5年で「スマホゲームの寿命」は10倍速に、AppAnnieが語る2016年のアプリ市場。日本市場の95%は「アプリ内課金」が占める(有料アプリは3%以下)

2016年07月04日 |
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アプリ市場の調査ツールや分析データなどを提供されている、AppAnnieさんに「アプリ市場のトレンド」についてお話を伺いました。

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※App Annie Japan 滝澤 琢人さん

1、日本のトップ10の市場規模は変わってない。

ここ1年での「日本のアプリ市場」の動きを、おしえていただけますか?

実は、日本のアプリ市場において「トップ10の市場規模」は、ここ1年で大きくは変わっていません。

ただ「日本のアプリ市場」という意味では、この1年で30%くらい拡大しているんですよ。つまり、全体的に底上げされている状態なのです。

たとえば、収益ランキングで「トップ100位のアプリ」の収益額の推移を見ると、この1年で150%(1.5倍)くらいに、膨らんでいるんですね。

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日本市場をひっぱっているのは、やはり「ゲーム」でしょうか?

そうですね、日本は「ゲーム」がひっぱっています。アメリカでは「非ゲーム」も伸びてきていますが、日本ではまだまだこれからです。

日本で「非ゲーム」のマネタイズが順調なのは、コミュニティアプリの「ポケコロ」や、「LINE系」のアプリなどでしょうか。

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※GooglePlayアプリ(非ゲーム)の歴代収益ランキング、「LINE、LINE PLAY、LINE マンガ」が世界トップ3をとっている。

なるほど。

「マッチング系アプリ」のマネタイズも順調です。今年に入ってからもトップアプリの収益規模は、まだまだ伸びていっていますね。ほかには「マンガ」「音楽・動画ストリーミング」なども順調です。

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※日本のトップ10マッチングアプリの収益。直近が下がっているように見えるが、現在も成長している。

2、日本の「有料アプリ市場」はどうなのか。

日本において「有料アプリの市場」ってどうなっていますか?

実は、日本の「有料アプリ市場(ダウンロード課金)」は、ここ1年で縮小しています。「トップ100」の顔ぶれも大きく変わっていません。

ちなみに、「有料アプリのダウンロード数(月間)」についても調べてみたのですが、1年前とくらべて下がっていました。

ただ重要なのは、日本において「有料アプリ」の市場って、全体の1〜3%しかないんです。つまり、約95%は「アプリ内課金」から来ているということです。

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※有料アプリというのは「売り切り型」のこと。なお、あくまで「課金市場」の話(広告市場はのぞく)

そうなると、有料アプリで「ヒット」を狙うのは難しいですか? 開発者の方からも「有料アプリはキツくなっている」とよく聞く気がします。

単純に「有料アプリ」を出すだけだと、なかなか難しいと思います。もしアプリデベロッパーさんが、この「市場の変化」に気づいていないなら、すこし危険かもしれませんね。

実際、有料でダントツ1位なのは「マインクラフト」なのですが、有料アプリでヒットしているのは、こうした「大型IP」ばかりです。

ちなみに中国では、あえて少額で有料アプリを公開して、あとから「無料課金モデル」に移行するゲームも多いみたいですよ。

これは、まず競争率の低い「有料ランキング」のほうで上位をとることで、「課金意思のあるユーザー」をゲームに集客するためだそうです。

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3、ゲームあたりの「継続率」は下がり、ライフサイクルは短くなっている。

このまえ「1ゲームあたりの継続率は下がっている」という他社のデータを見たのですが、これについてはどう思いますか?

これは仕方がないことです。どうしてこうなるかというと、ユーザーが良いアプリに慣れて、期待値がどんどん上がっていくためです。

つまり「モバイルゲームからユーザーが離れている」ということではなく、「ユーザーの選別の目が厳しくなっている」ということなんですね。

いろんなアプリを触るほど、「ユーザーの経験値」が積み上がっていくので、どうしても避けられないことなんだと思います。

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なるほど。

ちなみに、日本ではアプリの「新規ダウンロード数」も若干の減少傾向にあって。

むかしは、アプリをとにかくダウンロードしていたのが、いまは「そのアプリをつかい続けるか?」という判断も含めて、ダウンロードするようになっている。

だから、もう「ダウンロード数」で語る時代ではないんですよね。どれくらいアクティブユーザーがいて、売上があがっているのか、これがとても重要になってきています。

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※日本のゲームアプリは、新規の年間ダウンロード数が頭打ちに(アプリ全体でも同様)端末がいきわたると、どの国もこの傾向になる。

ほかにゲームで「大きく変化が起きているデータ」って、なにかありますか?

ゲームの「寿命までの期間」はすごく短くなっています。2012年頃と比べると、ライフサイクルが10倍速くらいになっているんですよ。

背景としては「ゲームが広まっていく仕組み」が整ったことで、情報がすぐに回りやすくなった、というのが大きいと感じますね。

新しいアプリがでると、一気にソーシャルで拡散されますし、いまやテレビCMを打つことも、当たり前になってきました。

ただ、これはカテゴリにもよりますね。とくに寿命が短いのが「RPG」で、それに比べて「カジノ」などはロングランになりやすいです。

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※ゲームアプリのライフサイクルは、どんどん短くなっている。

4、日本で「スナップチャット」は伸びているが、勢いは「SNOW」にある。

日本で伸びているアプリはありますか? とくに「Snapchatの流行」と「Facebookの衰退説」が気になっています。データでみるとどうでしょう。

たしかに、日本でも昨年秋口くらいから、「Snapchat」は伸びてきていて、アクティブユーザーも、順調に積み上がっているように見えますね。

ほかに、いま勢いがあるアプリとしては「SNOW」でしょうか。デイリーの新規ダウンロード数でみると、4月末はインスタを抜いていました。

Facebookは、日本のアクティブユーザー数でみても、ユーザーが離れている傾向はないですね。ただ伸びてもいないので、成熟してきたということではないでしょうか。

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5、国別のダウンロード数と収益(2016.1Q)

世界各国の「アプリ市場」の状況についておしえてください。

収益は全体的に伸びていて、もっとも「絶対額」が伸びている国は中国です。「成長率」でみると、新興国がすごく成長(1.5〜2倍)しています。

まだ「収益トップ10」には入っていないけれど、いいポジションにいる国は、メキシコ、ブラジル、ベトナム、トルコあたりでしょうか。

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※世界のアプリダウンロード数、収益の国別ランキング。日本のiOSとAndroid市場は、少しiOSが大きいが、だいたい同じくらい。

全体で伸びているんですね。

「アプリの利用時間」も順調に成長していて、前年比でも60%ほど伸びています。どのカテゴリも順調にきていますね。

ちなみに、スマホ利用1時間を「アプリ:ブラウザ」で分けると、「アプリ85%:ブラウザ15%」という割合になっています。

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※スマホ利用1時間のうち、51分(85%)はアプリに、15%(9分)はブラウザに費やされている。

一番「アプリ市場」が成長しているのは、中国なんですね。

そうですね。この1年で中国のiOSアプリ市場は「2.2倍」に成長していて、2016年に入って、ついに日本を抜いてしまったくらいですから。

これで中国は「iOSで世界2位の国」になりましたが、この調子でいくとアメリカを抜いて「世界一の国」になるのも、時間の問題です。

ちなみに、中国ではAndroidアプリストアが乱立していて、その「推計がむずかしい市場」も含めると、すでに実質「アプリ市場で世界一の国」になっている可能性もあります。

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※iOS市場において、ついに中国が日本を抜いた。

6、アジア(APAC)のアプリ市場について

「アジアのアプリ市場」はどんな感じでしょうか?

日本を含めた「アジア太平洋市場」は、大きく成長していますね。この2年でダウンロード数は1.4倍に、収益は2.1倍に成長しました。

とくにインドは、この1年でダウンロード数が、約2倍に成長していて、「小売アプリ(Amazonなど)」のダウンロード数は4倍になっています。

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※インドでは「PC/ガラケーの時代」を飛ばして、いきなり「スマホ時代」に入ったため、ゲーム課金などよりも、サービス・モノなどの課金から盛り上がっている。

取材協力:App Annie Japan

編集後記

非ゲームアプリで、日本の「LINEマンガ」などが、世界展開している出会い系「Tinder」よりも、累計で稼いでいるというのが印象的でした。

(マネタイズのタイミング、GooglePlayだから、などもあるのでしょうけど)

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アプリマーケティング研究所編集部 アプリのマーケティングメディアです。アプリの売上を伸ばす施策やデータが学べるマガジン「月刊アプリマーケティング」もスタートしました。最近の記事は新サイトにて更新しています。取材申請はコチラのページから。
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