でも出来ますよね。

つくったサービスを使ってくれそうなところまで足で稼ぐ、って言うのが最初で。ただそれで1000人までにはならなかったんですよ。

その次も戦略は一緒で、「使ってくれそうな人がたくさんいるところに金を使わずにいく」っていう戦略。

何をやったかというと、人気のファッションブランドさんに持ち込みをして、「バーターでいいのでコンテンツを一緒につくってくれ」ってお願いした。(※バーターとは物々交換的なこと。iQON側で宣伝コンテンツを無料提供するから、ブランド側でもそのコンテンツを盛り上げてくれという交渉)

それはコーディネートコンテストだったわけなんですが、iQON内でブランドのアイテムをつかったコーディネートの優劣を競い合うコンテスト企画をやってブランドの露出を増やすかわりに、ブランド側でもそのコンテンツを宣伝してもらう。

最初に取り組んだブランドがとてもすばらしいブランドさんだったので「どうやら今ならiQONというサービスでバーターで宣伝できるようだぞ」という感じで業界内にクチコミで広がっていって、最初は何回かそれをバーターとしてやっていきました。

そして今度は、そのバーターでつくった事例・実績をもとに、今度は有料でタイアップ広告の営業をしにいって、という感じで段階を踏んで広げていきました。

取材協力:株式会社VASILY

おわりに-編集後記-

非常に参考になるお話をありがとうございました。普段サービスをつかっていると「クソ使いづらいな・・・何でこんな風にしてるんだろ?」ということがありますが、案外自分のサービスだと気付けない、みたいなことってありますよね。

年齢最適化の施策とか言われてみると当たり前ですけど、ユーザーの気持ちになって考えてみないと、なかなか気づけないことだと思います。

コロコロとヤンジャンの話も、たしかにたったこれだけでエンジニアやデザイナーの理解が深まり、生産性も上がると考えるとバカに出来ません。色々なところで応用が効きそうです。

今回はセミナーのレポートをお送りしましたが、実は、VASILYさんでは普段から、グロースハックブログを運営されていて、クオリティの高い情報発信をされています、興味ある方はご覧になってみてください。

前編の記事はこちら。
まずは根性、そして「ユーザー体験の最大化」を考えろ!iQONの投稿数を40倍に急成長させたグロースハック

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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