アプリの「シェアボタン」デザイン変更でシェア数20〜30倍に。カジュアルゲーム「Glass 2 Glass」世界250万ダウンロードに貢献した3つの施策。

2016年10月31日 |
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世界250万ダウンロードのカジュアルゲーム「Glass 2 Glass」を取材しました。

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※Kick9 横山宗幸さん。日本のゲーム会社(セガ)で働いたのち、中国のゲーム会社で働く。

「Glass 2 Glass」についておしえてください。

誰でもできる「コップに飲み物を注ぐ」というゲームアプリです。2015年4月にリリースして、世界で250万ダウンロードされています。

このゲームは、世界でヒットした「Stick Hero」というゲームの、「人間の目測は意外と曖昧だ」というおもしろさを、コップの面積に応用してつくりました。

ユーザーが多い主な国は、アメリカ(11%)、ロシア(9%)、ドイツ(7%)などです。iOSとAndroidの比率は「25%:75%」です。

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世界中でダウンロードされているのはすごいですね。

うーん、いまでさえそうなのですが、最初のほうはひどかったですよ。

実はリリース1年くらいは、たった14万ダウンロードしかされずに、ほんとに泣かず飛ばずの「ゾンビアプリ」のような状態でしたから。

あと、このゲームをつくった当時の会社も、資金難でつぶれてしまって、ゲームが譲渡されたという背景もあったり。なので、結果がでてきたのも、ほんとうに最近なんです。

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※つくった当時のベンチャーは、2015年7月につぶれてしまう。その後「kick9」にゲームが譲渡された(横山さんも一緒に移籍)

1年たってから、いきなり「ダウンロード数」が伸びはじめたのは、一体何が起きたのでしょう?

正直にいうと「どこから火がついたのか」は、いまいちよくわかっていなくて。

ただ、取り組んでいたこととしては「13言語へのローカライズ」「ソーシャルボタンの改善」「メディアへのメール告知」の3つでした。

なので「やれることを徹底的にやった」としか言えなくて申し訳ないのですが、あきらめずにやり続けたのが良かったのだと解釈しています。

アプリのヒットのためにやった3つの施策

1、13ヶ国語にローカライズした(翻訳)

まず、アプリの中身とストアの説明文を、13ヶ国語に翻訳してみたら、これが意外と功を奏しました。

とくに「海外メディアで紹介される頻度」がすごく増えましたね。やはり現地語かどうかで、ファーストインプレッションが、全然ちがってくるのかなと。

あと、8月に米国のランキングで盛り上がったあと、世界30〜40カ国に飛び火していったのも、多言語に対応していたからだと感じます。

多言語翻訳というとハードルが高そうですが、クラウド翻訳の「gengo」などをつかえば、手間もコストもそれほどかからないのではないかなと思います。

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※「Glass 2 Glass」の翻訳コストは、文字も少ないため1言語2,000円くらいだったそう。

2、ソーシャル「シェアボタン」を改善した(拡散)

スコア画面の「シェアボタン」のデザインを変えたところ、シェアされる確率が大きく変わりました。

当初、シェアボタンの色を「モノトーン」にしていたのですが、これを「オリジナルの色」に変えてみたところ、シェア数が20〜30倍に跳ね上がったんです。

もともと「デザインの統一感」にこだわって、モノトーンにしていたのですが、そんなことよりも「わかりやすいボタン」にした方がよかった。

シェアに対して「インセンティブ(コインがもらえる)」をつけたときも効果はありましたが、デザインの影響のほうがずっと大きかったです。

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※FacebookとTwitterのシェア比率は、だいたい半々くらいだそう。

3、YouTuberやメディアにメールで告知(露出)

アプリを知ってもらうために、世界中にメールを送りまくりました。YouTuberにも送るし、メディアにも送るし、知り合いにも送って。

とくに、広告単価の高そうな国を狙って、基準としては「有名そうかどうか」「ファンや視聴者が多そうか」「ゲームを紹介してくれそうか」などを見るようにしました。

すごく泥臭い作業ですが、やはり「数を打っていくと結果がでる」というか、何かしら反応がありました。

とくに大きかったのは、ロシアの有名YouTuberさんに紹介してもらえて、ロシアのAppStoreで総合11位まで上昇できたことです。

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※メールは英語で書いて、アプリの紹介資料(上図PDF)と、動画(YouTube)を一緒に送っている。

結果的に「世界中であそばれるゲーム」になったわけですが、つくるときに意識したことはありますか?

ひとつは「世界中の人に理解される」よう意識しました。たとえば「自販機」は、国によって見た目がちがうので、抽象的なデザインにしたり。

もうひとつは「操作がわからない」をなくそうと意識しました。知らない人にゲームをあそんでもらって、詰まってしまったところは、きちんと解消しました。

とくに印象的だったのは、ユーザーにとって「長押し」という操作が、すごくわかりづらかったことです。飲み物を注ぐときの「長押し」で詰まる人がとても多かった。

その部分については、ユーザーがちょっとでも画面にタップしたとき、言葉で「長押ししてください」と出すようにしたら、うまく解決することができました。

正しくない操作をしたときには、「それは正しくないよ」と伝えてあげると、みんな理解してくれました。

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「アプリの収益」についてはどうでしょうか。

正直なところ、収益はそれほど出ていません。比率としては「広告 95%:課金 5%」で、1ダウンロードあたりの収益性でいうと、アメリカ 9円、ドイツ 3.5円、ロシア 1.2円です。

これは何より「継続率の低さ」が原因なのかなと。もっと「継続率」を上げられていたら、収益性もよくなったのではないかと思っています。

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中国のスマホゲーム市場について

中国ではたらいている横山さんからみて、「中国のアプリ市場」で特徴だと感じることはなんですか?

ひとつは「プラットフォーム」の支配が強いこと。とくにテンセントの「Wechat」の影響力が大きい。

テンセントのレベニューシェア条件って、基本は「70%:30%」と強気なのですが、それでも頼らないといけないくらい、プラットフォームとしては強力です。

もうひとつは、最近「課金の単価」が上がってきてることです。中国の人たちもスマホゲームに、だんだんお金を払うようになってきています。

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※トップ30モバイルゲームにおける「月の課金額」の推移。この2年で中国が10倍も伸びている。

中国人の「廃課金者」というのは、やはり日本よりもスケールが大きいですか?

そうだと思います。ひとむかし前の、オンラインゲームの時代は「お金持ちを100人つかまえてくれば、そのゲームはもう成功する」とまで、言われていましたから。

金額でいうと、1人あたり1,000万円〜2,000万円とか、払ってくれるわけです。なので、その100人に対しては、接待のように手厚くサービスをしたりもするんですね。

たとえば「この人、最近ログインしてないな」と思ったら、サポートが御用聞きの電話をかけるんです。

「最近あそばれていないようですけど、いかがなさいましたか?」と聞いて、「いや、仲間がみんなやめちゃってね」みたいにいうと、「では、こちらで仲間をご用意します」とかまでやる。

ただ、最近はそういう運営をしている会社は、かなり少なくなっているとは思いますけどね。

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「日本のゲームが中国に進出する」という意味では、チャンスを感じますか?

正直カジュアルゲーム(広告モデルのゲーム)については、かなり難易度が高いだろうなと考えています。

日本の「ねこあつめ」「昭和駄菓子屋物語」などは、中国でも人気があるのですが、見合った収益があがっているかどうかは別問題、という気がします。

いまは、中国の国内の競争もはげしくて、どんどん会社が死んできているような状況です。

日本のゲームが中国に進出するときに「押さえておいたほうがいい」と感じることはありますか?

中国人は「ゲーム内で強くなること」にすごくお金を払います。なぜなら「俺はお前より優れている」ということをゲームで証明したいから。

だからこそ、中国ではプレイヤー同士の「対戦/競争」の文化が、めちゃくちゃ盛んです。そこは押さえておいたほうが良いかなと思います。

なので、もう見た瞬間に「こいつは課金ユーザーだ」と、わかるようにもなっていますね。全身がめちゃくちゃ金色にピカピカしていたり。

なるほど。

そういう意味では、「何でもお金で解決できる」のが、中国式のゲームでは当たり前だと感じます。

日本のゲームだと、最初はレアカードが「コスト制限」でつかえなかったりしますけど、中国人的にはそんなものはお金で解決してしまいたい。

なので、中国では「クラクラ」みたいに、お金を払いたいときに払い続けることで、どこまでも強くなれるシステムがベストなんでしょうね。

そういう背景もあってか、中国に進出してきた「パズドラ」にも、破片を集めてモンスターを手に入れる、システムが実装されていました。

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日本と中国、両方のゲーム業界ではたらいてみて、感じたことがあればおしえてください。

中国ではたらいていると、改めて「日本人って職人なんだな」と思いますね。儲かるか儲からないよりも、それを「本当によくしよう」という意識がすごく高い。

一方で、中国人っていわば「商人」なんです。「ものづくり」はすこし雑ですけど、「どれくらい売上があがるか」という意識が高いというか。

あとこれも感覚的ですが、日本のほうが「企画・デザイン」のレベルが高く、中国のほうが「サーバーエンジニア」のレベルが高いと感じます。

中国って「ネット環境」が悪いし、さらに「端末スペック」まで低いので、それをカバーするサーバー技術がおどろくほど発達しているんです。

そういう国による環境のちがいが、人のスキルなどにも影響するのは、おもしろいことだなと思います。

取材協力:Kick9

Glass 2 Glass(AppStore/GooglePlay
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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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