「カジュアルゲーだけど課金売上が30%」イグニスのブロック崩しアプリ「breaker」つくったのは医療業界からきた男、モチーフは「ドラクエ1」

2015年09月03日 |
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今回は「breaker」が好調なイグニスさんに伺いました。2014年7月にマザーズに上場し、現在は社員110名のスマホアプリ専業の会社です。

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※株式会社イグニス 「breaker」プロデューサー 川口功さん(左) カジュアルゲーム事業の責任者 佐藤潤さん(右)

「breaker」について教えてください。

川口:
「breaker」は30秒で完結する「ブロック崩し」ゲームアプリです。ダウンロード数については、現在60万ダウンロード(iOS 50万:Android 10万)を突破したところです。

開発期間は3〜4ヶ月で、僕(エンジニア兼プロデューサー)とデザイナーの2名でつくりました。

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川口さんはイグニスに入って長いんですか?

川口:
イグニスにきて1年ちょっとですね。前職は医療業界にいまして、iPadの電子カルテを「医者の先生」にペコペコしながら売っていました。

そこから、転職エージェントに「スマホのゲームがつくりたい」といって紹介されたのがイグニスでした。

「breaker」はどのように生まれたのでしょう?

川口:
まず小さい頃から「ブロック崩し」をずっとつくりたかったんですね。「ブロック崩し」って、アクションとパズルが気持ちよく融合していて、不確定要素のバランスも良いゲームです。

あと「誰でも理解できる」というのも良いなと。「ブロック崩し」って昔からありますよね。最初に広く知れ渡ったビデオゲームも、「PONG」という卓球みたいに球を打ち返すゲームでした。

ただ、最初に企画をだしたときは、会議で「ダメ出し」されましたね。「ブロック崩しは古いし、引きも弱い」って。実際グーグルでの「ブロック崩し」の検索回数も、年々減ってきています。

それで、普通に企画が「ボツ」になりかけていました。たしかに「普通につくってもつまらない」という指摘は、その通りだなと。

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そこからどうしたんですか?

川口:
そこから「あるアイディア」を、社内のプロデューサーにもらったのがきっかけで、プロジエクトが進められることになりました。

そのアイディアというのが、「世界を大きくしていったら良いんじゃない?」だったんです。それで「どんどん世界が広がっていくブロック崩し」というゲームが生まれました。

そして、実際にプロトタイプをつくってみたところ、「おもしろいかもしれないね」と社内で企画が通りました。

breakerhd

その時にはもう、ほぼ今の「breaker」みたいなゲームシステムだったんですか?

川口:
いえ、当初は「アイテムを取ると、ボールがパワーアップしていく」というゲームでした。それをもう少し「レベルアップ感」が強くでるように、設計しなおしました。

なぜなら、日本人は「コツコツとレベル上げする」のが好きだからですね。つまり、ゲームの設計を「アイテムを回収して強くなる」から「レベルを少しずつ上げて強くなる」に変えました。

あと開発のときには「ゲームバランス」にはこだわりました。特にスマホゲームって「最初の数分」がとても大事なので、ひたすら何十回もやり直して、バランス調整をしました。
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ゲーム設計で「意識したところ」はありますか?

川口:
このゲームからは「終わり」を失くしました。「1周目のクリア」までたどり着くと、そこからは背景がループして、無限に遊べるようになっています。

僕はドラクエが大好きなのですが、「ドラクエ」ってラスボスを倒しちゃうと、やることなくなって寂しいじゃないですか。それが嫌でゲームに「終わり」をつくりたくないんですね。

なるほど。

川口:
あと「breaker」は「ドラクエ1」をモチーフにしているところがあって。

「ドラクエ1」って、ちょっとずつ「行動範囲」が広がっていくんです。だけど、王様のいる「城」に戻らないとセーブできないので、遠出しても「城」まで帰ってこなきゃいけない。

すると「最初のほうに苦戦したモンスター」とも、何度も遭遇するわけですが、レベルが上がっているとあっさり倒せる。これって「自分の成長」が感じられて気持ちいいんですよ。

その感覚を「ブロック崩しでも再現できないかな」と考えて、「breaker」に取り入れたのが「ボスブロック」でした。

これは「ゲージをゼロにすると破壊できる」という中ボスのようなブロックで、ポイントポイントで出現します。これもレベルが上がってくると、毎回あっさり倒せるようになっています。

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ユーザー数ってどのように伸びていったんですか?

川口:
基本的には「ストアランキングからの流入」ですね。あとうまくいったのは「ソーシャルでシェア」されたときに「Vine」の動画をくっつけたことです。

「Vine」はゲーム動画をツイッターで拡散するのに、すごく適していると思います。理由としては「6秒でループ再生される」と「タイムライン上で再生される」の2つです。

リリース後に「ユーザーデータ」を見ていて、何か気づいたことはありますか?

川口:
驚いたのは「継続率」がすごく高かったことです。「breaker」では「1日後の継続率」が70%くらい、「7日後の継続率」も25%ほど出ていまして。これはイグニスのカジュアルゲームの中でも高いほうです。

あと、ユーザーの遊び方を見ていると「通勤中などに少しずつ遊ぶ人」と「夜中に一気に3時間遊ぶ人」みたいな感じで、2タイプに分かれています。

データを見る限りでは、4〜5時間プレイしてくれる人が多くて、全ユーザーの約20%が「1周目のクリア」までは到達してくれているようです。

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※おおよその数値をグラフ化したもの。

「マネタイズ」についてはどうでしょう?

佐藤:
マネタイズは「課金」と「広告」を両方入れていて。割合で言うと「課金30%、動画広告40%、静止画広告(バナー広告・インタースティシャル広告など)30%」というバランスです。

特にうまく機能したのが「動画広告」でした。当初は収益性が低くて「動画広告は難しいね」と話していたのですが、うまく克服することができました。

ポイントは「アドネットワークを複数入れる」でした。1〜2社だけだと「動画広告の在庫」がまだ足りなくて、ユーザーに「同じ動画広告」ばかりが流れてしまうんですね。

それで3〜4社併用してつかった※ことで、収益性(CPM)を5〜6倍に改善することができました。

※「Adcolony」「Unity Ads」「Vungle」「Chartboost」の4社を使っているとのこと。

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「動画広告」で他に工夫したことはありますか?

川口:
「動画広告の出し方」については、すごく試行錯誤しました。

当初は「ポップアップ」みたいな感じで、何回かに1回「動画広告を見ますか?」と出そうとしていたのですが、それだと広告っぽくて「強制的」な感じがしてしまう。

そこから、最終的には「プレゼントボタン」を出すような形にしました。説明しなくても理解できて、ストレスを感じさせないデザインを目指していました。

「プレゼントボタン」が出るときのアニメーション速度も、0.1秒単位で調整しましたね。

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カジュアルゲームで「課金収益が30%」というのもスゴイですね。

川口:
そうですね「課金」もすごく好調でした。イグニスのカジュアルゲームでの「ベスト記録(1日の売上額)」がでたくらいです。

課金については、ゲームをはじめて1〜2時間のところで「難易度の山」をつくっています。つまり「ボスがなかなか倒せないポイント」をつくって、課金してもらいやすくしています。

※「breakerの収益額」は、イグニスのカジュアルゲーム歴代でみても、トップ5にランクインするレベルとのこと。

「breaker」は海外版は出しているんでしょうか?

川口:
「韓国版」は既にリリースしています。ローカライズに関しては、広告を「現地のアドネットワーク」に差し替えたり、現地向けに「細かい調整」をしているくらいですが。

例えば、韓国ではゲームをはじめるときに、1枚「スタート画面」をはさんで、そのタイミングで「全画面広告」を出すのが、当たり前だったりするんですね。

「日本のユーザー」は嫌がると思いますけど、「韓国のユーザー」にとっては当たり前すぎて、ストレスも感じないみたいです。実際「広告のクリック率」も高い数値がでています。

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イグニスでゲームをつくるとき「このゲームはこれくらいヒットする」って予測できますか?

佐藤:
基本的には「結果が読めない」というか、予想通りになることってあんまりないんですよね。

ただ、今までは「いっぱいつくって、どれか当てる」みたいな「多産多死の作戦」が通用しましたけど、最近は「しっかりつくり込んで、当てに行く」じゃないと成功できないと思っています。

特にここ1年くらいで、「ユーザー体験の新しさ」がないと遊ばれなくなりました。だから企画の段階でも「ユーザー体験の新しさ」を大事にしています。

ゲームの企画段階で「ボツ」にすることもありますね。ほとんどは「イメージできない」「わかりづらい」「体験が新しくない」という理由です。

川口:
正直「breaker」についても「10万ダウンロードいけば嬉しいな」と思っていましたが、予想以上の反響がありました。「出してみないと結果はわからない」の一例です。

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最後に告知などがあればお願いします。

佐藤:
イグニスでは現在「ゲームプロデューサー」を募集しています。「自分で企画したゲームを少人数でスピーディーにつくりたい」という人にとっては、最高の環境だと思うのでぜひホームページ※をご覧ください。

川口:
僕も今回「ブロック崩しつくりたい」と、駄々をこねてつくらせてもらえましたし、「自分で考えたゲーム」を3〜4人の規模でつくれるのは、イグニスのおもしろいところかもしれません。

イグニス採用ページ

取材協力:株式会社イグニス

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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