サイバーエージェントさんの異色の川柳アプリ「ごーしちご」についてプロデューサーの山岸さんと、広報の長谷川さんにお話を聞いてきました。
※株式会社サイバーエージェント「ごーしちご」プロデューサー山岸杏子さん(熱弁中)
「ごーしちご」、どのようにして、生まれたか。
「ごーしちご」のアプリの企画はどのようにできたのでしょうか。
山岸:
わたしが1年ぐらい前に、FacebookやTwitterに575で投稿していたら、普段はコメントしてくれない人が、575でリアクションしてくれたんですね。
これが実際のFacebookの投稿なんですけど、なぜかすごい楽しくなってコミュニケーションが止まらなくなってしまった。
それで「575(川柳)で会話するのって、おもしろいじゃないか」と思って、自分でプログラムを書いて、まず個人的にWEBサービスをつくってみたんです。
そして、その頃ちょうど社内(サイバーエージェント)で「事業プランコンテスト」があったので、「私これやりたいんです」と企画を出したところ、正式に会社の事業としてGOサインが出ました。
事業として結果がまったく読めないサービスだと思うのですが、何が「GOサイン」を出させたんですか?
山岸:
私が半年以上前からずーっと「575は熱い!」って言い続けていて、事業プランコンテストのプレゼンも全部575でやったんです。
それでたぶん「なんかあいつすごい575に情熱があるぞ、そんなに好きなんだったら・・・」って藤田社長が思ってくれたからだとおもいます。
長谷川:
サイバーエージェントでは「この人がこのサービスをやったら成功するんじゃないか」と思わせる情熱もGOサインのきっかけの1つになります。
逆にいうと、例えば結婚してる社員が「出会い系」のサービスをやろうとしても、「お前ほんとにそれ使うのか!?」って言われて、GOサインが出なかったりする。
どの段階までいくと、藤田社長が判断しているのでしょうか?
山岸:
まず書類審査があって、それを通過すると決勝プレゼンがあるのですが、決勝プレゼンは藤田が全部1つ1つ見てコメントして、最終的に優勝が決まるような感じです。
ちなみに、事業化する前の決勝プレゼンの段階では、アプリなどのモックアップはつくらずに、紙でプレゼンをしています。
※こうしてできた川柳アプリ「ごーしちご」。「ボケて」みたいにおもしろい投稿をするというよりは、「気軽に思ったことを575で吐き出す」っていうコンセプトみたい。
「ごーしちご」、3つのボツネタ、ふりかえる。
その時の「ごーしちご」のプレゼン資料ってまだ残っていますか?
山岸:
はい、あります。これがそうなんですけど、実はサービス時に「ボツ」になってしまったところもいくつかあったりします。
何がボツになったのか知りたいです。
山岸:
はい、企画時に考えていたけど実装されなかった「ボツネタ」が3つありまして。
■ボツネタ1、575 最初はみんな 覆面で。
まずひとつ目が「最初は覆面で投稿する」というのを考えていたんです。
つまり最初に投稿された時点では「誰が投稿しているのか分からない状態」になっていて、「いとおかし」が押されてくるうちに、ユーザー名が表示される仕組み。
これは、平安時代の「すだれの向こう側で誰かが一句詠んでいる」みたいな雰囲気をだしたかったのです。
でも「その575を誰が書いたか?」はユーザーにとってどうでもいいじゃないですか、知り合いでもないですし。なのでボツになりました。
■ボツネタ2、「いとおかし」 乱発できない 体力制
山岸:
二つ目が「いとおかし」を乱発できないようにしようとおもったんです。それはひとつひとつの「いとおかし」に価値を持たせたかったから。
ソーシャルゲームみたいに「1日20回まで」とか「1時間で1つゲージが復活する」とか体力制にしようとしたのですけど、これも外しました。
やっぱりゲームと違ってコミュニティサービスは、やりたいと思った時にひたすら時間をかけてやりたいじゃないですか、だからボツにしました。サービスリリース時は「いとおかしを5点満点にする」という形で表現しました。
■ボツネタ3、夜だけの エロ75で 「いとエロし」
山岸:
最後の三つ目が、テレビの深夜番組みたいに、夜だけちょっとエロいことをつぶやけるコーナーをつくろうとおもった。その時は「いとおかし」ではなくて「いとエロし」というボタンに変化する。
575ってすごい不思議で、卑猥なことを言おうとしてもワードが限定されているからエグい感じにはならなくて、クスッとするくらいに収まるんです。これも結局ボツにしました。笑
こういうチャレンジングなサービスに対して、サイバーエージェントさんでは例えば「半年で50万ユーザーいかなかったら撤退」のような撤退条件も決めているんですか?
山岸:
はい、一応「撤退ルール」はサービスごとに決めていますね。たとえば「3か月でPVどれぐらい」「半年でこれぐらい」って、いくつか足切りのポイントがあって、そこに到達できなかったら存続を検討しましょうという感じです。
575の場合はサービスをスタートして間もないので、一旦は「会員数と投稿数」をサービスのKPI(重要指数)として置いているような感じですね。
リリース後、企業の引きが、強かった。
実際、サービスを出してみて世のリアクションはどうでしたか?
長谷川:
実は575は「リリースした時の外部の反応」が一番多いアプリでしたね、「サイバーエージェントが川柳!?」とザワついていたというか・・・。
例えば、女性誌さんがすごい興味を持ってくれたり、メーカーさんから「川柳コンテストを一緒に出来ませんか?」のような声が結構かかりました。
よく「お~いお茶 俳句川柳」のような企画って見かけるじゃないですか、ところが一企業さんで「川柳コンテスト」をやっても、あまり川柳が集まらないらしいんです。
「川柳を投稿するユーザーが集まる」というところに魅力を感じて、声をかけてくれる会社さんは多かったです。
山岸:
それもあって、マネタイズのひとつとしても「川柳コンテスト」とのタイアップ広告メニューというのは考えていますね。
ああいう「お~いお茶 俳句川柳」みたいなのって一体誰が応募しているんですかね?
長谷川:
やっぱり世の中には「川柳好き」の人がいるみたいですよ。
「ごーしちご」のアプリも「川柳を投稿してすぐリアクションがもらえるのは革命的だ」って、そうした川柳好きの人たちに言ってもらえたりします。
というのも「サラリーマンの川柳コンテスト」とかって選考期間含めて、結果がでるまでに数ヶ月かかる。「すぐリアクションがわかる」というのは、実は新しい体験のようです。
山岸:
基本的に「川柳コンテスト」って、入賞しなければ誰にも見られることなく終了ですからね、そこは川柳好きにとってはモチベーションになるんでしょうね。
今リリース1ヶ月くらいですが、数字的にはどうでしょうか?
山岸:
575はダウンロード数は数万レベルで、投稿数でいうと累計80,000投稿(一日2,000投稿)されています。1投稿あたりの「いとおかし」の平均は20くらいです。
「ちょっと思いついたことが、575のリズムにはまったときの気持ちよさ」がこのサービスの楽しい部分。「最近、Twitterまで575口調になっちゃった」というコメントを見かけたりもします。
中には、1人のユーザーで100投稿くらいして、累計「いとおかし」が10,000を超えている方もいますね。
ただ、まだ認知度が圧倒的に低いのでこれからですね・・・まずは知名度を上げていくところを頑張っていきたいと思っています。
取材協力:株式会社サイバーエージェント
編集後記
サービスが出来るまでのボツネタとか、紆余曲折の話っておもしろいなと思いました。今後「ごーしちご」がどうなっていくのか、良くも悪くも想像がつかない感じがいいですね。
ちょっと調べてみたら、「俳句甲子園」なんてあるんですね。あと俳句の専門誌「俳句」ってKADOKAWAさんから出ている・・・。意外に俳句・川柳人口って多いのか?